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第31話:付与魔法使いはギルドカードを届ける

 ◇


 ベルガルム村に帰還した俺たちは、依頼報告と紛失物を届けるために冒険者ギルドに戻ってきた。


 シルフィは精霊界に隠れているので、俺とセリアの二人で建物の中に入る。

 

 すると、冒険者と受付嬢の会話が聞こえてきた。


 受付嬢は顔馴染みの人だが、冒険者の方は初めて見る顔だった。


 透き通った美しい銀髪のツインテール。ルビーのような赤い瞳に、雪のように白い肌。

 見たところ、おそらくセリアと同じくらいの年齢。若干のあどけなさが残るが、整った顔立ちをしている。


 愛らしさと美しさの良いところ取りをしたような美少女だった。

 

「ギルドカード、まだ見つからないのかしら……?」


「申し訳ないのですが、ギルドにはまだ届けられていません……」


「そう……。再発行っていくらだったかしら」


「1万ジュエルです」


「高すぎるわ……。財布ごとなくなっちゃったの。どうすればいいのかしら……」


 どうやら、この銀髪美少女はギルドカードが入った財布ごと紛失してしまっていたようだった。


 しかしさっき拾ったギルドカードは裸のまま落ちていたようだし、関係なさそうだ。


 そうなると意外とギルドカードの紛失って多いのだろうか。


「ユキナさんはこのギルドで受けられていますし、本人か否かは明らかですから場合によってはギルドから費用の貸付をすることも検討できるかと……」


「そう、それはありがたいわ。借金はあまりしたくないけれど……」


 あれ、ユキナって名前どこかで見たような……?

 俺は拾ったギルドカードに刻まれている名前を確認する。


 『ユキナ・リブレント』と書かれていた。


「なあ、もしかしてあんたの名前って、ユキナ・リブレントだったりするのか?」


「……!? ど、どうしてそれを!?」


 ユキナという少女は、めちゃくちゃ驚いていた。

 まあ、見知らぬ他人からフルネームで名前を呼ばれるなんて想定外か。


「実はさっきゴーレム狩りが終わった後にギルドカードを拾ったんだ。ギルドに届けようと思って持ってきたんだが、持ち主がいるなら話が早そうだな」


 俺は確認の意味を込めてギルドカードをユキナに見せた。


「間違いなくこれは私のものよ。あ、ありがとう……!」


「どういたしまして。でも、さっきちょっと会話が聞こえたけど財布らしきものはなかったと思うぞ」


 本人のものであると確認が取れたので、ギルドカードを手渡した。

 ユキナは大事そうにギルドカードを握りしめた後、バッグの中に収納したのだった。


「多分、村の中で盗まれてギルドカードは冒険の途中で捨てられたのだと思うわ。お金は諦めるとして、見つかって良かった……。感謝してもしきれないわ」


 まさかギルドカードを届けることでこれほど感謝されるとはな……。


「あの、何かお礼をさせてもらえないかしら」


「お礼? いいよ、そんなの」


 たまたま落ちていたものを拾って届けただけなので、俺としては感謝の言葉だけで十分だった。

 しかしそれでは気が済まないようで——


「そういうわけにはいかないわ。拾ってくれたのがあなたじゃなかったら悪用されていたかもしれないし、そうじゃなくてもギルドから借金せざるをえなかったもの」


 確かにそのリスクはあった。


 実際にギルドカードを買い取る専門の闇商人なんてものまでいるのだから、俺が想像している以上はありふれたことなのかもしれない。


 だからユキナは重く捉えているのだろう。


「……なるほどな。お礼をしてくれるというなら、俺たちとしては断る理由はないよ。でも、ユキナは今無一文なんだろ? しばらくは目の前のことだけを考えて生活基盤を安定させることを優先しても良いと思うが……」


 一般的に何かお返しとなれば、ご飯をご馳走するなどだろう。


 金額が特別高い必要はないが、財産を失くしてしまったユキナには厳しいはずだ。そもそもギルドカードの再発行手数料の1万ジュエルに困っている状況ではどうしようもないと思うのだが……。


「そうね、お金でお返しをすることはできないわ」


「そうだよな。だから無理に——」


「だから、私の体でお礼をするわ」


「……え?」

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[良い点]  お約束の匂いがします。
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