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第186話:付与魔法使いは供物を捧げる

 日付が変わり、翌日の午前二時。


 アルスたちはもちろん、エルフたちも寝静まった深夜の森の中。五名の男の人影がエルフの里の周りを徘徊していた。


 しかし『人影』という表現は適切ではないかもしれない。彼らの正体は、人間ではなく、エルフでもなく、獣人でもない存在——魔族なのだから。


 浅黒い肌。黒い瞳。そして、頭に生えた二本の黒い角。魔族の特徴である。


 魔族集団の指揮役、ジェノスは茂みを左手でかき分ける。そして、空けたスペースに石のような見た目の魔道具を隠すように投げ入れた。


 山道から一見しただけではわからないようになっていることを確認すると、周りで見ていた四人の部下の方を向いた。


「いいか、なるべく見つからないように仕掛けるんだ。これから手分けして夜の間に仕掛ける。全てが終わったら、山頂で落ち合おう」


 そう言った後、鷹の紋章が入ったバッジを取り出し、部下の一人に手渡す。


「これはメイル王国とかいう人間の国が使っている紋章らしい。村の入り口に目立つように置いておけ。今度はちゃんとわかるように(・・・・・・・・・・・・・)……な」


「……お任せください」


 全ての指示が終わったジェノスが散れとジェスチャーする。すると、四人の人影は四方にそれぞれ消えていったのだった。


 一人になったジェノスは、小さく呟く。


「悪く思うなよ、エルフども。これは魔王様の命なのだ……」


 ◇


 翌朝の七時。


 神託の儀の準備が出来たということで、俺たち三人とシルフィは揃って朝早くから里の教会にやってきた。


 教会の中は、かなり広い造りになっていた。中央に祭壇があり、その周りを囲むように千人ほどが入りそうな祈りのスペースが広がっている。


 エルフの里の人口規模から見れば過剰とも言える広さだが……昔はもっと人口が多かったのかもしれない。あるいは、人口増にも対応できるよう予め広めに造られたか。


「こちらへ」


 司祭の指示に従い、祭壇の前に立つ。『アイテムスロット』から昨日倒したばかりのジャイアント・ウルフの亡骸を取り出した。広い教会も、こいつ一匹がいるだけでかなりの圧迫感だ。


 早速、司祭から伝えられた祈りの文句を唱える。


「神聖なるエルフの神よ、供物を用意した。我らが祈りを聞き届けたまえ。この世の真理を示したまえ。汝の叡智を我らに授けたまえ!」


 すると——


「わっ! さ、祭壇が光りました……!」


「セリア、静かにしなきゃダメよ」


「あっ、すみません」


 祭壇が青白く輝き始めた——だけじゃない。


 男とも女とも取れるような形をしたモヤが目の前に現れ、どこからともなく厳かな声が聞こえてきたのだった。


「人間の一味よ、歓迎する。ふむ、ジャイアント・ウルフ……並々ならぬ想いがあるようだな。さあ、我に訊きたいことを口にしてみよ」


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