第184話:付与魔法使いは質問に答える
「な、なるほど……」
ソフィアとしては、俺たちに不快な思いをさせないよう取り計らったということだろう。それで祝勝会の間に声を掛けてこず、ここに先回りしたということか。
「許してくれとは言わない。だが、命を助けられたばかりか、怪我の治療まで世話になったのだ。直接会って謝って、礼を伝えなきゃ俺自身が納得できなかったんだ……!」
俺のジュピラに対する第一印象は、頑固でプライドが高いというものだった。今でも間違っているとは思わないが、この性格は悪い面ばかりというわけではないらしい。
「ジュピラ、そういえばまだ森での質問に答えてなかったな」
——どうして俺たちに対して敵意を剥き出しにしていたジュピラにできる限りのことをしたのか。答えようとしたその時に討伐隊が合流してしまい、話が流れてしまっていた。
「俺は、ただ人間にも色々いるってことを知って欲しかったんだ」
「色々……?」
「確かに、エルフに危害を加える人間もいることは事実だ。けど、俺たちみたいにエルフとも仲良くしたい人間もいる。言葉で伝えるだけじゃなかなか伝わらない。だから、行動で示した」
ジャイアント・ウルフ戦はジュピラが勝手に乱入したとはいえ、そこで彼が死んでしまえば想いが伝わることはない。怪我の治療に関してもそうだ。憎しみに対して、反発で応じるだけでは、既に固まった価値観を変えることはできない。
これは、勇者パーティの面々——ナルドたちとの和解を通じて得た学びだった。
「さっき、人間だというだけで無礼な態度をとったことを謝ってくれたよな。ちゃんと伝わっていてホッとした。許すよ」
「……っ!」
あっさりと謝罪が受け入れられたのが意外だったのか、驚いた表情になるジュピラ。
「……器が、大きいのだな。俺も見習わねばならんな」
「とりあえず、知ることから始めてくれればいい。クララからジュピラの過去について聞いたが、そう簡単に憎しみは消えないからな」
俺だって、家族と故郷を奪った魔物に対する憎しみは消えていない。魔王を倒し、全ての魔物を駆逐しても消えることはないだろう。人間に対して友好的な魔物がいたとして、そいつを受け入れることができるかどうか……。仮にそいつだけは受け入れたとしても、魔物全般に対する憎しみが消えることはないと確信を持って言える。
「それはそれとして……大丈夫か?」
「……む?」
「いや、顔が赤いぞ……って、おい!」
バシャン!
どうやら、長時間熱い湯に入っていたことで、逆上せてしまったらしい。盛大に水飛沫を上げて湯の中に沈んでしまった。
『ヒール』。
付与魔法で逆上せる前の状態に戻す。すると、ジュピラは意識を取り戻した。
「ゴホッ! ゴホッ! す、すまん。助かった……!」
「……気をつけて帰れよ」
思わぬハプニングがあったものの、これで気持ちよく温泉を楽しめそうだ。






