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第183話:付与魔法使いはタオルを落としそうになる

 この浴場は、当然ながら更衣室の入り口から男女別。セリアたち三人とは一旦ここで分かれることとなった。ちなみに、入り口には『清掃中』の立て看板が置かれている。


 衣服をロッカーに入れ、早速湯気が立ち込める浴場へ。


 この浴場は全面露天風呂になっているようだ。洗い場には屋根があり、湯船にはない。深夜なので、さすがに外気に触れるとヒヤッとした。さっさと身体を洗って湯に浸かるとしよう。


「おー……熱っ」


 湯加減はやや熱め。湯は汚れているわけではなさそうだが、白い濁りがある。そういう泉質なのだろう。男湯と女湯との間は高い壁により隔たれており、当然互いに見えなくなっている。


「おー……気持ちいい……」


 あまり温泉の種類に明るくないので詳しいことはわからないが、少し酸性が強めの湯なのか、ピリッとする感覚があった。肌が綺麗になりそうだ。


 と、その時だった。


「アルス……だったか?」


「っ⁉︎」


 奥の岩の方から、俺の名前を呼ぶ男の声が聞こえてきた。濛々と立ち込める湯気でよく見えていなかったが、確かに人影があった。貸切と聞いていたので声を掛けられるとは思わず、驚いてタオルを落としてしまいそうになる。


「驚かせてすまない。ここで待っていれば話せると思ってな……」


 言いながら近づいてくる。距離が縮まったことで、濃い湯気の中でもはっきりと顔が見えた。


「ジュピラか。えーと……?」


 声を掛けてきたエルフの正体は、里で三番目の実力者にして、俺たち人間を嫌うエルフ——ジュピラだった。それにしても、いったい何の用なんだ?


 俺が困惑している中、ジュピラは深々と頭を下げた。


「色々と……悪かった」


「え?」


「アルスたちが人間だというだけで無礼な態度を取ったり、俺の独りよがりで足を引っ張ったり……悪かったと思っている。この通りだ」


 ここで俺を待っていたのは、これまでの非礼を詫びたいということだったらしい。でも、どうしてこんなところで……?


「実は、長老からアルスたちには近づくなと釘を刺されてしまってな。今夜ここが貸切になると聞いて、アルスたちが来るんじゃないかと思って、隠れていたんだ」


 俺の困惑を察してか、ジュピラは事情を説明した。

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