第179話:付与魔法使いは目当ての素材をゲットする
あり得ない——とでも言いたげな表情だ。
ジュピラが独力では手も足も出なかった魔物の攻撃を完璧に捌き切るだけでなく、怪我まで一切の傷跡を残すことなく一瞬で治した。まあ、さすがに俺もこれが普通のことだとすっとぼけるつもりはない。驚くのも無理はないだろう。
「どうしてそこまでしてくれるんだ! 勝手に来て、足引っ張って……しかも、他の連中と違ってお前たちに悪態をつけた俺に!」
確かに、ジュピラの乱入は悪い意味で想定外だった。当初の予定通りにならない展開になり、実際にかなり迷惑だった。怪我に関しては時間をかければ完治するのだから、癒さずこのまま他のエルフたちに引き渡しても良かった。
モヤモヤした感情をグッと堪え、俺たちに人間に対して敵意を剥き出しにするジュピラにできる限りのことをした理由。
「それは——」
と、答えようとしたその時。
「この大馬鹿者が!」
少し離れた場所で待機していた討伐隊のエルフたちが合流。息を切らしながらやってきたソフィアが右手の杖でジュピラの頭をコツンと叩いた。
「急にいなくなったと思えばどういうことじゃ! ワシは承知しておらんぞ!」
「……わ、悪かったな」
罪悪感はあるようで、バツが悪そうに頭を下げるジュピラ。
「無事じゃったから良かったものの、当たりどころが悪くて死んだらどうするつもりだったのじゃ! お主が死んだら悲しむ者も少なくないのじゃ! 今回が初めてじゃないじゃろう! 勇気と無謀は違うと何万回説明すれば分かるのじゃ? ん? どうなんじゃ⁉︎」
息つく間も無くまくし立てるソフィア。
「まあまあ、その辺にしておいてやってくれ」
「む?」
「結果論だが、おかげで伝えたいことを伝えられたからな」
上手く俺の意図が伝わらなかったのか、キョトンとするソフィア。
「それにしても、またアルスたちには助けられてしまったの。ニーナとマリアに、今回のジュピラ。なんと礼をすればいいやら……」
「気持ちだけで十分だよ。っていうか、この戦利品をもらえるのが俺たちにとっては大収穫なんだ。えーと、回収して良いよな?」
「うむ。すぐに運ばせよう」
俺の身体の何倍も大きいジャイアント・ウルフの亡骸。どうやっても一人では運べないと思って提案してくれたのだろう。
だが——
「あー、いや……それは大丈夫なんだ」
俺は、『アイテムスロット』を使用。精霊界へのゲートを開き、巨大な魔物の亡骸を放り込んだのだった。
「……は⁉︎ な、なんじゃ⁉︎ どういうことじゃ⁉︎」
「アルスにかかれば荷物を運ぶくらいどうということはないのです」
「そう! パパの付与魔法はなんでもできるの!」
なぜか誇らしげなセリアとシルフィ。
まあ、説明の手間が省けて助かる。
「じゃあ、帰ろうか」






