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第145話:付与魔法使いは感謝される

 ◇


 十数分ほどでニーナたちの家に着いた。


 長老のソフィアを含めなかなかの大人数で尋ねたのでニーナたちの父、ハリーさんはかなり驚いていたが、二人が経緯を話すと納得してくれたようだ。


 ハリーさんは目を引くほどの美形なのだが、これは他のエルフもそうなので見た目に関しての感想はこのくらいに留めておくとしよう。


 と、それはともかく。


 ニーナたちの説明の流れで俺との関係についても触れたのだが——


「なんと、君がカインの息子か……!」


「ええ。父がお世話になりました」


 俺の正体を知ったハリーさんは、かなり驚いたようだった。


 ちなみに、カインというのは俺の父さんの名前だ。


 父さんは約二十年前、魔物との戦いで大怪我を負い、力尽きて倒れていたところをエルフに助けられたと聞いている。父さんを里に連れ帰ってくれたのがこの人ということになる。


 あの時、父さんが死んでいれば当然俺はこの世に生まれてこなかったわけで、その意味では俺にとっても命の恩人ということになる。


 冒険者は、よほどの相手でなければ敬語は使わない。冒険者になってから敬語を使ったのは、国王フロイスと話して以来だ。そのくらい、俺にとっては特別であることを意味する。


「いやあ……娘たちを助けてくれたのが君だったとはな。不思議な縁を感じる。ありがとう……感謝してもしきれないよ」


「ニーナたちを無事に送り届けられたのは、俺だけの力ではありませんが……お力になれて良かったです。俺もほっとしています」


「そうだったな。セリアさん、ユキナさん。それにシルフィ様も……ありがとう」


 三人だけじゃない。


 ここで詳しく説明する必要はないが、マリアの持ち主を調べてくれたクリスや、『レッド・デビルズ』との戦いの中で二人を預かってくれたナルドたちの力も大きかった。


「そういえば、カインは元気にしているかね?」


 ハリーさんは、ニコニコしながら俺の父さんの現状を尋ねてきた。


「実は……父はもういません」


 父さんのことを尋ねられることは想定していたので、ゲリラダンジョンの件と、戦いに出たきり戻ってこなかったことを説明した。


「なんと、そうだったか……。いや、すまない。嫌なことを思い出させてしまったな」


「いえ……もう六年も前のことですから。気持ちの整理はついています。大丈夫ですよ」


 説明しないわけにはいかなかったので父さんのことを話したが、俺としては雰囲気が暗くなってしまうことを望んではいない。


「それより、二人が『魔風症』の薬を王都から持ち帰ってきました。奥さんを起こしてあげてください」


「う、うむ……そうだな。そうしよう」


 なるべく明るく努めた俺の意思を悟ったのか、ハリーさんはすぐに寝室に向かった。

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