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第144話:付与魔法使いはエルフの里に到着する

 ◇


「わっ、すごく綺麗な街ですね!」


「幻想的って、こういう時に使うのね。空気が澄んでいるわ」


 エルフの里に一歩足を踏み入れるなり、セリアとユキナが感嘆していた。


 確かに、言葉や文章では表現しきれない美しさがそこにはあった。


 里の中心にある世界樹を中心に広がる街は石造りの建物が並び、透き通った川や緑が里全体に広がっている。里の外は山や森が囲んでおり、見飽きることのない絶景があった。


「ふふ、そうじゃろう、そうじゃろう。しかし自然以外には何もないがの」


 満足気な微笑みを浮かべた後、なぜか自虐の言葉を漏らすソフィア。そういえば、ニーナたちもさっき似たようなことを言っていたな。エルフの里の文化なのか?


「そうでもないみたいだけどな」


「む?」


 俺は、その場でしゃがんで土を触ってみる。


 やはりな。


「里全体に魔法がかかってる。これのおかげで、森の中だというのに魔物が入ってこられないんだ。これだけの規模の魔法をどうやって組んだのか分からないが、とんでもない技術力だ。王都ですらこれだけのセキュリティはない」


「ほう……アルスよ、里の加護がわかるのか」


「魔法に関しては人間の中では詳しい方でな。つい見てしまうんだ」


 自然以外に何もないってのは謙遜が過ぎる。このエルフの里は、王都よりずっと前にあったと言われている。歴史を積み重ねられたのは、それなりの理由があるということだ。


「それでは、私たちの家にご案内しますね!」


 立ち止まっていた俺たちに、ニーナが声を掛けてくれた。


「じゃあ、ワシもお見舞いに行こうかの」


「ソフィアおばあちゃんも来てくださるのですか⁉︎」


「お母さん起きたらびっくりしちゃうかもね」


 ニーナとマリアの反応を見るに、長老のソフィアはかなり里の住民に慕われているようだ。


 里の入り口からニーナたちの家まではそこそこの距離があるようで、景色を楽しみながら俺たちは後ろをついていった。


 それにしても、美男美女だらけだな。


 エルフは容姿に優れた者が多いという話は有名だが、本当に誰一人として並以下の者がいない。いったい何を食べたらこうなるんだ?


 って、どうでもいいことだな。


 非日常感から色々と気になってしまうが、目的を忘れちゃいけない。


 ニーナたちの家に着いて、母親に『魔風症』の治療薬を投与すれば一件落着。集められる情報を集めた後は、なるべく早く里を出発することとしよう。


 さて。


 早めのペースで歩いていたところ、ソフィアを見てふと気になることがあった。


「そういえば、えっと……長老」


「ソフィアで良い」


「ソフィアは、どうして杖を持ってるんだ?」


 足腰の弱った老エルフが杖を使って歩くのは普通。しかし、ソフィアは武器としてさっき使っていた以外には、晴れの日に傘を持ち歩くが如く邪魔そうに持っていた。


 武器として使うなら、普通は剣や槍を持ち歩くはず。何か事情があるのだろうか。そう思って尋ねたのだが——


「こっちの方が威厳があるじゃろう?」


「えっ?」


「ワシはただでさえ若く見られてしまうからの。民を安心させるために見た目には気を遣っているのじゃ。ほら、杖を持ってたらそれっぽいじゃろう?」


 言いながら、ぶんぶんと杖を振り回すソフィア。


「……なるほどな」


 どうやら、敢えて杖を持つことに見た目以上の意味はないようだが、ソフィアなりの考えがあったらしい。

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