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第109話:付与魔法使いは暗殺者を送り出す

「それはそうかもですけど……なんだか悔しいです」


「そうよ。アルスは何も悪くないのに。悪に屈するみたいで……」


 それに関しては、確かにそう思わなくもない。


 現実的な話として、俺が冒険する目的から言って今後は王都を訪れることは少ない。


 だから問題にはならないという話なのだが、見かたによっては犯罪ギルド『レッド。デビルズ』を恐れて事由が制限されているようにも映るとセリアたちは言っているのだ。


「心配するな。その気になれば、あんな組織の一つや二つ消してやればいい。なくなっても誰も困らないし、遠慮する必要もない。だけど、今はそんなことをしている時間が勿体ないと俺は思うんだ」


 『レッド・デビルズ』が問題のある組織だということはわかっているし、王都の民のため、ひいては王国の利益のためにはむしろ潰したほうがいい。


 だが、それには時間がかかる。


 やるにしても、ニーナとマリアをエルフの里に送り届けてからにしたいのだ。


 あと、大きな活躍を見せて国王から『やっぱり勇者になってくれ』などと言われるのは困る……という事情もある。


「アルス……かっこいいです! そうです! 私もそう思います!」


「確かにそうね。アルスの方が正しいと思うわ」


 ともかく。


 俺を狙う理由と、誰に狙われているのかがハッキリしたのは収穫だった。


 俺は暗殺者の方を向き、言葉をかける。


「教えてくれてありがとうな。怖かっただろ?」


「とんでもないです。最初、言い始めるときは少し怖かったですけど、皆さんにギルドの秘密を話せたおかげで心がスッとしました。なんか、やり返してやったぞ……って」


「ハハッ、そりゃ良かった」


 暗殺者の女性は仮死から解除してすぐはぎこちなかった表情もすっかり自然になっているし、身体の震えも止まっている。


 これで、もう問題はなさそうだ。


「本当にありがとうございました! 私、メリナって言います。これから……王都には戻らずに、このまま故郷のスノウリーフ村というところに帰ろうと思いますが……もし近くで困ったことがあったらいつでも立ち寄ってきてください。アルスさんたちのことは村の人たちに広めておきますから!」


 そう口に出しながら、頭を下げてくるメリナ。


 スノウリーフ村か。


 ここからはかなり距離があるが……まあ、戦う能力があれば無事に帰るくらいはできるか。


 そんな心配を頭の片隅で思いつつ、言葉を返す。


「わかった。何かあったら頼らせてもらうよ」


 こうして、『元』暗殺者のメリナを送り出した後、俺たちは王都へ戻ったのだった。


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