第102話:付与魔法使いは身の危険を感じる
◇
俺たちが泊まっている宿の方を目指して移動しつつ、混乱中のマリアに状況を伝えた。
ニーナとの出会い。
俺にとっても二人は縁があること。
二人をエルフの里に必ず返すこと。
ベルガルム村を出てから色々とあったが、マリアに関係のある話に絞ればそれほどボリュームは大きくない。
十分ほどかけて丁寧に話したところ、しっかり伝わったようだった。
「なるほど……私を買ってくれた理由がわかりました! それに、お姉ちゃんのことまで……。ほんっとうにありがとうございます‼」
マリアは深々と頭を下げ、感謝の意を示した。
俺のエゴでやってきたことではあるが、こうして感謝されるのは素直に嬉しい。
「良かったですね!」
「私たちのほうがほっとしてるかも……」
セリアとユキナの表情は、さっきまでより緩んで見える。
確かに、難所はクリアした。
だが、まだ決着したわけではない。
油断は禁物だ。
「二人を無事にエルフの里に帰すまで、まだ仕事は終わってない。明日には王都を出よう」
「わかりました!」
「確かにそうね。気を抜かずにいきましょう」
「パパは慎重なの~」
こうして、気合いを入れ直した時だった。
ヒューッ!
突如、風を切り裂くような空気の振動を感じた。
何かがこちらに飛んでくる。
この音は――
「……矢?」
かなり近くから放たれたようで、さすがの俺でも反応しきれない。
「ア、アルス⁉」
セリアが叫ぶが、もう遅い。
既に衝突は避けられない。
カアアアアアアアアンッッ‼
近距離から放たれた矢は俺の背中を貫いた……かに見えた。
「ん?」
矢は俺の背中に衝突したものの、俺の身体に傷をつけるまでには至らなかった。
服すらも傷ついていない。
矢が地面に落ちたらしく、俺の足元でカランっと音を立てた。
金属製の矢。
背中を狙われたことを考慮すると、普通の冒険者なら即死していただろう。
「アルス⁉ 平気なのですか?」
「な、何が起こったの⁉ 矢⁉ っていうか怪我は⁉」
二人は俺の身体を心配してくれるが、俺は辞めるようジェスチャーで促す。
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