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グリーンスクール - 瞬きもせず  作者: 辻澤 あきら
9/36

瞬きもせず-9

「由理子さんなんか、お兄ちゃんと一緒に、お風呂入ってればいいのよ。洗いっこなんかして」

「もうそんなことはしないわ」

「そりゃそうよね。中三と高一で入ってたら、変よ」

「変かな?」

「え?…入ってるの?」

「うん。時々」

「……」朝夢見は絶句して言葉が出なかった。

「おかしい?」

「だって、二人とも…もう」

「直人は嫌がるけど、お兄ちゃんとは時々入るわよ」

「……」

「だって、兄妹だもの」

「それは、そうだけど……。…恥ずかしくない?」

「さすがに、洗いっこは、ヤだけど、一緒に入るくらいなら」

「……」

「おかしい?」

屈託のない由理子の視線に、朝夢見は思わず首を振っていた。

「よかった。でも、誰にも話さないでね。特に、ミキちゃん。あの娘、絶対、言いふらすから」

「うん。そうね。じゃあ、あたしのことも黙っておいて」

「なに?」

「大学生に交際申し込まれたこと」

「あぁ。そうね。ミキちゃんに聞かれたら、あっちこっちで言いふらすかもしれないわね」

「そう」朝夢見は指を突き出して由理子の言葉を指し示しながら言った。「あの娘、悪い子じゃないんだけど、屈託がないって言うのか、単純って言うのか」

「それが、ミキちゃんのいいとこなんだけど」

「でも、あたしは、相談相手もいなくて、ここでぼやくしかないの。ミキちゃんはあんなだし、しのぶちゃんにはお姉さん扱いされてるし、仙貴は…やっぱり男だから、相談できないこともあるし」

「あたしでよければ、いつでも聞いて上げるわよ」

「ほんと?よかったぁ。結構、向こうだと、お姉さん役してるから、時々疲れてくるのよね。こんな話、由起子先生にするのも変だし」

「ん。いつでも、いいわよ。あたしも、朝夢見ちゃんって、ちょっと大人っぽいから、話しやすいの。頼りがいがあるって言うのかな」

「そんなに、あたし大人じゃないわ」

「それは、お互いさま。あたしのことお姉さんだなんて思わないでね。お友達でいましょ」

「うん」

 二人は顔を見合わせて笑った。すっと由理子が、右手の小指を差し出した。驚いて見ている朝夢見に由理子は言った。

「指切り」

朝夢見はにっこりと微笑んで頷くと、由理子の指に絡ませて、強く契りを結んだ。穏やかな由理子の笑顔を、見ながら。



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