瞬きもせず-17
そう言う直樹の顔がいつもの兄の顔には見えなかった。見慣れた、それでいて、いつもと違う異性の顔。そう思う自分に照れてしまい、顔が赤くなるのを感じた。しかし、直樹も朝夢見もそんなことには気づいていないようだった。
「何の話してたんだ?」
「あ、あのね」
朝夢見は屈託なく話す。その雰囲気も、似合っているように見える。
「へえ~、大学生に」
「そう。困ったもんです」
「やっぱり、胸もでかいからな。目をつけられるんだ」
「お兄ちゃん!」
「なんだよ」
「どこ見てるのよ」
「どこって、見えるもんは仕方ねえよな。な、朝夢見ちゃん」
「まぁね。でも、あたしは胸筋が発達してるから、土台がしっかりしてるだけで、そんなに大きくないよ」
「でかいよ。こないだの勝負のときも、つい目がそっちにいっちゃって負けたんだ」
「お兄ちゃんたら」
「ふふ。でも、直樹さんも、そういうこと気になるんだ」
「当たり前だろ。俺だって、健全な男の子だよ」
「ふーん。何となく、納得」
「そう?それで、おまえはどうすんだ?」
「なに?」
「大学生の彼」
「あぁ、それ。それは、断ったの」
「断った?」
「そう。変?」
「いや、よかった」
「なにが?」
「いや、俺、ちょっと考えてたんだけど、おまえ、俺とつき合わないか?」
「え?」




