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真理起業とは何か  作者: ちえ
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第1章 第8節 新会社への誘い~二人の独立

光一は、花岡社長を交えた話を終えて、会社の寮の部屋に戻り、ベッドに横たわりながらぼんやりと考えていた。


(社長かあ、やはりすごいなあ、将人さんは…)


将人は、光一の1つ上の年齢とは言え、将人は新会社の社長に推薦された。

一方、光一は老舗の大手企業に勤めているとはいえ、役職のないただの平サラリーマンだ。


光一は、年齢が1つしか違わない将人が自分よりもはるか遠くに前に進んでいくような気がし、「うらやましいなあ」という気持ちが少しだけ起きていた。自分一人だけが置いてけぼりになっている気持ちさえ感じていた。


ただ光一は、「こんな気持ちではいけない!」と自分に言い聞かせた。


(将人さん、大学の頃からずっと社長になることを目指して頑張っていたんだって……当然の結果だね。将人さんには、絶対に成功してほしいなあ)


光一はまもなく30歳になろうとし、現場の工程管理も任されるようになっていた。

特別、仕事ができるわけではないが、誠実な仕事をして上司や現場の人たちからも好かれ、信頼を持たれはじめていた。


今、光一は、会社内でも最もハードな現場にいて、平日の仕事が終わる時間は遅く、寮に戻れるのは常に深夜10時を過ぎていた。土曜日もサービス残業で出勤することが多く、こっそり副業をする時間も、以前と比べるとかなり限られてきた。


光一自身、今すぐ独立できるとは思ってなく、独立する準備ができるまではまだまだ年数がかかると思っていた。


(僕にはまだまだ独立する力も自信もないからなあ。自分のペースで副業で、コツコツ頑張っていこう。そして独立できるほど収入が安定したら独立して、やがて小説も書けるようになれたらいいなあ)



――それから1週間後の日曜日がやってきた。


花岡社長と会ってから、将人から連絡が一度も来なくなった。

今日、光一は休みの日だ。光一は、机に座りながら、新事業に必要なネット回線の勉強をしていた。


(将人さんは新会社の社長となるから、きっと準備とかで忙しいのだろうな……)


光一は学習しながらぼんやりと考えていると、電話がかかってきた。

それは将人からだった。


将人「光一君、あのさ……君も俺の新会社に入って、一緒にやらないかい?」

光一「え…」


光一は、将人からの意外な問いかけにとても驚いた。

将人「光一君の力がなければ、新会社は成功しないと思っていてね」

光一「え? 僕がいたって何もできないですよ! 第一、僕なんて人づきあいが悪いから営業だって自信ないし、商売だってまったくの未経験ですよ!」

将人「光一君は要所要所で俺にも気づかない正しい判断をしていてね。それに光一君がいたからこそ、宮岡社長と出会えたし。

光一君は、『自分は平均以下の人間だ!』って思っているけど、俺はそう思っていないよ。

むしろ光一君の人脈の広さに驚いていたのは俺の方だよ。とくに、自然に優秀な経営者たちと仲良くなれたことに俺は驚いていたんだ。それって商売に向いているってことだよ」


光一「歴史研究会でたまたま知り合った社長さんたちですよ。商売とはまったく関係のないことでつながっただけですし、そんなに期待されても…」

将人「実は宮岡社長も俺と同じ意見だよ。宮岡社長も光一君を偉く気に入っていて、将人君の補佐とともに社長秘書にもなってくれればありがたいなあと話していてね」

光一「え…僕が宮岡社長の社長秘書になってほしいだって!」


光一はさらに驚いた。

光一「い、いきなり言われても判断できないけど……でもそのように二人から思われたのは光栄だけど…」

将人「もし光一君が引き受けなければ、俺は社長を辞退しようと考えているんだ。光一君がいないと成功しない。俺は本気で思っているよ」

光一「そ、そんなもったいないですよ、将人さん! 僕なんかいたって、たいして力になれないし……でも将人さんと宮岡社長がそのように期待しているなら……頑張りたい気持ちもあるけど……」


光一は内心うれしいけれど、さすがにいきなりのことだったので返事に困ってしまった。

ただし光一は、今の会社で働くよりももっと使命感を感じる社長の元で働きたい。給与なんて関係ない。「生きがいを感じる仕事に就ければいいんだ」と強く思っていたのも事実だ。


光一は、今、働いている会社では強い使命感を感じられず、本心は使命感を強く感じる仕事に就きたいとずっと考えていた。

そして歴史通で日本をよくしたいと考えている宮岡社長の元で働けることは、光一にとって非常に光栄であった。しかし大企業の工程管理や品質管理しか実務経験のない光一が、いきなり異分野の新事業で役に立てるとは思えなかった。


光一「異分野の仕事がいきなりできるなんて思っていないけど…。でも宮岡社長と将人さんの会社で一緒に仕事ができたらいいなとは本当に思っていますよ」

それは光一の本心であり、将人にも十分に理解できた。


将人「光一君もやっぱり宮岡社長の元で働きたいんだね。光一君が商売未経験だなんて宮岡社長も知っているよ。それでも光一君を気に入ったんだよ。そして俺も光一君の力が必要だ。だから宮岡社長の下で働きたいという気持ち一つあればいいんだよ。まあ、一晩考えて、明日返事ちょうだいよ」



……こうして電話は終わった。

そして光一は一晩考えたあげく、光一は、今の会社を辞めて、将人とともに働くことを決意したのだ。


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