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トット村の奇病解決〜ジェネレイツポーション作り

読んで頂き誠にありがとう御座います。

誤字訂正ありがとうございます。


 ルリアがデタリとの試合に勝てば勇者PTに戻れる。

俺としてはルリアには,ずっとうちのギルドにいて欲しいし、ルリアをポイッと捨てたヴィーラの元に戻って、また怪我をして捨てられるんじゃないかと,懸念がある。

でも、ルリアが勇者PTに未練があるのは知っているし、ルリアは戦っている時が一番イキイキしている。

まー、イタズラをしているルリアも、イキイキしているんだけどね。

だから、ルリアが居なくなったら寂しいけど、ルリアが勇者PTに戻れるように全力で応援したい。

具体的にはジェネレイツポーションで腕の再生と、パワーポーションでドーピングだ。

慌てて言った取って付けた理由で,ルリアとデタリの試合を先延ばし出来た。

まー、トット村の奇病を解決しなくてはいけないのは本当のことだしな。


「ラムザール殿、一緒に来て,見て欲しい物があるのだが」


 ルリアと短剣の練習をしていると、イラが俺を呼びに来た。

イラに呼ばれてナンの家に向かう。

ナンの家に着くと家の裏で王都学院の調査隊が何かを囲んでいる。

イラが微妙な顔で調査隊が見ている物を指さす。

それは太った白い芋虫で、小さな黒い目が点々と二つ付いていて、体の脇には小さなヒダの様な手らしきものが無数に生えている。

その白さとヒダ状の手が非常に気持ちが悪い・・・。


「これって・・・寄生虫ですか?」


 俺の問いにイラがこれまた微妙な面持ちで答える。


「まあ、そのなんだ、我々はラムザール殿が言った、寄生虫では無いかと考えていて、確認して欲しくて呼んだのだ」


 これが寄生虫かと聞かれても、実際に寄生虫なんて写真でしか見た事がないし、俺が見た寄生虫はもっとミミズみたいな細長い生き物だった気がする。


「俺が見た事のある寄生虫はミミズみたいな生き物でした。ですが、それ以外にも色々な形の寄生虫がいるので、判断は難しいですが・・・。この寄生虫はどうしたんですか?」


 イラが答え辛そうにしていると、別の王都学院の人が教えてくれた。


「これはナンの父親の便の中から発見されました。私達はインサクトポーションの効果で死んだ寄生虫が、便と一緒に排出されたのでは無いかと考えています」


 それであれば王都学院研究員の見解が的を射ている気がする。


「その可能性は高いと思いますが、ナンの父親の容態は回復していますか?」

「本人は体調が悪化はしていないと言っていますが、まだなんとも言えません」


 ナンの父親の腹から寄生虫がいなくなったとしたなら、現在は治って病後の体力が落ちている状態だと考えられる。

ならばポーションを与えたら、傷ついた内臓もある程度癒えて、低下した体力も回復して元気になる可能性が高そうだな。

早速、ナンの父親にハイポーションを飲ませたら一気に元気になって、めちゃくちゃお礼を言われた。


「ラムザール様ありがとうございました。貴重なポーションを分けてもらって、今までの苦しさが嘘の様に治りました」


 インサクトポーションを飲ませると、殺虫効果で腹の虫が、のたうち回って最後に激痛が走る。

なんて嫌な虫なんだ・・・。

絶対に寄生されたくない。

その後、残りのインサクトポーションをナンの母親と兄にも投与した。

どうやら、症状が軽度だと、まだそこまで寄生虫が成長して居らず、治る時の痛みも少ない様で、ナンの兄などは殆んど痛がらなかった。

 

 インサクトポーションの効果は確認出来たので、王都にてインサクトポーションを大量に作って、トット村に運ぶ手筈をサラダ商会が手配する。

これで王都からインサクトポーションが届けば、トット村の奇病も解決するだろう。

村の近くを占拠していたポイズンフロッグの群れも、勇者PTに一掃されて、泉が使用出来る様になり、村の食料事情や水問題も改善する。

こうしてトット村の奇病問題は解決した。





 次の日、ナンと村人に見送られて、俺達はトット村を後にする。

笑顔のナンとナンの家族が俺達に近寄って来た。


「ラムお兄ちゃん。ありがとう!」

「家族が元気になって良かったな」

「これ、馬車の中で食べて!」


 ナンがまだ温かいパンを渡してくれたので、お礼を言って受け取る。

ナンが嬉しそうにルリアに向き直る。


「ルリアお姉ちゃん。ありがとう!」

「ははは・・・。私は・・・何もしてないよ・・・。ポーションはラムさんだし、魔物倒したのはヴィーラだし・・・」


 ルリアが寂しそうな笑顔をナンに向ける。

ナンが大きく首を横に振る。


「そんな事ないよ!ルリアお姉ちゃんは、一番最初に一人でポイズンフロッグを倒しに行ってくれて、いっぱい倒したってラムお兄ちゃんが言ってたよ!」


 ナンがちょっと恥ずかしそうにルリアを見上げる。


「それにね・・・ルリアお姉ちゃんは一緒にジックサックやってくれたり、水汲み手伝ってくれて嬉しかったんだ。お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、病気になっちゃって、本当はすごく心細かったんだ。でも、ルリアお姉ちゃんが、来てくれて、ノンお姉ちゃんが帰って来てくれたみたいです、ごく嬉しかったの」

 

 それを聞いたルリアは、戸惑いの表情を浮かべていたのでルリアの背中を叩く。


「ルリア、何も魔物を倒すだけが人を救う方法じゃないだろ。ナンの顔を見てみろよ」

 

 俺の言葉にルリアはナンの顔を見て、いつもの無邪気な笑顔を取り戻す。


「ナンちゃん、こちらこそ、ありがとうございます!またジックサック一緒にやりましょうね!」

「何でルリアお姉ちゃんがお礼言うの?」


 ナンが不思議そうな顔をするが、直ぐに深くは考えるのを止める。


「ルリアお姉ちゃん!約束だよ!ジックサックやろうね!」

「約束です!トット村に来たら毎回やりますよ!」


 ナンとルリアが戯れあっているのを眺めていると、ナンの家族が俺にお礼を言いに来た。


「この度は本当にありがとうございました。あの・・・これ少ないんですがお金です」


 ナンの母親が差し出したお金をそっと押し返す。


「私達は領主から報酬を貰っているので、気を使わないで下さい」


 俺の言葉に夫婦顔を見合わせ安堵の表情を浮かべる。

今回、使ったポーションの金額を考えると、どれだけ貰っても大赤字だ。

それならいっそ慈善事業にした方がすがすがしい。

ナン達家族の笑顔に見送られてトット村を後にした。





 ベルクドに戻った俺は早速ジェネレイツポーションの作成に取り掛かる。

ルリアとデタリの決闘は明後日に、騎士団の練習場を借りて行われる。


ジェネイツポーションのレシピ

効果:欠損した部位の再生が可能


必要な材料


ドラゴンの血:生命力に溢れた最強種

ドラゴンの血は劣化が早い為、保存に注意


トロールの心:トロールの再生能力の核となる臓器


オークの肉:イノシシの魔物


極上の魔石


精霊山脈の水:不思議な力が宿った水


 ラビダルポーションを作る時より緊張するな。

なんたって材料が希少なので、失敗したらルリアの腕を生やしてやるのが、次はいつになることか。

前回、デタリに完敗しているルリアが、もう一度戦っても、腕がない状態では勝てるとは思えない。

作成の失敗はルリアの負けを意味している。

素材代もそうだが、ルリアの人生も掛かっていると思うと緊張感が半端ない。

分量計測に手が震えてしまう。

それでも錬金術スキルレベル9の感覚を頼りに調合を進めていく。


「最後にドラゴンの血を加えれば完成っと」


 脇は緊張で汗びっしょりだ。

慎重に最後の素材であるドラゴンの血を加えていく。

現段階では非常に不味そうな色をしていて、正直、入っている物も考えると、自分では飲みたくないな。


「ふー。    錬金術!   」


 大きく息を吐いて気合を入れて、魔力を最大限込めてスキルを発動する。

一際、ポーションが強い光に包まれる。

光が収まると、そこには赤紫色に怪しく光るポーションが出来上がっていた。

軽い脱力感を覚えながら出来上がったジェネレイツポーションを持ち上げる。


「うん。不味そうだな!」


 感覚的に成功していると思う。

色だけが心配だが、光り方を見る限り、強い力を宿しているポーションである事は間違いない。

早速、ルリアを呼んで飲ませたいのだが、嬉しい誤算でドラゴンの血が、まだ二回分ほど残っているのだ。

さらにその他の材料も予備がある!

もう、これは作るしかないでしょ。

ドラゴンの血は保管が難しいので、残して後で使うことが出来ない。

ならば、このまま連続でジェネレイツポーションの作成に取り掛かる。


 二つ目も成功!

ふふふ。錬金術スキル9、万歳!

一体、これっていくらで売れるんだろうか?

三本出来たら一本がルリアで、一本が自分用で、残りの一本は売却する!

金が入ったら猫耳メイドを雇おう。

三つ目の錬金術スキルを発動した瞬間に、気持ち悪さと共に俺は意識を失った。




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