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トット村の調査2

 村長から有益な情報が聞けた。

昔に同じ病がこの村で発生していた。


 村長の家からナンの家に戻ると、ルリアが家の前でナンと遊んでいた。


「ルリア、お待たせ!」

「ねえ、ねえ、ルリアお姉ちゃんもう一回やろうよ!」

「いいですよ!でも次も負けませんよ」


 ルリアとナンは地面に描いた輪に向かって石を蹴って遊んでいる。


「懐かしいな、僕も良く子供の頃に遊んだなー」


 トールさんが懐かしそうにルリアとナンを見る。

何個か地面に輪っかを描いて決められた順に石を入れていく遊びのようだ。


「ふふふ!ジックサックでは負けませんよ」


 ルリアが子供相手に胸を反らせて威張っている。


「あー!じゃあ次はラムお兄ちゃん勝負しよ!」

「初めてだけど出来るかな?」

 

 ナンに誘われてジックサックなるゲームをしてみた。

家族が病気で小さいナンが家の水汲みや、手伝いをしていて最近ずっと遊んでいなかった様で、凄く楽しそうだった。


「ルリアお姉ちゃん、今日はありがとう!」

「ルリアお姉ちゃんに任せておきなさい。明日も水汲み手伝いに来るね!」


 元気に手を振るナンと別れて村の中の野営地に戻った。

ルリアの話によると村の中の井戸の湧水と、ポイズンフロッグが発生した泉が繋がっている為、井戸の水は使わない様にしていて、近くの川に汲みに行っているそうで、体の小さなナンにとっては家事の中で一番の重労働になっている。


 村の中の野営地に戻った俺達はイラ達王都学院チームと情報交換を行う。

 

「ラムザール殿の方は何か分かったか?」


 俺達が聞いた話の内容をイラ達に伝える。


「我々が聞いた話とほぼ同じ内容だな」

「で、ラムザール殿は何か病の原因を掴めそうか?」

「想像ですが、この病は昔からこの村にありました。ポイズンフロッグの大量発生を境に再度、病が流行り始めた。ここがこの病の原因に辿り着く手がかりになると思うんです。例えば泉に蚊の様な病気を媒介する虫が居て、それがポイズンフロッグに追われる形で村にやって来た。そして村人を刺して感染させたってのは考えられませんか?」

「・・・蚊が病気を運ぶのか!?」

 

 確かニュースで蚊が病気を媒介すると一時期話題になって、東京の公園が消毒される光景がテレビに映ってた。

イラの口ぶりからすると、こちらの世界ではあまり知られていなさそうだ。


「ええ、蚊は人や動物の血を吸います。例えば病気を持っている魔物の血を吸って、次に人を刺すと魔物の血が体内に入って、病気になることがあります。今回もその可能性はありませんかね?」


 イラ達王都の研究員が集まって俺の意見に対して議論をしている。

イラが強い意志を宿した青い目で俺を覗き込んでくる。


「ラムザール殿はその様な事、何処で知ったのですか?」

「え・・・と、うちのおばあちゃんが言ってました!」

「なるほど口伝と言う訳ですね。昔からの口伝と言うのはバカに出来ないものが多く、今回も一つの可能性として考えても良さそうですね。しかし、その方法で病気が感染るとして・・・、ヘディックポーションで治らない理由がわかりませんね」


 確かにいい線だと思うのだが・・・。

んー、他に可能性はあるにはあるのだが、現代知識を使った提案だと突っ込まれた時に言い訳に苦労する。

けど、村人の命が懸かっているんだそんな事を言ってられない。


「もう一つ思いついたのが水ですかね。ポイズンフロッグの大量発生以降に村人の生活水が井戸水から川の水に替えたそうです。川の水に原因があるかもしれません」


 生水を飲むとお腹を壊すと聞いたことがあるから、何かしらの病原菌がいる可能性がある。


「実は私達もそれを考えていました。ただ、飲み水にする場合は火に掛けて飲むのが常識です。旅先で火が用意出来ずに生水を飲むことはあっても、村の中でこの人数が生水を飲むとは考え難いんです。それに同じ水を飲んでも発症している人と発症していない人の違いが分からないんです。それに水が原因の場合、キュアポーションが効果が無いのも説明がつきません」


 結局この日の話し合いは終わりにして、明日は騎士団と共に、泉に調査に向かう事になった。


 次の日の朝、弓の練習をする。

弓を買ってからルリアに弓の使い方を習っている。

俺には弓スキルレベル9がある為、ちょっと練習したら直ぐに射てる様になった。

ただ短剣スキルと一緒で、すぐにスキル9を使いこなせる訳でなく、徐々に体に馴染ませていく。

練習二日目にして既に的に当たる様になった。

ルリアによると矢を番えていない空の弓を引くだけで結構練習が必要らしいが、筋力がアップしている俺には簡単だ。

次に矢を番えて射つわけだが、これも二日目でそこそこの距離から的に当てる事ができた。

これだけ当たればポイズンフロッグを遠距離から仕留める事が出来そうだ。

このまま練習して弓スキルレベル9を使いこなせたら、一体どのくらい弓矢が上達するのか・・・恐ろしきスキルレベル9だ。


 朝食を終えた俺は弓を片手に騎士団に護衛されながら、問題の泉にイラ達と向かっている。

獲物探知スキルを発動させると、泉に周辺に気持ちの悪いくらい多数のポイズンフロッグの反応がある。

その数およそ300匹。


「うん!無理!」

「ラムさん!ちょっとなんで帰るんですか!」


 爽やかな笑顔でくるっと方向転換して戻ろうとすると、ルリアに慌てて腕を掴まれる。


「だって300匹なんてどう考えても倒せないでしょ。それに触ったら即死の毒だよ」

「そうかも知れないですけど、ナンちゃんが困ってるんですよ助けてあげましょうよ!」

「俺だって助けてあげたいけど、俺らが調査で死んだらそれこそ意味ないぞ」

「そうですけど・・・」


 調査隊の面々もポイズンフロッグの数を聞いて泉の調査は断念した。

代わりに川の調査に向かう。


 川では村人が魚を捕まえたり、岩をひっくり返して貝を探していた。

川は広い所で三メーターで狭い場所は一メーター程の川幅しかない、水深も膝くらいで水も澄んだ穏やかで綺麗な川だ。

病原菌がいる様には見えないが、病原菌は目に見えない物だからな。

川の水をイラ達が採取し毒がどうかが判る薬品を加えて調べる。


「んー、川の水に毒は入っていないな。川の水を飲んでも問題なさそうだな。持ち帰ってテントで魔法も使って更に詳しく調べて後で伝える。後は、昨日ラムザール殿が言っていた蚊が原因の可能性だが、すまんがそれは調査の仕方が判らない」

「ラムお兄ちゃん!、ルリアお姉ちゃん!」


 明るい声の方を向くとナンが水桶を片手にやってくる。


「今日も水汲みか偉いぞ!俺達も手伝うからな」

「ありがとう!でも今日は水汲みじゃなくて洗濯だけどね」


 ルリアがナンの洗濯を手伝っているのを眺めるていると、ナンの視線が川の中を行ったり来たりしている。

ナンの視線を追いかけると川の中を泳ぐ魚に行く。


「ナンはあの魚が食べたいのか?」

「え?うん。でも早くて私じゃ捕まえられない。

ラムお兄ちゃん捕まえられる?」


 素手では捕まられないが、弓スキルならどうだろうか?

試しに弓で魚を狙ってみる。


 弓矢を用意して膝くらいまで水に浸かって弓を構える。

魚が来るのを構えて待つ。

魚と俺の距離は三メーター程、狙い澄ました一撃が水面に突き刺さる。

矢が水面に上がってくると赤い血が川を汚す。

流れて来た矢を掬いあげると矢の先には二十センチ程の魚が刺さっていた。


「すごーい!」

「ラムさん、やりますね!」


 ナンとルリアに絶賛されていい気分だ。

気分を良くしてその後の魚を狩るが、三匹狩ったら魚が居なくなってしまった。


「泉があった時は泉で魚がいっぱい漁れたから良かったんだけど、今は川でしか漁れないから、みんなが川で魚を漁るから減っちゃたんだ」

「はい、魚あげるから食べな」


 ナンが瞳をキラキラさせて魚を受け取る。


「ありがとう!いつもは私だと貝しか取れないんだけど、ここの川の貝って苦くて美味しくないんだよー。私は大っ嫌い」


 ナンが口をへの字に曲げて苦味を表す。


「苦い貝は俺も食べたくないな」

「でしょー、泉があった時は食べなくても良かったんだけど、お母さんが元気な時はよく取ってきて食事に出されて嫌だったの」

「ん!?ナン!!!」


 俺の大きな声に驚いたナンがルリアの後ろに隠れる。


「ラムさん、小さい子に大きな声出しちゃダメですよ!め!」


 怒ったぽいポーズのルリアがなんか可愛い・・・。

・・・て、違う、違う、頭を振って邪念を払ってナンに訊ねる。


「その貝ってポイズンフロッグが現れる前は食べなかったのか?」

「え!・・・うん。あんな不味い貝、誰も食べないよ。今は食べる物が少ないから仕方なく食べるけど」

「病気の原因て貝じゃないのか!」





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