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トット村の調査

 

 トット村の奇病の調査の為、ベルクド行政館にサラダ会長、ベルクド騎士団長、王都学院研究員のイラ・ヘデンスが集められていた。

自己紹介が終わり秘書官のデイズが集めらた理由を説明してくれる。


「ご存知の通り現在トット村にて原因不明の病が流行っております。サラダ商会に依頼しヘディックポーション、キュアポーションをトット村に運んで村人に投与。太陽神神官による解呪を試みましたが、病は治ることはありませんでした。そこでここに集まって頂いたメンバーで調査隊を組織し、トット村の奇病の原因の解明と治療法を探して頂きます。それではイラ様、説明をお願いします。」


 強い意志を感じる青い瞳でイラは皆の顔を見渡し説明を始める。

 

「トット村の奇病が発生したのは今から一月程前。多くの村人が同じ時期に病を発症している。最初は空腹から始まり異様な量の食事を欲する。それが終わると腹の痛みが始まり、発疹、発熱、嘔吐などの症状が現れ次第に衰弱していく。幸いにもまだ死者は出ていないが、衰弱度合いから見ると死者が出るのも時間の問題だろう。患者は現在も増え続けている。早急に原因の解明と治療法を見つけないとトット村が消える事になる。我々の方で事前にある程度、病の目星を付けている」


 イラが俺に一枚の紙を差し出して来たので受け取る


「ラムザール殿にはこれに書いてあるポーションを至急作ってもらいたい」


 イラに渡された紙を見るとキュアポイズンポーション、キュアロットポーションと書かれたレシピだ。


 「サラダ商会にキュアポーション、ヘディックポーションを試してみて貰ったが、効果が無かったと聞いている。そこでまずキュアポイズンポーションを試したい。キュアポイズンポーションは毒に特化したポーションだ。村の周辺ではポイズンフロッグが大量発生している。我々、王都学院ではポイズンフロッグの毒が原因だと考えている。次にキュアロットポーションだが、これはゾンビに噛まれた時に使用するポーションだ。今回の症状がゾンビ化になる兆候に似ている為、このポーションを選んだ。だがゾンビ化にしては進行が遅く、こちらの可能性は低いと考えているが、可能性がある以上一度試してみたい」


 イラの説明はもっともで特に異論はない為、ポーション作りを快諾する。


「ポーションが出来るのはいつになる?」

「数にもよりますが?」

「取りあえず早く試す必要がある。五本ずつ頼めるか」

「その数でしたら材料があれば今日中にでも出来ます」

「それなら直ぐに取り掛かってくれ」

 

 その後、デイズから各団体の細かい役割の打ち合わせに移っていく。

イラ達王都学院チームが原因の調査、騎士団が移動と滞在中の護衛、サラダ商会が必要な物資の準備。

そして俺が必要なポーションの作成だ。

俺達錬金術ギルドメンバーも知識面から現地調査に加わる様に言われた。

出発は明日の早朝。

余りにも急な話ではあるが、いつ死者が出てもおかしくない状態だ。

それに今回はナンの事が個人的に気になっているので、俺も早く行くのは賛成だ。


 今回、トット村に我がギルドから行くのは、俺とルリアとトールさんの三人だ。

シアとリーザさんは最近ギルドを空けたばかりなので留守番。

シアがめっちゃ膨れっ面であったが、プランさんの手前渋々納得してくれた。

最近、シアは俺と離れて残されるのすごく嫌がる。

ルリアはギルドに残るより、やはり魔物相手の方が輝くし、俺が居ないと錬金術の補助の仕事も無いので来てもらう。

俺達二人だと知識面で心配だったので、頼りになるトールさんに同行をお願いした。


 その日の内にキュアポイズンポーション、キュアロットポーションを各五本作って、明日の早朝の出発に向けの準備をルリアにお願いする。

あちらで滞在が何日になるか分からないので、大量の食料とテントや寝袋などの寝具類、ポイズンフロッグ対策に弓矢と長槍も二本購入してもらった。


 ルリアの腕を治すジェネレイツポーションの材料は揃っているので、早くルリアの腕を治してやりたいのだが、ベルクドに戻って来てから、溜まった錬金術の依頼、ギルド員の新規採用、領主命令のトット村のポーション制作からの派遣で、ジェネレイツポーションを作る時間が取れない。

誰にもジェネレイツポーションの話はしていないで、期日は無いのだが、なるべく早く作りたいのだが、目の前の仕事に忙殺されている。

ルリア、ごめんな・・・。

トット村から戻ったら必ず作るからなと心の中が謝った。


 出発日に集まったメンバーは、王都学院チームはイラさんとその他男性二名。

錬金術ギルドは俺とルリアとトールさん。

トット村までの護衛として騎士が五名で騎士は男性三の女性が二名で、護衛対象にイラさんがいる為、女性の騎士が選抜されていた。

馬車二台に乗り込み前後を騎士達が守る形でトット村に向けて出発した。


 無事に到着したトット村は定期便の馬車隊で無いため、物売の出迎えもなく村は更に静けさに包まれている。

到着後にイラ達がキュアポイズンポーション、キュアロットポーションを村の患者に重度、軽度に分けてポーションを飲ませて行く。

合っているポーションなら直ぐに効果が出てくるのだが、どちらもポーションも改善が見られなかった。


 そこで俺達と王都学院で二手に別れて更に村を調査する事になった。


「トールさん、何か思い当たる原因てありますか?」

「ごめん・・・。僕の知識じゃ思いつかないよ・・・」


 トールさんが悔しそうにした唇を噛み締める。


「ルリアは何か思い当たる?」

「んーんーんーんー」


 ルリアが難しいそうな顔をして首を左右に傾げる。

なんでルリアってそれっぽくしている様に見えちゃうんだろう。


 「ここで考えても答えは出ないないか・・・。まずはナンの家に行って話を聞いてみようか」

「そうですね!私もナンちゃんに会いたいです」


 ナンの家に向かって歩いていると、向こうからナンが重そうなバケツを抱えてやって来た。


「あ!ラムお兄ちゃん!」


 俺達を見つけると笑顔で近ずいて来る。


「ナン、こんにちは。家族の容態はどう?」


 ナンが泣きそうな顔で首を振る。


「ちょっとお母さんに話を聞けるかな?」

「聞いてくるね!」


 家の奥に消えて、しばらくしてナンが戻ってくる。


「ちょっとなら大丈夫だって!」


 顔色が悪いナンの母親が出て来てくれた。

挨拶を済ませて病について詳しく話を聞いていく。


「この病が始まった前後で何か今までと違った事ってありませんでしたか?」

「村人の間ではポイズンフロッグの毒が、原因なんじゃないかと話しています。村から森に行くと綺麗な泉があるのですが、少し前にポイズンフロッグが住み着いてしまいまして、泉に近づけなくなりました。そして最近住み着いたポイズンフロッグが産卵し孵った子供のカエルが村の周辺に出没するようになったのです。変わった事と言えばそれくらいでしょうか」


 ナンの母親の話でもポイズンフロッグの情報しか出てこなかった。

一度、泉に調査に行ってみるか・・・。

毒が風に乗って来て毒に侵された。

でもそれなら体の小さいナンや子供達から冒されるだろうから、ナンが病気になっていないのがおかしい。

それに毒ならキュアポーションで治る筈だし。

毒の可能性は低い気がする。

呪いや、ゾンビ化、ウイルス、細菌性の病気でも無い。

後は盲腸や癌の様に臓器に異常が出る場合だが、同時に発症するなんて現代で聞いた事がないし。

やはり情報が足りないな。


「誰か他に話を聞ける方っていませんかね?」

「それでしたら、村長に聞いて頂くのがよろしいかと」


 ナンのお母さんに村長の家の場所を聞いて村長を訪ねる事にした。

村長の家に向かおうとするとルリアに呼び止められる。


「ねえねえ、ラムさん」

「うん?ルリアどうした?」

「ナンちゃんの水汲みが大変そうだから、ラムさん達が村長の話しを聞いている間、手伝ってあげててもいいかな?どうせ私が聞いても話し分からないだろうし」

「ありがとう、ルリア。俺から頼むよ。村長の話を聞いたら迎えに来るよ」

「はいな!」


 ルリアが無邪気な笑顔で返事をして元気にナンの家に戻って行った。

トールさんと二人で村長の家を出る訪ねと村長は病には冒されていなかった。


「先程来られたイラ様達にもお話しした同じ内容しかお話し出来ませんが

、それでもよければお話し致します」

「申し訳ないですがもう一度お願いします」


 イラ達王都学院チームと入れ違いになってしまった。

村長の話は先程のナンの母親から聞いた内容とほぼ同じ内容だったが、一つ興味深い話が聞けた。


「実はこの病は今回が初めてでは無いのです。この村が出来て最初の時期に数名ですが、この病に罹って亡くなっているのです。その時は数名だけで直ぐに病も流行らなくなり、その後、病に掛かる者は居なくなりました」

 

 村長の話からこの病は元からこの村に存在していた。

一時期、病は身を潜めていたが、ポイズンフロッグの大量発生に伴い再度、病が流行り始めた。




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