トット村の病の原因
誤字訂正誠にありがとうございます。
本文にウイルス、細菌の話が出てきますが、抗ウイルス薬、抗生物質と作用が違う、種類になりますが、この世界ではどちらもへディックポーションで治ります。
前話、投稿忘れてましたので本日二話投稿になります。
トット村に立ち寄った俺達は以前訪れた時に、ナンの家族が病に罹っていると言うので、俺がヘディックポーションをナンに渡していた。
しかし再度トット村を訪れてナンに家族の容態を確認すると病は治っていなかった。
リーザさんの話ではウイルス性、細菌性の疾患に関しては、ヘディックポーションで治るそうだが、今回、ナンの家族には効果がなかった。
それならばウイルス性や細菌による疾患よりも毒による体調不良が疑われる。
手持ちのキュアポーションを試してみる事にした。
「キュアポーションをあげるから今度はこれを家族に飲ませてみてくれないか?」
ナンの前に取り出したキュアポーション二本を差し出す。
ナンは俺とポーションを交互に見るとその小さな手をポーションに伸ばす。
「本当に貰っていいの?私、お金持ってないよ」
俺は笑顔で頷く。
ナンは嬉しそうにキュアポーションを胸に抱え込むと家に向かって走って行く。
ナンが去った後にはパンの入ったバスケットが残されていた。
キュアポーションが効いたかどうかも知りたかったので、ナンの後を追ってバスケットを届けに行く。
ナンの家を訪れるとナンのお母さんが出迎えてくれる。
体調は悪そうだが立ち上がっているし、寝たきりではない様だな。
「これはこれは、ナンにポーションをくださったそうで、ありがとうございます」
「ナンちゃんとはパンと交換しただけなので気になさらずに。それよりもヘディックポーションを飲まれても体調が治らないと伺いましたが」
「はい、ご好意を頂いたのですが、ヘディックポーションでもキュアポーションでも私達の病は治りませんでした。この家に居ると感染るかもしれませんので、早くお引き取り下さい。優しくして頂いた方々に感染しては申し訳ありませんので・・・」
「・・・そうですか。お役に立てず申し訳ありません」
病気でも毒でもないのか・・・。
それとも上級のポーションでないと治らないのか・・・。
サラダ商会が販売しているポーションが気になって、走ってサラダ商会の馬車に向かう。
「ラムー!ちょっと待ってよ!」
シア達も慌てて俺の後を追って来た。
サラダ商会の馬車でサラダ会長を捕まえて話を聞く。
「我々、サラダ商会が販売しているポーションもラムザール様が、渡したキュアポーションとヘディックポーションと、それぞれの上級のポーションも販売しておりますが・・・。やはり効果は無いですな。後、考えられるのが呪いですが・・・。馬車隊に唯一同行している太陽の神官に呪いの解呪をお願いしてみましたが、それも効果が有りませんでした。」
サラダ会長が悔しそうに俯く。
トット村から次の宿場町に向かう馬車の中は重い空気に包まれていた。
病気でも毒でも呪いでもないとなると何が原因なのかさっぱり分からない。
この世界の特有の何かがあるのか。
ナンの顔を思い出す度に心が痛む。
ポーションは万能だと思っていたのに。
「ピピ! ピピ!」
トット村を出てしばらく行くと短い笛の音が聞こえる。
二回短く吹くのは魔物の遭遇を知らせる合図だ。
前方で魔物に遭遇があったようで馬車が停止している。
以前もこの辺りでポイズンフロッグの大群に襲われた。
獲物探知スキルを発動するとポイズンフロッグの反応があり、馬車隊に複数のポイズンフロッグが近づいて来ている。
「ルリア、ポイズンフロッグだ!」
「はいな!」
ルリアが元気良く返事をして嬉しそうに立ち上がる。
前回、ポイズンフロッグに襲われた時に勢い良く飛び出して、シアに不安な思いをさせた事を思い出す。
「シア、絶対無理はしないから」
シアに告げてルリアと共に馬車から降りて武器を構える。
獲物探知スキルを使って近くのポイズンフロッグから、前回と同様にスリープアローで眠らせていく。
眠らせて無力化しておけば、冒険者達が処理していってくれる。
今回の襲撃でも馬車隊に被害が出ずに無事に乗り切る事が出来た。
俺が出なくても良かったかもしれないが、獲物探知スキルで辺りを警戒して、安全な距離からスリープアローを撃つだけの簡単な仕事だ。
俺が何もしなくて被害が出たら、きっと後悔すると思う。
後はトット村で無力だった自分への苛立ちをぶつけたのもあるが。
やはり、このポイズンフロッグはトット村の病と関係があるんじゃないだろうか?
俺のモヤモヤは増すばかりだった。
懐かしい海の景色に潮の香り。
ベルクドの町に帰って来た。
半月振りのベルクドの町は凄く懐かしいくて、安心感と嬉しさが込み上げて来る。
他のメンバーも同じ様で目を輝かせてベルクドの街を眺めている。
家も気になるが、まずは皆でギルドに顔を出す。
久々に見るギルドも感慨深いものがある。
「ただいま帰りました!」
元気良くギルドの扉を開けて中に入る。
そこにはプランさん、トールさんの懐かしい顔がある。
ある・・・、あるのだが・・・。
顔が死んでる・・・。
「マスターーー。お帰りなさい。やっと帰って来てくれたよ」
「ラム君、お帰り。王都はどうだった?」
プランさんがホッとした表情を見せて、トールさんは目の下にクマを作った顔で力なく微笑む。
「プランさん一体どうしたんですか?!」
「ははは、それがね、マスター。うちが御用ギルドになったもんだから、今まで取引が無かった所や個人のポーションの依頼が増えてね。マスター達に作り置きして貰ったポーションが予定より早く尽きちゃったんだよ。トールが頑張ってくれたんだけど追い付かないし。石鹸の問い合わせやら、求人募集の応募があるわでさ。もう忙しかったのよ」
「それはお疲れ様でした」
今日は家に帰って休んで、明日から仕事を開始したかったが、プランさんとトールさんのこの様子を見たら、そんな事も言ってられないよね。
それから三日程は目の回る忙しさだった。
まずは依頼の溜まったポーションと石鹸の作成。
これは俺の豊富な魔力でパワープレイで片付けていく。
「錬金術!」
「錬金術!」
「錬金術!」
「錬金術!」
「錬金術!」
ルリアや手の空いたメンバーに補助をしてもらって、一気に仕上げていく。
そのポーションを作る合間にギルド員の面接も行う。
メイソンの嫌がらせで辞めていったギルド員や受付が、御用ギルド認定を受けて、再度このギルドに戻りたいと言って来たのだ。
リーザさんは戻って来たいメンバーに対して最初不快感を示していたが、彼らが必死に謝る姿を見て許した様だ。
リーザさんのお爺ちゃん代から一緒にギルドで働いていたメンバーで、リーザさんが小さい時から知っている人達だ。
彼らもメイソンの嫌がらせで仕方なくこのギルドを去った経緯がある。
そんな事情もあるし、リーザさんはなんだかんだで優しい人なのだ。
御用ギルドになったせいで依頼も増えていて、俺が居れば捌ける依頼量だが、俺が休んだらもうどうにもならない。
働きたくない俺はリーザさんが許すならぜひ採用したかったので、全員戻ってもらうことになった。
これで事務が二名と錬金術師が七名増えて総勢十七名のギルドになった。
これでなんとか俺が休んでも何とかなるな。
そんな中さらに領主からの呼び出しが掛かり、俺は行政館の長官室に来ていた。
長官室には秘書官のスイートと長官のキャップ、そしてサラダ会長と騎士団長と見知らぬ女性が一人。
「諸君らに集まって貰ったのはトット村で起きている、奇病についての調査と解決の為だ。じゃあ、デイズ始めてくれ」
長官の挨拶から始まり秘書官のデイズが話を進めていく。
「それではまず始めに、こちらの女性を紹介します。王都学院研究員のイラ様です。今回のトット村の病の原因の調査をする為に来て頂きました」
「イラ・ヘデンスだ。よろしく頼む」
イラ・ヘデンスと名乗った女性はシアと同じ金髪に青い瞳の気の強そうな美女だ。
凛々しい眉に、強い意志を宿した青い目、綺麗な金髪はどこかシアと似た見た目だ。
胸はボリュームタップリだな・・・。
そんな感想を抱いているとキッと睨まれました。
男なら見ちゃうよね。