表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/106

ルリア決闘

 顔を真っ赤にしたデタリに連れられて来たのは、コロシアムの中にある練習場だ。

デタリの顔が赤いのは転んだ羞恥心からなのか、俺達が笑った怒りなのかは判らない。

もしかしたら両方かもしれない。


 コロシアムの練習場に着いたシアとデタリの二人は置いてあった木剣をお互いに構える。

デタリは盾も使っている。

ルリアの強さは身を持って知っているが、相手はルリアの抜けた勇者PTに、騎士として選ばれた男だ。

ルリアがいかに強かろうと片腕では厳しそうだが・・・。


 ルリアの鋭い一撃から試合が開始される。

ルリアが速さを活かしてヒットアンドアウェイを繰り返すが、デタリの盾によって全て弾かれてしまう。

初めて盾の強さを知った。

デタリはルリアの斬撃を盾で受けて、出来た隙を突いてルリアに斬りかかる、守りの戦法だ。

デタリの戦い方は安定していて全く隙が無い。

ルリアはさらにスピードのギアを上げて斬りつけては前後左右に動き、相手の隙を作ろうとする。

ルリアの攻撃は利き手ではないし、女性で身体つきがゴツいわけでもないので軽い。

ルリアは攻撃の重さを捨て更に手数を増やしていく。

デタリがルリアの手数の多さに苛立ち、強引に盾を押し込んでくる。

そんな隙をルリアが見逃す筈が無い、ここぞとばかりにルリアがスキルを発動させる。


「スラッシュ!」

「ガード!」


 ルリアの木剣とデタリの木の盾が輝き、木同士なのにカン高い音を上げる。

スキルのぶつかり合いに負けてルリアの方が体勢を崩す。

その隙を突いてデタリがスキルを発動する。


「スラッシュ!」

「ぐあぁ・・・」


 デタリのスキルを発動した木剣がルリアの左脇腹を切り裂き、苦悶の声を上げて崩れ落ちる。


「「「ルリア!」」」


 痛みに苦しむルリアに駆け寄り、直ぐにハイポーションを飲ませて、もう一本を脇腹に掛ける。

次第に苦悶の表情が和らいでいく。


「思った以上に歯応えが無かったな。弱い者イジメのようで後味が悪い。お前の右腕があったとしても結果は同じだと思うぞ。所詮お前は勇者ヴィーラ様と同郷で無ければ騎士になど成れなかったんだ」


 デタリは吐き捨てると、もうルリアに興味を無くした様に去って行った。


「ルリア大丈夫か?」


 ルリアの顔を心配そうに覗き込む。

ルリアの瞳からポロポロと涙が溢れ落ちる。


「傷が痛むのか?」

「わたし、わたし、負けちゃいましたー。わああああああぁぁぁぁぁ!!!」


 泣いているルリアをシアが慌てて抱き締めてあげる。

ひとしきりシアの胸で泣いたルリアはケロッとした顔で立ち上がり、いつもの笑顔を俺達に見せてくれる。


「泣いたらお腹空いちゃいました。ご飯食べにいきましょ。てへ・・・」


 いつもの屈託のない笑顔を見せたルリアに、シアがホッとしたような笑顔でルリアに抱きつく。


「もう、傷は痛くない?」

「この通り、ラムさんのポーションのおかげでピンピンです!」


 ルリアがぴょんぴょん飛び跳ねる。

その元気な姿に俺も安心した。


「よし、旨い物食べに行こう!」


 いつもの調子を取り戻したルリアと共にコロシアム周辺で食事を済ませた。


 午後はリーザさんが行きたがっていた服屋に行く。

俺もギルド総会に着て行く服を物色する。

別に貴族の集まりじゃないし、服の規定なんてないが、やはりTPOに合わせた格好で行った方が、どこの世界でも望ましい。

正直何でもいいのだが女性陣三人が、服を持って来ては俺に当てがって、また別の服を合わせるって事を何回も繰り返している。

十度目くらいに三人の意見が一致し、青い高そうな服に決まった。


 俺にはもう一つ買いたい服がある。

それはシアのパジャマだ。

三人のパジャマ姿を拝見したのだが、シアだけ最初に着ていた服をパジャマとして使っているのだ。

別にそれでも可愛いんだけどさ、でも、どうせならもっと可愛い服を着せたいって思うよね。


「シアー!」

「なに?」


 女性のパジャマの売り場にシアを呼んで服を合せていく。

この世界のパジャマは男性も女性もワンピースタイプが主流だ。

色が違うくらいで正直デザインはそんなに違わないな。

シアが恥ずかしそうに、でもどこか嬉しさを隠せない表情で、俺がパジャマを合わせるがままにされている。


「やはり白か・・・青もいいな・・・黄色も可愛いし・・・シアはどれが良いと思う?」

「へ!えっと・・・どれも可愛いと思う」


 すっとんキョンな声を上げて恥ずかしそうに言う。


「じゃあ、鉄板の白とシアのイメージカラーの青にしよう」


 俺はシアのパジャマ二着を手に取ると、シアと同じ青い色の自分用のパジャマも手に取る。

一度ペアルックをやってみたかったのだ。

でも外では恥ずかしいので、パジャマでシアとペアルックにしてみた。


「・・・」


 浮かれて気付かなかったがリーザさんが笑顔で待っていた。

そしてリーザさんの後ろにはルリアも並んでいる。


「リーザさんはこの黄色いパジャマなんか似合うと思いますよ」

「ありがとうございます!ラムさんも黄色いパジャマが似合うと思いますよ!ラムさんのサイズ探しておきますね!」


 リーザさんが居なくなると満面の笑みでルリアがずいっと一歩前に出て来た。


「ああ、ルリアのパジャマも買おうな」

「やっぱりピンクが良いんですけど・・・んーんーんー」


 難しい顔をしてルリアが首を傾げる。


「どうした?なんの色で迷ってるんだ?」

「いやー、ピンク色のパジャマを着ているラムさんを想像したら気持ち悪くて・・・」

「いや!ペアルックにしないから!」

「えー!しないんですか!何でしないんですか!シアとルリアだけですか!」

「え、・・・まあ、そんなにルリアがしたいなら・・・するか?」

「絶対しません!」


 めちゃくちゃ嫌そうな顔をされてちょっとへこんだ。

 




 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ