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リーザ視点

私の名前はリーザ、20歳。

この町ベルクドに二つある錬金術ギルドの一つでギルドマスターをやっています。

この歳でギルドマスターなど務まる訳もなく私の代になって、多くのギルド員が去っていきました。


最近まで私の祖父がギルドマスターをやっていましたが、急に亡くなり孫の私が急遽ギルドマスター代理になりました。

父も錬金術師でしたが錬金術の素材採取に行ったまま帰ってきませんでした。


ギルドマスターに私がなった時はギルド員の皆は、私に協力してギルドをもり立ててくれると、言ってくれたのに。


「ミスドさん、なんとか考え直してもらえませんか?」

「リーザ、ごめんな。最近メイソンギルドの嫌がらせが家族にまで及んでな。これ以上家族に迷惑掛けられない。もうメイソンギルドに移籍するか、別の町に行くしかない」


メイソンギルドの引き抜きは最初のうちは水面下で行われていたが、最近はこうして表だった強引な引き抜きも始まっている。


これで私を入れてギルド員は五人になってしまった。

ギルド継続の許可をもらう為に年間5万Gをギルド本部に納める必要がある。

来年の支払い期日が迫っていて、ギルド員が減ってしまい、このままではお祖父ちゃんの代から続いた、このギルドが無くなってしまう。


今、この町の騎士団がゴブリンの大規模討伐に出発する噂話がある。

ポーションの大口受注を受けるため、商業ギルドを通じて騎士団に働きかけてもらっている。

この話が上手くまとまれば今まで貯めたお金と合わせて何とか来年のギルド会費の支払いの目処がたつ。


後はギルド員を増やさなければ、来年も同じ事が続いてしまう。

この町にいる錬金術師はうちかメイソンギルドに所属している。

新しくこの町に来た錬金術師に加入してもらうか、新人を勧誘するしかない。


この世界では十五歳になると神よりスキルを貰える事がある。

十五歳の誕生日になると、皆期待に胸を膨らませて神の神殿を訪れる。

もちろん神からスキルを貰えなくても錬金術師になることは出来る。

ただ錬金術の勉強を長いことする必要がある。


そんな幸運にも錬金術スキルを貰った、十五歳の新人を勧誘してギルド員になってもらう。

時間が出来たら神の神殿に足を運び勧誘活動をしているが、(いま)だ勧誘出来ていない。

そもそも錬金術のスキルを貰える人の数が少ないのだ。

多くの人が農業系のスキルや商業系のスキルになる。

貴族なんかは特殊なスキルを貰える事が多く、やっぱり偉い人は違うんだなって思う。


今日も仕事終わりに神の神殿の前を通って帰る。

まー、この時間にスキルを授かった人なんて居ないとは思うけど、毎日遠回りして神殿の前を通るようにしている。


神の神殿の近くに行くと神殿の前でキョロキョロ辺りを見回す青年がいる。

15歳より上に見えるし、この辺りでは珍しい黒髪だ。

絶対スキルを授かりに来た子には見えないのでスルーしようとしたけど、めっちゃ見られてる気がする。

あまりに見られていたので、ちょっと嫌だけど声をかける。


「あのー、どうかなさいましたか?」

「え!‥‥あ!‥‥すみません」


黒髪の青年は顔を赤くして下を向いてしまった。

声を掛けたのでせっかくなのでスキルについて聞いてみる。


「不躾な質問なんですが今日は神様にスキルを貰いに来たんですか?」

「スキル‥‥スキル‥‥ああ。神か分からないけど、ウサギにスキル貰いましたね。」

「え!貰ったんですか!?」


ウサギってなんだろうて疑問はあるけど、どうやら誕生日に神殿を訪れた人みたい。


「なんのスキル貰ったんですか!!!」


テンションが上がってグッと顔を近づけてしまった。

黒髪の青年はビックリして目をパチパチさせている。

いけない、落ち着くのよ、リーザ。


「えーと錬金術です」


きたーー!!!!!

めっちゃ嬉しい!!


「錬金術なんですね!錬金術で間違いないんですね!!」

「錬金術で間違いと思います」

「私のギルドに入ってください!!」

「え!ギルドってなんですか?」


あれ?この子ギルド知らないの?

そうよね、ギルドなんて無い田舎から神の神殿のある、この町にスキルを貰いに来る人もいるわよね。


「錬金術師はどこかのギルドに所属しないとお仕事できないの。私のギルドに入ればお部屋もタダで貸してあげる!」

「お姉さんのギルドなんですか?」

「ほんとはお祖父ちゃんのギルドなんだけど今は私がやってるの」

「是非、ギルドに入れてください!」


青年は満面の笑みで頭を下げてきた。

やったー!最初は変な人だと思ったけど、勇気を出して声を掛けた自分を誉めてあげたい。


「あ!ごめんなさい。私はリーザ。あなたは?」

「名前ですか?名前は、んーラムザールです」

「ラムザールね、ラムさんでいいかな?」


あんまり聞きなれない名前だった。

やっぱり田舎から来た人なのかしら、世間知らずの人を騙すみたいでちょっと気が引けるけど、しょうがないよね。


泊まる所がないって言ったので、ギルドの裏の宿舎に案内する。

少し前まではこのギルド宿舎も満室だったのに。


「この部屋を使って。ベットも何も無い部屋でごめんね。毛布とタオルは置いておくから使ってね」

「ありがとうございます」

「明日の朝また来るからね」


新人のラムさんを部屋に案内して家に帰る。

あーー、今日は本当に良かった。

こんな偶然あるんだろうか、ちょっとだけだけど先が見えてホットした。

でもまたメイソンギルドに引き抜かれないように、注意しないと。

勘違いかも知れないけど、ラムさんの私を見る目が昔、告白してきたギルドの人に似てる気がする。

優しくして私に好意を持って貰えれば、メイソンギルドの引き抜きも大丈夫かな。

どちらにしても、優しくしてこのギルドを好きになってもらう事は大切だよね。


次の日、彼氏のトールにラムさんを紹介する。

私が大変なギルドマスターを引き受けたのはトールの為でもある。

ゆくゆくは結婚してトールにギルドマスターを譲ろうと思っています。

お祖父ちゃん、お父さんの想いでの詰まったギルドを無くしたくない。

それに、トールにギルドマスターになってもらって、私はギルドマスター婦人として、ゆっくり暮らすの。

その夢の為にも今は頑張らなくっちゃ!


トールにラムさんの教育を任せて、私は事務仕事に入る。

最近は錬金術師とギルドの事務仕事を両方やっていて本当に忙しい。

その日のうちにラムさんはポーションを成功させてしまって。

そしてその次の日には上ポーションも作ってしまった。

質も良いし、作れる量も多いし、凄い新人をギルドに勧誘出来た。

それに私の事をキラキラした目で見てくるので、ちょと気分が良い。

明日はトールとラムさんが採取に行くらしい、朝早いけどトールにお弁当作って、女子力アピールしよっと。

あとラムさんの歓迎会をやならいと、トールに相談してみようっと。


それから数日後、商業ギルドの人から騎士団によるゴブリン討伐が正式に決まり、ポーションの依頼があったと連絡があった。

ただメイソンギルドもこの話を聞き付け、依頼は入札形式になったってことで、商業ギルドに呼び出された。


私は商業ギルドに騎士団のポーションの入札に向かう。

ポーション入札は公正を期すため商業ギルドが取りまとめを行う。

商業ギルドに入ると嫌な顔が目に入る。

この町に、もう一つある錬金術ギルド、ギルドマスターのメイソンさんだ。

この人は私の事をねちっこい目で見てくる、それも特に胸ばっかり。

太ってるし、本当に気持ちが悪い。


「こんにちは、リーザさん。今日もお美しい。ヒヒ」

「こんにちは、今日の入札は負けません!」

「ヒヒ、お手柔らかにお願いします」


うわーー!気持ち悪い!

今日もいやらしい目で全身を見られ、喋り方も気持ち悪い、本当に無理ーー!


商業ギルドの職員に連れられて、会議室に移動する。

ギルド職員より説明が開始される。


「では、これから、ベルクルド騎士団ポーション入札を開始します。ご存じの通りゴブリンの集落が発見されました。ベルクド騎士団による討伐作戦が予定されています。騎士団ではポーション1000個、ハイポーション30個、マジックポーション30個の依頼が出ています。これらの納品金額を紙に書いて提出してください。合計の納品金額が安いギルドに発注させていただきます。納品日は六日後となります。よろしいでしょうか?」


「問題ない」

「はい。大丈夫です」


凄い量だけど、作り置きしている分と皆で協力すればぎりぎり納品日に間に合いそうだ。

余り利益を無くして低い金額で入札して勝っても意味がない。

人数が少ない私たちは無理は出来ない、通常より少し安い価格で記入する。

メイソンさんが薄笑いでこちらを馬鹿にする様な目線を向けてくる。

私はさっき書いた価格を消してもっと安い価格に書き直す。


「ではこれで入札は終了します。価格が決まり次第、書類を作成し騎士団、立ち会いのもと、正式契約をいたします。明日の午前中は空けておいてください。これで入札は以上となります」


入札が終了し解散となる。


「それではリーザさん、結果を楽しみにしてますよ。ヒヒ」


あの人がとる行動全てが嫌だ。

ちょっとむきになって金額を下げてしまったけど、大量の注文だから利益が残るから大丈夫。

決まったら、忙しくなる、頑張らなくっちゃ!


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