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主人公転生の話

コメントに転生初日は書かないんですか?とコメントを頂きましたので書いてみました。

書いてみましたが・・・要らんかったかもしれん。


 無事に石鹸の納品を期限内に終えて、今日は五人で月の誕生際のお祭りに繰り出していた。

五人と言うのはプランさんとレントさんを除いたギルドのメンバーだ。

プランさんは今日は旦那さんと一緒に過ごすそうだ。


 町はお祭り一色になっていて町には猫の獣人、近くの村人などがベルクドの町に集まっていて、今までに見たことのない人の数だ。

このベルクドの町には太陽の神殿がある。

太陽の神殿はこの辺りではベルクドにしか無い為、近隣から人々が祈りを捧げに集まって来ているのだ。


俺達も祭りを楽しむ前に、太陽の神殿で祈りを捧げにやって来た。

正月の大晦日のように太陽の神殿は祈りを捧げる人々によって長い列が出来上がっていた。


「すごい列だな、いったい何時間並ぶんだ?」


 俺が不満の声を漏らすと、トールさんが良い事を教えてくれる。

ベルクドの紋章のブローチを見せれば並ばなくても神殿に入れるらしい。


 貴族らしき人々が列を素通りして、神殿に入って行く。

俺達も列に並ばずに神殿に入ってみた。

内心はドキドキで、ベルクドの紋章のブローチを見せて断られたら恥ずかしいぞ。


 貴族用の受け付けに並んで、受付の巫女にベルクドの紋章入りのブローチを受付で見せるとスッと箱を出される。


「ラムさん、その箱に神の感謝を入れるんですよ」


 リーザさんが俺に小声で教えてくれる。

ああ、日本で言う玉串料とか初穂料のことね。

ただ、いくら入れたら良いのか分からないので巫女さんに尋ねると、今度はスッと紙を出され、紙には一人100G~と書いてあった。

なので五人で500Gだけど、見栄をはって1,000G箱に置くと巫女さんが笑顔で奥へと案内してくれる。


 神殿の奥正面には仮面をかぶった石像が置いてあり、その隣に一回り小さい、こちらも仮面をかぶった石像が並んでいる。

小さい方は体つきから女性の神の像であることが推測出来る。

大きい像が太陽の神で隣の像が月の女神の像だろうか。


「では、こちらで礼拝をお願いします。礼拝が済みましたらあちらよりお帰り下さい」


 巫女さんに案内された席に着くと、皆、目を瞑ったので俺も真似して目を閉じてお祈りしてみる。

金持ちに成れますように、モテモテになりますように、健康で長生き出来ますように、後は何を祈っておこうかな・・・





「ピピピピピピピピピピピピピピピ」


 携帯でセットしていた目覚ましのアラーム音で目を覚ます。


「眠い・・・」


 何も考えられない頭で携帯のアラームを止めて時刻を見ると朝五時ぴったりだ。

そのまま、何も考えずにスーツに着替えて水も飲まずに家を出る。

外はまだ暗いし寒い。

家から歩いて駅に向かい電車に乗る。

五駅ほど電車に乗り駅を降りたら、今度はバスに乗って、揺られること十五分ほどで仕事場についた。

仕事場は郊外にあるコンビニで店長をしている。

コンビニはご存じの様に二十四時間営業だ。

使う方は便利かも知れないが、営業している方はたまったもんじゃない。

深夜は基本アルバイトに任せているのだが、アルバイトが体調不良等で欠員が出れば、店長である俺が穴埋めに行かなければいけない。

「お疲れっ」て言って店を出た三時間後に店から電話があって戻るなんて事は日常茶飯事だ。


 コンビニのほとんどはフランチャイズ経営で、俺が就職した会社もコンビニを数十店舗運営するフランチャイズの会社だ。

大学時代にアルバイトのし過ぎで単位が足りず、留年。

留年が二年続き、大学に行かなくなり中退。

まず最初に就職したのが不動産の住宅販売会社だ。

二年程頑張ってみたが、残業代は出ないし、ノルマ達成の圧力が強いし、休日出勤にボランティアや住宅展示場の手伝いに行かされるはで、ブラック企業感が半端なくて辞めた。

次は大学時代にやっていたバイト先のコンビニに就職した。

コンビニのアルバイトは性に合っていた。

自分で注文した弁当が売れたり、花火大会の日に大量に仕入れた、チキンが全部売れて儲かった時なんて、やりがいを感じた。

だから、コンビニに正社員として就職したのだが、コンビニ業界も言わずと知れたブラック企業で、まともな会社である筈がない。

会社の上司は綺麗事は言うのだが結局無理な事をさも当然の様に押し付けてくるだけだ。

 

 そのせいでこの会社に就職して三年、この一年で三度店で倒れて救急車で運ばれた。

原因は不規則な生活から自律神経系が乱れた事が原因だと言われた。

薬が無いと寝れないが、薬で寝ると起きれない。

起きれないので薬は飲まない、飲まないので寝れない。

寝れないので体調を崩す、病院に運ばれて点滴を打って回復する。

点滴って凄いね!

あれだけ死にそうなのに点滴打ってもらうと元気になるんだ。

毎日打って欲しいよ!


 俺は死にたいなんて思っていないが、最近よく自殺サイトを見てしまう。

どうやって死ぬのが楽に死ねるんだろうか?

もし、死ぬなら楽な方法がいいな。

どうせ死ぬならあの糞野郎のせいにして死んでやろうか。

金さえ有ればこんな会社すぐにでも辞めてやりたいが、奨学金の返済で500万以上借金があるし、辞めたいと言っても後任が見つかるまでと言われてズルズルと延びている。


「ピピピピピピピピピピピピピ」


 携帯でセットしていた目覚ましのアラームを止める。


「・・・」


 何も考えられない頭で携帯のアラームを止めて時刻を見ると朝五時ぴったりだ。

そのまま、何も考えずにスーツに着替えて家を出る。

いつもの様に電車を待つ。





「ピピピピピピピピピピピピピ」


 携帯でセットしていた目覚ましで目を覚ましてアラームを止める。

なんか久しぶりに良く寝たな。

こんなに気分が良いのはいつぶりだろうか。

部屋いっぱいに広がる白い眩しい光。


「ん?俺の部屋てこんなに明るかったか?」


 自分の体に目をやると体が無い、口もない、手も足もすべてが無い。 


「んー、夢か。やっと寝れたと思ったらなんだこの夢は」


 ただ、気持ち落ち着いているし、体の調子もすこぶる良いし、良い夢だ。

まあ、夢の中で体は無いのだがな。

何処からともなく大型のウサギがやって来る。


「えっと、こんにちは」

「こんにちは」


 ウサギに挨拶されたが夢なので驚きもせず挨拶を返す。


「えっと、どんなスキルが欲しいですか?」


 スキルって能力のことか?

どんな能力が欲しいですかて質問か?


「そうだな、点滴を作れる能力が欲しいな」


 自分で点滴が作れれば寝ないでも働けるじゃないか。


「えっと、点滴てなんですか?」


 ウサギに点滴と言っても分かる筈がないか。


「体に入れると元気になるやつだ」

「ああ!知ってますよ!ポーションの事ですね!ポーションを作れるスキルは錬金術ですね」


 ウサギが元気に飛び跳ねると俺の体の中に何か生まれる感覚がある。

錬金術とかポーションなんて、なかなか面白い夢だ。

辛い仕事から現実逃避したくて、異世界転生の小説を読んでいたから、ついに夢にまで見るようになったか。

もしくは本当にこのまま異世界に転生できるのか。

どちらにしろ、せっかくだから楽しまなくては損だな。


 最近こんなに気分が明るく、前向きに物事を捉えられる事なんて無かったのに、今なら何でも出来る気がする。

ウサギがさらに質問してくる。


「さあ、職業を決めましょうか?」

「さっき、貰った錬金術が職業じゃないのか?」

「あれはスキルですね。この中から選んで下さいな」


 ウサギがそう言うと頭の中に職業のリストが浮かび上がる。

竜騎士、聖騎士、暗黒騎士、賢者、聖職者、暗殺者、トレジャーハンター、レンジャー、等々・・・多数の職業があるが、どうせ転生するなら珍しい方が楽しそうだな。

トレジャーハンターかレンジャーで迷ったがレンジャーを選ぶ。


「えっと、レンジャーですね。レンジャーが使う短剣スキル9と弓スキル9も付けておくよ」

 

 ウサギがもう一度大きく跳ねると俺の中にまた新しい何かが生まれるのを感じる。

その後簡単にウサギが職業やスキルの説明をしてくれた。


「さあ、準備は整いました。それでは良い旅になるといいですね!行ってらっしゃい!」


 そのウサギの言葉を最後に深い眠りに就いたように意識が途絶えた。

次に目を覚ますと今度はしっかり体が在るが、見知らぬ体、そして見知らぬ場所。

どうやら俺は本当に転生してしまったらしい。


 しかし、いざ実際に転生してみると結構心細いな。

本当に転生するなら、もっとしっかりスキルや職業を選んでおけば良かったと後悔する。

ただ、転生した事に後悔は無いが。

この世界では良い就職先に出合いたい。

きっとこの建物を出たら運命のヒロインとの出会いが待っていることだろう。

俺は異世界転生に胸を躍らせながら建物を後にした。



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