ルリアと食事
ラビダルポーションの値段が50万Gであることを、伝えると何故か皆から非難される。
「何で触る前に、そう言う大切な事を教えてくれないんですかー!、触っちゃったじゃないですか!罠ですか!罠なんですか!私、物を壊すのは得意なんですよ!」
ルリアそれは自慢する事じゃないぞ・・・。
「私が壊したら、それをネタに一生メイド服を着せるきだったんですか!ああ!ラムさんがもう信じられません!」
そう言うと壁際まで下がったルリアは頭を抱えてうずくまってしまう。
「そうよ!ラム!非常識にも程があるわよ!そんな高いポーションを無造作に置いとかないでよ!箱にしまっておきなさいよ!」
シアも壁際まで下がって睨みつけてくるが、俺は悪くないよね。
トールさんも呆れ顔だ。
「ラム君にはいつも驚かされるけど、今度はラビダルポーションを作るなんて・・・。ラム君は失敗を恐れないのかい?僕ならラビダルポーションなんて怖くて作れないけどね」
いつも笑顔のリーザさんが顔をひきつらせながら聞いてくる。
「私も同じ錬金術師としてちょっと信じられないんだけど・・・。ラビダルポーションの素材代ていくらだったのかしら?」
「大体16万Gくらいですね」
それを聞いて再度、空気が凍りつく。
長い沈黙の後、リーザさんがボソッと呟く。
「失敗したら16万G無くなるなんて考えたら、私には絶対無理・・・」
その言葉でさらにその場の俺に刺さる視線が痛かった。
何なの!この人頭いっちゃってる的な目線は!
「確かにこの場に置いとくのも怖いから、サラダ商会に納品してくるよ」
俺の言葉に皆がホットした顔になる。
ラビダルポーションに劣化防止の封をして一番頑丈なポーションケースにしまう。
ルリアがサラダ商会までの護衛を勝手出てくれて、ルリアと一緒にサラダ商会に納品に向かう。
気合いの入ったルリアが護衛するもんだから逆に目立ってしょうがない。
「ラムさん!そこに石がありますよ!気を付けて下さいね!あああ!猫がいます!」
「ルリア、ちょっと大袈裟じゃないか?」
ルリアが垂れ下がったうさみみをブンブン左右に振る。
「そんな事無いですよ!だって50万Gですよ!50万G!!」
「ちょっと声が大きいって!」
ルリアの50万Gの声に道行く人々が何事かとこちらを振り返る。
その視線に殺気を飛ばすルリア。
さすが元勇者の騎士だけあって、ルリアが殺気を出すと皆視線を逸らした。
なに?この無駄な殺気の使い方。
無事にサラダ商会に到着してラビダルポーションをサラダ会長に手渡す。
サラダ会長は満面の笑みでラビダルポーションを受け取った。
「さすが、ラムザール様ですな。こうも早く納品して頂けるとは予想以上で御座いますよ」
サラダ会長のお世辞を聞きながらラビダルポーションの鑑定について相談する。
「そうですな、ラビダルポーションやドラゴンもどきの素材をオークションに掛ける為に、王都に行くのですから、そこで鑑定して貰いましょう」
ラビダルポーションの納品代金は王都の鑑定後に受け取る事になった。
サラダ商会からの帰り道は下のマーケットを通って帰るのだが、昼時もあり辺りにいい匂いが漂っている。
ギルドに戻って食事をするとなると、近くの屋台かリカの食堂になるのだが、毎日のことでたまには気分を変えて他の店で食事をしたいな。
「ルリア、お腹空いたな。何か食べて帰えろうぜ」
「いいですね!私も今、ご飯の事考えてました!あー、今日は何食べようかな?この町はご飯が美味しくて困っちゃいますね」
ルリアが笑顔で頷く。
屋台で簡単に済ませても良いのだが、金も入った事だし店に入って食事を取る事にした。
何気なく入った店はこじんまりとしていて小さなテーブルと椅子が狭い間隔で配置されている。
狭い店内は混み合っていて奥の空いてる席に着く。
席に着くとテーブルは小さいし、席同士の間隔も近い為にルリアとの距離も近くなる。
近くで見るルリアはホッとする可愛さだ。
リーザさんやシアはすごく美人で緊張してしまうが、ルリアは気が抜けると言うか、ほんわかに可愛い。
カウンターに料理が並べられていて、注文を受けるとそこから皿に取り分けて運んでくれる。
好きなものを選ぶのではなく決まったセットの中から選ぶ。
要はA定食B定食みたいな感じだな。
ルリアがA定食、俺がB定食を注文するとカウンターの皿からおじちゃんが皿に豪快に取り分けて、最後にパンとスープを添えてテーブルに運んで来てくれた。
ルリアが目を輝かせておじちゃんの手に持たれた料理を追っている。
「美味しそうですね!頂きます!」
ルリアは運ばれて来た料理を早速、口に運び目を閉じて噛み締める。
俺のメニューは港町だけあって魚介が中心だ。
小魚のフライにチーズとトマトのディップを付けて口に運ぶ。
屋台の料理も旨いがソースにひと手間加えられていてお洒落な味がする。
次に口に入れた海老の入った卵焼きも旨い。
この店は店内は狭いが味は美味しくて当たりの店だな。
そんな感想を抱いているとルリアと視線が合う。
「これ美味しいですよ」
ルリアが無邪気な笑顔で肉をフォークに刺して差し出してくる。
ちょっと恥ずかしいが、顔が緩みながら口を開けてルリアに食べさせて貰う。
肉も濃厚なソースが掛かっていて噛む度に肉汁が溢れだす。
「これも旨いな!」
「ラムさん」
ルリアが笑顔で俺の皿の小魚のフライを指差して、無邪気な笑顔で可愛く口を開けたので、小魚のフライをルリアの口に入れてやる。
この恋人みたいなやり取りに内心はドキドキが止まらない。
ルリアの口にフライを入れる時にピンク色のやらかい唇に指先が触れてしまった。
唇やわらけー!
「魚も美味しいですね!」
フライを食べたルリアは満足そうに口を動かす。
フライを食べ終わると笑顔で俺の皿の卵焼きを指差してまた可愛く口を開ける。
今度はフォークを使ってルリアの口に運ぶと、こちらも幸せそうに食べる。
「ラムさんもこれどうぞ」
ルリアがお返しとばかりに真っ黒な食べ物をスプーンに乗せて食べさせてくれる。
プチプチした食感で美味しいけど何かの卵とかかな?
なんかこのやり取り恋人みたいで良いな。
たぶんルリアはそんな事考えて無くて、男も女も同じ友達感で接しているんだろうな。
「このお店美味しいですね!今度はシアも連れて来ましょうね!」
「そうだな、食いしん坊のシアならきっと喜ぶだろうな」
「絶対、喜びますって!なんなら今日の夜もここで食べましょうよ!」
「さすがに、続けては飽きないか?」
「大丈夫ですって!これだけ美味しいんですから夜も期待出来ますよ!て!あ・・・!」
俺が最後の魚のフライをソースに浸けるとルリアがすごく悲しそうな顔をする。
しょうがないのでルリアに差し出すと、満面の笑みで口を開けたので最後のフライもルリアの口に入れた。
へへへと満足そうに魚を食べる。
「確かにここの料理で酒を飲んだら、酒も進みそうだな」
「でしょ!絶対夜も来るべきですって!」
夜はシアも連れて来る約束をして店を後にした。
ちなみにルリアの好物の野菜は一口もくれなかった。
ギルドに戻るとシアが血相を変えてやって来る。
「ラム、大変だよ!今さっき領主様の使いが来て明日の午前中に行政館に来てくれって!ラム、今度は何をしたのよ!」
シアが心配そうに聞いてくるが、まずやらかした前提がおかしい。
「何もやってないって!」
「だってラムのことだから、きっと気付かないうちに不味いことしたんじゃないの?」
「本当に心当たり無いって!・・・いやあるな」
「やっぱりあるんじゃない!ああ!どうしよう!トールさんとリーザさんに相談しなくちゃ!」
「シア、落ち着けって!たぶん御用契約の話だと思う」
「へ・・・」
シアが口を大きく開けて間抜け面で聞いてくる。
「御用契約って・・・あの御用契約?」
「サラダ会長からこのギルドが御用契約の候補に挙がっているって聞いたぞ」
「えーーーー!!!何でラムはそんな平静なのよ!」
「そう言われても凄いのか分からないしさ」
その後、また全員集合して皆に非常識扱いされて、またこいつやらかしたなって顔されたけど、今回は俺無罪だよね!!!