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借金130,000G

 月の誕生際が終わると。その十日後に錬金術ギルドの総会が王都で開催される。

それに俺はギルドマスターとして参加しなくてはならない。

その期間はギルドを留守にする為、今からポーションを余分に作っておく必要がある。

午前中はポーション作りに勤しむ。

午後はまず、冒険者ギルドにルリアと一緒に報酬を受け取り行く。


 「なあ、ルリア、ドラゴン討伐の報酬てどれくらい貰えるのかな?」

「きっと、あれだけ頑張ったんです。きっと、いっぱい貰えますよ!」


 ルリアが鼻の穴を大きくして答えてくれるが、俺が欲しかった答えは具体的な数字なんだけど・・・。

ルリアに聞いたって具体的な答えなんか返ってこないよな。

シアはお金には細かいが、逆にルリアはお金に無頓着で、勇者に捨てられた時も1,000Gで喜んでいた。


 冒険者ギルドは午後の時間帯だからか空いていて、冒険者が数名いる程度だ。

受付でドラゴン討伐報酬を受け取りに来たと告げると、ギルドマスターを呼びに行ってくれた。

しばらくすると、体格の良い、いかにも冒険者らしい風貌のギルドマスターが出てきてくれる。


「よう!ラムザールとルリアだな。やっと金を受け取りに来てくれたか」


 ギルドマスターは黒く焼けた顔から、白い歯を覗かせながら近寄ってくる。


「すみません。色々と立て込んでまして遅くなりました」

「ミッツから少し聞いてはいるがまた、やらかしたらしいな」


 う・・・、またって事は前にもやらかした言い方ですよね。

まー、色々とあってどれの事だか分からんがな。

取り合えず、苦笑いを返しておく。


「他の参加者は報酬が出たその日の内に、みんな取りに来たぞ。早いやつはその日の内に遣いきったみたいだがな」


 ギルドマスターはそう言って豪快な笑い声をあげる。


「よし、本人確認は出来たから、後は窓口で金を受け取ってくれ」


 ギルドマスターは受け付けに指示を出して裏に下がって行った。

窓口で受領書にサインをして金を受け取り、早速、冒険者ギルドの隅でルリアと二人で中を確認する。


 「わー、ワクワクしますね!いっぱい入ってたら何を買いましょうかね?」

「そう言えば、ドラゴン討伐の時に壊れた鎧を直したらどうだ?」


 ルリアが可愛く頷く。


「うん、うん、それが一番大事ですね!まずはそれに使います!」

「ラムさんは何か買うんですか?」


 最近思うのだが、ルリアは素直で俺の言った事は大体受け入れてくれる。

押しに弱いのか、考えていないのか。

まー、どちらにしろ、俺の野望をお願いしてみる。


「このドラゴン討伐の金で服を買おうと思っている」

「服ですね!私も可愛い服が欲しいです!」

「シアも服を三着しか持って無いから、シアの分と俺の分と、後、ルリアにはセンターの件で手伝って貰ったから、ルリアの服も買おうと思ってる」

「えー!私の服も買ってくれるんですか!ありがとうございます!やったー!」


 ルリアが無邪気な笑顔で凄く喜んでくれている。

へへ・・・、俺が着せたい服を着せるだけだけどな!

ルリアが無邪気な笑顔を止めて訝しげな目で見てくる。


「なんか、ラムさんの目がいやらしいんですけど、エッチな服を着せる気じゃないですよね」

「ははは・・・そんな服な訳ないだろ・・・」


 おっと、欲望が漏れていたか。

ルリアがまだ俺を怪しんでいるので話題をそらす。


「よし!さっそく数えてみようぜ」


 まずルリアの分を確認する。


「いち、にい、さん、よん、ご、ろく・・・十がさんだから・・・」

「3,000Gだな」

「ちょっとラムさん、分かってたんですから言わないで下さいよ!もー」


 ルリアが頬を膨らませて詰め寄ってくるが、その仕草が見たくてわざと言ってやった。

うん、可愛いな!


「3,000Gか、命を掛けてこの金額かー」


 町で働くと100日分にはなるけど、俺の稼ぎを考えたら割りに合わん。

ルリアは3,000Gでも結構喜んでいるがルリアは1,000Gでも喜ぶからな。


「次はラムさんの数えてみましょうよ!」


 ルリアが俺の腕を掴んでブンブン揺すってくる。


「よし、俺の報酬カモン!」


 あれ?ルリアより大分多いぞ!


「全部で7,000Gあるぞ!」

「えーーーー!ズルいですよ!ラムさんの方が凄く多いじゃないですか!」


 ルリアが俺の体を先程より強く揺さぶる。


「そんな事、言われても俺が決めた訳じゃないし、おおお、ちょっとルリア!激しいって!」

「ズルいです!美味しいもの奢ってくーだーさーい!」

「分かった!分かったから!止めてくれ!」

「へへへ、じゃあ、良いですよ」


 揺するのを止めて無邪気な笑顔を見せて、金額の違いなど、もう忘れたようだ。

ルリアと別れて俺だけでサラダ商会に向かう。

サラダ商会につくと直ぐにサラダ会長の部屋に案内して貰える。

サラダ会長は人の良さそうな笑顔で出迎えてくれた。


「ラムザール様ご足労頂きありがとうございます」

「こちらこそ、先日はシアの為にありがとうございました」

「イエイエ、結果的に大分儲けさせて頂きましたよ」


 俺が不思議な顔をしているとサラダ会長が続ける。


「センターの偽造した石鹸は没収されて、領主様の物になったのですが、品質的には手前どもの石鹸と何も変わりません。来賓の貴族様に配って余った分は、手前どもが買い取らせて頂き、販売させて頂きました」


 成る程、確かにセンターとの交渉は決裂したが、結果的には領主御用達のサラダ商会に払い下げられ、儲けたと言うわけか。


「それを聞いて私も少しホットしました。サラダ会長に迷惑掛けてばかりでは心苦しいですから」

「今後もラムザール様とは良いお付き合いが出来たら幸いです」

「本日は依頼があると伺いましたが、石鹸ですか?」

「ええ、石鹸の件も御座いますが、もう一つ儲け話を持って参りました」


 石鹸以外の儲け話し?錬金術関連って事か?

サラダ会長の持ってきて話だ、悪い話ではないだろう。


「まず、石鹸ですが、月の誕生際が四日後に迫っております。それまでに出来る限り石鹸を納品して頂きたいのです」

「分かりました。出来る限り作りますが、以前話した通り、油の素材が手に入るか次第ですね」

「それについては心配に及びません。サラダ商会で手配致します」

 

 素材があれば石鹸だけなら三日で五千個は作れるが錬金術ギルド総会で不在になる為、その期間分のポーションの依頼もある。

五千個は厳しいかもしれないな。

なんなら、外部委託も使うか。


「分かりました。出来る限り作らさせて貰います。で、もう一つの儲け話しとは何ですか?」


 サラダ会長が俺を試すような笑みを浮かべる。


「今回、討伐されたドラゴンモドキの素材ですが、当商会で扱う事はご存じだと思います。皮や肉は錬金術の素材となりませんが、ドラゴンモドキの心は錬金術素材となります」

 

 魔物は倒すと肉体的素材の他に魔石と「心」と呼ばれる核を持っている。

エクストラポーションを作った時もトロールの心と呼ばれる核を使用した。

ジェネレイツポーションもドラゴンの心が必要だった。

主に上位の魔物にしか核は存在せず、核を持つ魔物は特殊能力を有していて強い。 


 「ドラゴンモドキの心はラビダルポーションの材料となり、大変に貴族や王族に人気が高いポーションとなっております。ドラゴンの心をオークションに掛けるより、ラビダルポーションにしてオークションに出品した方が断然高額になるのです」

「勉強不足で申し訳有りませんが、ラビダルポーションとはいったい何の効果のポーション何ですか?」


 サラダ会長はニヤニヤしながら、答えてくれる。


「子作りのポーションですよ」

「子作りですか?」

「ええ、これを飲んで事を成すと、高い確率で子供を授かるのです。ラムザール様がご存じ無いのは仕方がありません。何せ高額で、失敗したら大損ですからね。一般の錬金術師が作る事は有りません」

 

 錬金術は失敗すると素材を駄目にしてしまう。

無駄にした素材は失敗した錬金術師本人が負担する。

だから、普通は自分の出来るレベルのポーションしか作らない。

俺は失敗したことが無いので自腹を切った事はないが。


「ラムザール様に自信があるようでしたら、オークションにかけずに、ラムザール様に優先的に販売させて頂きます。勿論、出来たラビダルポーションは当商会に売って頂くのが条件ですが」


 成る程、俺に相場の値段で販売すれば、もし、俺が失敗しても大きな損にはならない。

仮に成功すれば素材のまま売るより更に利益が上げられる。

どちらに転んでもサラダ商会は痛手を負わない。

俺はオークションで買うより安く素材を手に入れられて、成功すれば大儲けだが、失敗すれば大損だ・・・。

ただ、失敗すればの話で、俺は失敗しないので!

たぶん・・・。


「ちなみにいくらで売って頂けて、買い取りは金額はいかほどですか?」

「ドラゴンもどきの心はオークションに出せば、10万~20万Gはするでしょう。対してラビダルポーションでしたら50万~100万Gはします」


 高い!桁が違う!

俺が石鹸作って2万G貰って喜んでいたが・・・。

庶民と金持ちの違いを見せつけられた・・・。

俺が絶句しているとサラダ会長が察して提案をしてくれた。


「もし、お金が足りないようでしたら、お貸しすることも出来ますよ。信用が無い方には貸しませんが、ラムザール様でしたら20万G位でしたら直ぐに返済できますよ」


 確かに・・・石鹸の納品を十回すれば良いのだから、出来そうだな。

出来そうだが、シアの時の借金が無くなったと思ったら、今度は十倍の18,000Gの借金て・・・。

俺、悪徳商法に騙された無いよね。


「迷ってる様ですので一つ良い話をいたしましょう。今回のオークションではラムザール様が求めていたドラゴンの血が出品される噂が御座います。ドラゴンの血も高額です。ここで資金を稼がれるのが宜しいかと思いますよ」


 サラダ会長が優しい笑顔を浮かべてはいるが、やはり、やり手の商人だな。

ルリアの為にもドラゴンの血は欲しい。

失敗しても一年位で返済出来る金額だ。


「おっと、その目は決まったようですな」

「ええ、私にドラゴンもどきの心を売って下さい!」

「ラムザール様でしたら、そう言うと思ってましたよ。それでは石鹸も含めて、話を詰めて参りましょうか」


 まず石鹸は以前と同じ一個につき12Gで買い取り、個数は5,000個注文を受けた。

ドラゴンもどきの心は15万Gで売ってもらい、成功すれば50万Gでサラダ商会に売る。

サラダ商会は俺の15万Gとオークションで50万以上で売れた分が儲けとなる。

サラダ商会としては俺が失敗したら最大5万の損失が出るが、成功すれば最低15万の儲けが出る計算だ。


 さあ借金130,000Gだ!

 


2月17日試験の為更新が出来ません。2月17日以降は更新頻度上げていきますので、それまでブックマークそのままでお願いします。

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