表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/106

シア視点4

 

 絶望の中、押し寄せてくるのは後悔だけだった。

なんで私はレシピの秘密を喋ってしまったのか、お父さんは大切、でもお父さんが私が人を騙したと知ったら、きっとがっかりする。

大切な人達を裏切ったのに、お父さんは助けられなくて・・・。

お父さんの所にも帰れず、今、一番大切な人の元にも、もう帰れない。

ギルドから帰って一人になると涙が止まらなくて、ご主人様と過ごした楽しかった日だけだ、ぐるぐる思い出されてまた涙が溢れた。


 今日、ドラゴン討伐隊が凱旋するって聞いて、逢いたくて、逢いたくて・・・

でも、私はどんな顔でラムに会えばいいの?

ラムは私を信じてくれて奴隷の腕輪を外してくれて、いつでも自由にさせてくれて、奴隷としてなんて扱われた記憶がない。

なのに私はその信頼を裏切った・・・。


「ねえ、私にラムをご主人様て呼ぶ資格あるの?」


 私はご主人様と一緒にいる資格なんてない。

でも、でも、最後にもう一度だけラムの顔を見たかった。

私は気付くて町の入り口に来ていた。

人がいっぱい居て、でも私にはすぐにラムを見つける事が出来た。

だって私のご主人様だから。

ラムが無事に戻ってきて、皆と抱き合う姿をみて顔が自然とほころぶ。


「本当なら私もあの皆の輪の中に居れたのに」


 また涙が溢れてきた。

涙って無くならないのかな・・・

こんなに泣いてるのにまた出てくるよ。

私は泣きながら走って走って気付くと港まで来ていた。

海を見ていると色々な辛い思いを流していってくれる気がする。


「ねえ、何してるの?もう暗くなるよ。行く所がないならうちに来なよ」


 汚い男が話掛けてきたが無視する。

ラムとお父さん以外の全ての男が嫌いだ!

こいつらは私を騙して奪う事しか考えていない。

最低の生き物だ。

私は男が睨みつける。

男はそんな事気にせず私の腕を取って引っ張って行く。


「放して!放してよ!」


「こんな所に居ないで家に来いって。もう暗くなっちまうから泊めてやるって」


怖い、助けて、助けて、ラム助けて!!!


「シアから離れろ!」

「あ!なんだてめえは!」


 今、一番聞きたかった声。


「シアから離れろ!」


私はラムに腕を掴まれ強引に引き寄せられる。

でも、さっきの男と違って嬉しくて、安心できて喜びが込み上げてくる。


「シア、怪我はないか?」


 でも私は、この大切人を裏切った。

心配そうにラムが声を掛けてくれるけどそれが辛い。


「きっとシアちゃん怖かったのよね」


 リーザさんが優しく話しかけて、私を抱き締めるてくれる。

プランさんもアワアワしながら駆け寄って来て抱き締めてくれる。


「シアちゃん、大丈夫かい、怖かっただろう」


 皆に優しくされればされるほど、私の顔は苦痛に歪んでいく。


「私に優しくしないで・・・」


 私は皆を裏切ったの、信頼して信じてくれたのに皆の気持ちを裏切った・・・。

何で、私は皆を裏切ったんだろう。

お父さんだってそれで助かってもきっと私を叱って、がっかりしたと思う。


「私は優しくされちゃいけないの・・・」


 私の目から涙がポロポロ溢れだして止まらない。


「私、わたし・・・皆を・・・。こんなに優しくしてくれたのに・・・。こんなに親切にしてくれたのに、私・・・えっぐ。

私、皆の事が大好きなのに・・・全てを無くした私にいっぱいくれたのに、なのに、なのに!私は皆を裏切った、自分の事ばかり考えて!私は最低の人間なの!」


 リーザさんが優しくシアを抱き締めて語り掛けてくれる。


「シアちゃん大丈夫だからね、泣かないで話してみて」


「私、わたし・・・石鹸のレシピの秘密をばらしたの。お父さんを助けたくて、石鹸のレシピを言っちゃたの。皆を裏切ったのにお父さんは助けられなかった。また騙されたの!お父さんと一緒!男の人は皆、騙すのよ!私はもうぜったい騙されないって決めたのに!」


 リーザさんに抱きつき泣いてた。

自分の中から全てが出てしまうと錯覚するくらいに泣いた。


「だから、私は皆に優しくされる資格なんてないの、騙した人を憎んでいたのに、今度は私が皆を騙すなんて・・・ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」


 私は魂の底から皆に謝った。

謝ってすむ事じゃないのは分かってるけど、私にこんなに優しくしてくれる人に少しでも許されたかった。


「リーザさん、トールさん、プランさん、本当にすみませんでした。俺の責任です」


 私が一生懸命謝ってると、ラムも皆に謝って頭を下げる。

それを見て私の心はさらに引き裂かれそうに痛んだ。


「ラムは悪く無いよ、悪いのは私だよ、ラムは何も悪くない。謝らないで、悪いのは私のに・・・」


 プランさんが私を力強く抱き締めてくれてお母さんみたいに語り掛けてくれる。


「おばちゃんだって、シアちゃんの事を娘の様に思ってるんだ、娘が悪い事をしたら叱るよ!でも、それで嫌いになったりなんてするもんかい!だからマスターもシアちゃんも、もう謝らなくいいよ」 


 私のお母さんは小さい時に流行り病で亡くなり、それ以降はお父さんと二人で一緒に行商して暮らしてきた。

もしお母さんが生きていればこんな感じだったのかな・・・。


「プランさん、ごめんなさい、ごめんなさい」


 プランさんに抱き付き、大声を上げてひとしきり泣き続けた。


私が落ち着いた頃の見て、リーザさんが私の目を真っ直ぐ見つめながら話し掛けてくる。


「私はシアちゃんの事を許しません!シアちゃん、人の信頼って石積みみたいな物なの。一個、一個、慎重に積み上げていって始めて高い石積みが出来るわ。でもちょっと失敗したら全部崩れ去ってしまう。だから、一回でも裏切れば、信頼は全て崩れ去ってしまうの。私は今、シアちゃんの事は信じられない」


 私は泣くのをグッと堪えて、リーザさんの話しに耳を傾けて大きく頷く。

リーザさんの表情がふっ、と軽くなり、優しい声色になる。


「でも、石積みはもう一度やり直して積めば良いわ、一個、一個慎重に。シアちゃんはギルドに残って、私の前で石を積み上げなさい。そして、前回よりも高い石積みが出来た時に許してあげる」


 リーザさんの言葉を聞いて我慢していた涙がまた溢れてきて、止めようとしても、止めようとしても、止まらないよ!


「リーザさん、ごめんなさい・・・。私・・・、リーザさんと一緒に、もう一度・・・、働いて良いですか!」


 リーザさんは天使の様な笑みを浮かべて優しく私を抱き締めて優しい声を掛けてくれた。


「シアちゃん、頑張るのよ」


 私は一生今日の事を忘れない。

おばあちゃんになって死ぬ時まで、今日のリーザさんの笑顔を忘れない。





 私のご主人様はすごい人だ。

結局、私を騙したセンターを騙して、追い詰めて牢獄に送り込んでしまった。

私の為に本気で怒ってくれて、とても大切にしてくれる。

ちょっと、エッチでやることがハチャメチャだけど、でもとても大切な人。

センターが捕まって私たちにいつもの日常が戻ってきた。 

そんなある日の大切な話があるから夜庭に来てくれと言われた。

 

 ついにきたか。

私の心はもう決まっている。

私はお風呂屋さんに行って鈴花の石鹸で念入りに体と髪を洗って夜に庭に出ていく。

もう、胸がドキドキいって口からなんか出てきそうだよ。


「ラム、お待たせ。話ってなに?」


 ラムが真剣な表情で私の目を見つめてくる。

ごく、生唾を飲み込んで平静を装う。


「シア、お父さんの事なんだけど」

「へ?おとうさん?」

「そう、お父さんの事なんだけど、奴隷会館に行って聞いてみたんだけど、どうやらもう既に誰かに買われて、何処に行ったかわからなかった。ごめん。出来れば助けてあげたかったんだけど」


 ちょっと私の想像した話と違ったけど・・・


「ううん。ありがとう。ラム」

「本当はシアの身の上を聞いてから考えてはいたんだけど、シアを手に入れるのに出来た借金があったから、すぐには動けなくて。今回の石鹸の報酬でやっとシアのお父さんを助ける目処が立って動いたんだけど遅かった」


 もう、この人は本当にお人良しなんだから・・・

大好きだよご主人様。

さっきの恥ずかしさやドキドキは消え去って、スッとラムに近づいてつま先立ちで顔を重ねた。


「ありがとう」





 なんか良い話だよー。

草陰に涙を流すルリアの姿があったのだった。


2月17日試験があるためそれまで更新があまり出来ないと思います。

どうぞブクマそのままでおいて欲しいです。

よろしくお願いいたします。

後、ミッドナイトでシアのエロも書いて見ました。

小説家になろうで掲載している、「錬金術で金儲け!金持ちになるぜ!」の登場人物を使ったエロい、話しになります。なろうでは書けないエロをこちらで掲載しております。本編とは全く関係無い、あくまで主人公の妄想のお話になります。読まなくてもストーリーには全く影響しません。本編の話の雰囲気を壊す恐れもありますので、エロを求める方のみお読みください。

カピバラもしくは錬金術で検索すると見つかります。

リンクの貼り方が分かりません。すみません。

https://novel18.syosetu.com/n5749gt/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ