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ルリア忘れてた!

 すっかりルリアの事を忘れていた。

ルリアも呼んで三人で食事をする。


「二人が悪の本拠地に乗り込むって言うから、心配して待ってたのに全然帰って来ないから、心配して来てみたら、二人で美味しい物食べてるなんて酷いですよー」

「ルリア、ゴメン!ほら、好きなの頼んで良いからな」

「もーそんな事で誤魔化されませんよ!あ!すみません!注文お願いします。この野菜コースでお願いします。え!ワインも頼んで良いんですか!あ!追加でワインも下さい」


 注文を終えると無邪気な笑顔を見せる。


「いや、野菜コース楽しみですね!シアさんは何にしたんですか?」

「私は肉コースにしたよ」

「えー、肉コースと迷ったんですよね、ちょっと味見させて下さいよ」

「ラムさんは何コースですか?」

「俺は魚だよ」

「えー!魚とも迷ったんですね!ちょっと交換しませんか?」

「ああ、良いよ」

「やったー!早く来ないですかね?」


 ルリアがそわそわ、厨房を覗き込む。

こいつ、完全にさっきの事忘れたな・・・


 次の日、石鹸は材料が無くて大量には作れ無いので、手間の掛かる、オレンジ石鹸といつものポーションを作る。

ルリアから正式な答えは貰っていないが、今日も石鹸作りを手伝ってくれている。


「お!このハイポーション何時もより上手く出来たぞ!」


 俺の手には通常より輝きの強いハイポーションが握られている。

ポーションは殆んど成功して上ポーションになるのだが、ハイポーションは十個に一個くらいしか上ハイポーションにならない。


「シア、このハイポーションはシアが持っておいて」

「え?上手く出来たなら納品した方が良いと思うよ。だって上ハイポーションなら300Gの買い取りだよ!」


 シアは損得にはうるさい子なのだ。


「あの、センターがこのまま終わるとは思えなくて、当分は警戒しておこうと思ってる。シアを当分は一人にはしないけど、念の為にハイポーションを携帯しておいて」


 その夜、俺の嫌な予感が的中した。


シアとルリアで食事を終えてリビングでくつろいでいる。

俺とシアが座っているソファーは俺が狩ってきたウルフの毛皮を被せて物だ。

シアはこのソファーがお気に入りで、食後はここで寛いでいる。


「この端の子が一番手触りが良いのよねー」


 ソファーはウルフ十匹分の毛皮で出来ていて、場所によって手触りが違う。

シアは特に端が好きでいつも端に座って撫でながら、雑談している。


「私はあまり、ウルフは好きじゃないです」


 ルリアはうさぎ獣人だからなのか、あまりソファーに座りたがらず、ダイニングの椅子をソファーの前に持って来ている。


「それにしても、そのセンターて人の悔しがる姿、私も見たかったなー」


 シアが嬉しそうに話す。


「もう、こーんな顔して、俺を騙したのか!て」


 シアがセンタのー悔しがる顔真似をして、ルリアが爆笑している。


「で、最後にご主人様が・・・て言ってくれたの」


 ルリアがニヤっと笑う。


「えー、シアー、何て言ったの?聞こえないよ?」


 シアが顔を真っ赤にして小声で言う。


「だから、ご主人様が嘘を言って・・・・・だろって」


 ルリアのシアのからかいが止まらない。

ルリアはこの手の話し好きだからなー。

シアも恥ずかしいなら言わなきゃ良いのに。

そんな二人のやり取りを眺めていると、突然玄関の扉がぶち破られる。


 ドン!!!


 振り向くと、覆面の男四人が押し入って来る。


「キャー!!!」


 シアの悲鳴が部屋中に響き渡る。

慌ててナイフを探すがダイニングテーブルの上に置きっぱなしだ。

シアを守りたいがナイフがない俺は短剣スキルが使え無い。

シアを守り切れないので、ルリアに託す。


「ルリア!シアを守ってくれ!」


 ルリアにシアを任せて、ダイニングテーブルの上のナイフを取りに走るが、寸前で覆面の男に阻まれる。

危険探知スキルで腹を守るが、ガードの上から叩かれ、がら空きになった顔面を殴られダイニングテーブルごと吹き飛ばされる。


「ラム!!!」


 殴られて一瞬、意識が飛んだ気がした。

気付くと男の足が顔面に迫っていて、慌てて頭を守る。

そのまま、何発も身体中を蹴られる。

鼻血が出て口に生温かい液体が入ってくる。


「その辺で良いでしょう」


 覆面のリーダーらしき男の声で攻撃が止まる。

その声に聞き覚えがある、センターだ。

センターがゆっくり俺に近づいて来て、俺の顔を踏みつける。


「まだ、殺しませんよ。これから貴方の前でそこの女二人をいたぶって、私を騙した事を後悔させた後に、殺してあげます」


 二人に目線をやると、ルリアの後ろにシアが庇われて、その前には覆面の男二人が立っている。

シアが素手だが、男、二人は腰に剣を下げていて、ルリアがいかに強くても分が悪い。

センターが男二人に指示を出す。


「その二人を捕まえなさい!」


 だが、男二人は動こうとしない。


「何をしてる!早く女を捕まえろ!」


 男二人は何やらゴニョゴニョ話している。


「おい、こいつって、元勇者PTの騎士じゃないか?」

「ああ、俺もそうだと思うぞ」

「片腕でドラゴンの片目を奪った奴だろ」

「ちょっと、ヤバイんじゃないか?」

「素手だが隙がないぞ」

「おい!うだうだ言ってないで早く捕まえろ!」

「トラップ」


 センターと俺を殴った覆面男の視線がルリア達に向いて隙にトラップを仕掛けて、床に転がったナイフの所まで這って行く。

身体中が痛くて思うように動けない。


「ははは、そんな小さなナイフでどうするだ!死なない様に切り刻んでやれ!」


 俺を殴っていた男が剣を抜き放つ。


「ラム!」


 俺の方に走り出そうとするシアをルリアが止める。


「シア、ラムさんはあんな奴に負けないから大丈夫ですよ」


 こっちは身体中が痛くてまともに動けないのに、刃渡り十五センチの小さなナイフ。

対して相手は一メーター近くある剣だ。

剣とナイフは間合いが違う。

いかにして、相手の間合いに入って、こちらの間合いで戦うか。

にらみ合いが続いてどちらも仕掛けない。

痺れを最初に切らしたのは勿論、センターだ。


「早く、行け!!!」


 センターの怒鳴り声で覆面の男が上段から振り下ろしてくる。

痛みに耐えて上段の攻撃をギリギリでかわす。


「ラム!!!」


 シアが悲鳴に近い声で俺の名前を叫ぶ。


 男の懐に踏み込もうとするが痛みで体の動きが鈍くなった。

直ぐに剣を戻され、今度は突きをくり出してくる。

突きを、半身を捻ってかわす動作と共に、一歩前に出て間合いを詰める。

そのまま男の、二の腕にナイフを突き刺す。

一旦、二人とも距離を取って対峙する。

ルリア達の前の男二人がまたざわつき始める。


「おい、あの男ってやっぱり、ドラゴンスレイヤーじゃないか?」

「ああ、トラップ使うって事は狩人だろ。ドラゴン討伐に凄腕の狩人が勇者の元騎士とコンビで参戦したって聞いたぞ」

「ああ、て事はやばくないか?」

「ああ、ヤバイな」


 男二人は頷き合って、センターに向き直る。


「おい!悪いが俺達はこの仕事、辞めさせてもらう!」

「はぁ!なんだと!」


 男達はそのまま逃げ出して行き、俺と対峙していた男も直ぐに二人の後を追って行く。

残されたセンターも慌てて男達の後を追う。

逃がす訳ないだろ!


「ラム!ラム!ラム!ねえ!ラム!」


 口の中に液体が入ってきて、身体中がポッと暖かに包まれて目を冷ます。

目の前には涙で顔をぐちゃぐちゃにしたシアの顔がある。


「シア?」

「ラム!!!」


 俺の首に抱きついて俺の名前を連呼する。


「ラム!ラム!良かったよ」

「あいつらはどうなった?」


 ひょこっとルリアの顔が目に入る。


「すみません、逃げられちゃいました」

「それは良い。二人とも怪我はないか?」


 ルリアが笑顔で答えてくれる。


「私たちは全く怪我はしてませんけど、ラムさんは大ケガでしたよ。シアさんにハイポーション渡しておいて正解でしたね!」

「いや、俺が使う予定じゃなかったんだがな。ルリア、シアを守ってくれてありがとう」


 苦笑いで返しながら体を起こす。

未だにシアは俺にくっついて泣いている。


「シア、ポーションありがとう。俺は大丈夫だから泣くな」

「でも、でも、私、心配で、心配で」


 優しく背中を擦ってなだめてやる。

それにしても、油断したな。

最後は暴力で来ると警戒していたのにこの有り様だ。


「ルリア、センターの野郎をぼこぼこにするから手伝ってれ」


ルリアが無邪気な笑顔を浮かべて、手をあげる。


「はい!任せて下さい。ぼこぼこにしてやりましょう!」




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