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チコリ商会のセンター

 私はチコリ会長の下でもう三十年以上働いて来た。

長年チコリに尽くしてきたお陰で、こうしてチコリ商会のNO2まで登り詰める事が出来た。

この三十年間ずいぶんと汚い仕事もした。

もう、感覚が麻痺して最初に覚えた罪悪感など、今では微塵も感じなくなっている。


 そう言えばこの前騙した奴隷の女は笑うくらいチョロかったな、父親の話を出したら直ぐに秘密をばらしやがった。

父親の事なんて殆んど知らないのにな。


 最初に・・・名前は忘れたが、ギルドマスターが石鹸を売りに来た時は相手にしなかったが、その後に市場で人気の商品と知って悔やんだが、レシピを聞き出しノットギルドに格安で作らせる事が出来た。

 まだ、儲けは余り出ていないが、元手が掛かっていないからまあ良いか。

石鹸を販売しているのが、サラダとコスモだ。

どちらもやりづらい相手だからな。


 そんな時にまたカモが向こうからやって来やがった。

あの時のチョロい女の奴隷だ。


「お父さんを助けて下さい!」


 悲痛な表情で俺にすがり付いてくる。


「助けてやりたかったが、お金が足りなくて、後、少しあれば助ける事が出来るんだ、君も少し協力できないか?」


 女の奴隷は下を向いて絶望の顔をしている。

まー、奴隷に金を出せと言っても無理な話しか。

そこで俺は話を変える。


「金じゃなくても良い、ギルドの秘密を教えてくれ、秘密てのは金になる。それで金を工面して君のお父さんを助けようじゃないか。あと少しで君のお父さんは助けられるよ。早く助けないとお父さんは鉱山送りになってしまうよ」


 女は意を決して顔を上げる。


「あの、ギルドマスターがサラダ会長と話してるの聞いたんですが、こんどドラゴン討伐パレードで勇者が石鹸の宣伝をするから、それに合わせて大々的に売り出そうって。これってお金になる情報ですか?」


 来たよ!きた!俺は心の中で喜ぶ。

あのサラダが売れると見込んだ話だ売れない筈がない。

絶対に儲かる!

悔しいがサラダの金儲けの嗅覚はずば抜けている。

だからこそ、この町一番の商会に成り上がったのだ。

俺は喜びを噛み殺して女に告げる。


「そうだね。儲かるか分からないけど試してみよう。もし他に情報を聞いたら教えに来てくれるか。俺も君のお父さんが助けられるように頑張るよ」


 女は頷くと走って帰って行った。

ああ、顔は飛びきりの美人の奴隷だ、次に来た時は夜に家にでも呼ぶか。

金に成る情報を持って来てくれて、顔も良いなんて最高じゃないか、俺は笑いが止まらなかった。


 その日にうちに急いでノットギルドに行って、石鹸の注文を出す。

あのサラダと勇者が絡んでいる、必ず売れる自信がある。


「ノットギルドマスター、パレード迄に作れるだけ石鹸を作って頂きたいのです」


 ノットは困っていたが、ギルドマスターて呼んでやると喜んで徹夜でギルド員、全員で作ると言い出した。

本当にチョロい奴だ。

ただ、緊急で数を作るから一個40Gで前金で寄越せと言って来やがった。

ぼったくりやがって・・・いくら値段交渉しても一向に値段を下げない。

ただ今回は明後日のパレード迄に何としても石鹸を用意したい。

パレード当日ならいくら在っても売れるだろう。


 一個40Gで6、000個=24、000Gか、結構な金額だが、チコリに報告せずに出しても問題ないだろう。

どうせ、儲かるんだ、後で報告すれば済む。

チコリはネチネチうるさい奴だかならな。


 パレード当日納品された6,000個の石鹸を前に俺は笑いが止まらなかった。

これがあと少しで大金に化ける。

本当にチョロい!はははははは!

本当にバカな奴隷だ!

これだからバカを騙すのは止められない。

騙す奴だ悪いんじゃない。

こんな簡単な事で騙されるバカが悪いんだ!





「ラムー、お腹減ったよー」


 パレードの当日の昼には5,000個の石鹸を納品する事が出来た。


「じゃあ、パレードを見学しながら屋台で昼にしようか」

「うん!」


 シアが満面の笑みで元気に返事をする。

午後は仕事を皆、休みにしてパレードにくり出す。

パレードは騎士団本部から領主の館までの行われ、領主の館前で勇者と領主のありがたい話を聞いて終わる流れだ。

 

 ギルド前の大通りは何処から来たんだって人の多さだ。

両脇には屋台がずらりと並んでいて良い匂いが漂ってくる。


「凄い人ですね!」


 俺が感嘆の声を漏らすとリーザさんが答えてくれる。


「月のお祭りが近いですからそれで人が多いんだと思いますよ。でも月の誕生際はもっと人が増えて、それが三日間続くんですよ」


 月のお祭りは確か以前にリーザさんが教えてくれた。

この国で信仰されている太陽の神の奥さんである月の神の誕生を祝うお祭りだ。


 買い食いしながら領主の館を目指して歩いて行く。

はぐれないようにと言って、シアとルリアを両脇に侍らせて歩いている。

リーザさんが私もって怒っているが、プランさんに捕まっている。

最近のトールさんとリーザさんを見ていると別れたんじゃないかって疑惑があるが、なんか聞きづらくて聞かないようにしている。

だって、俺のせいって言われたら怖いから。


 「ねー、こっちのも食べたい」


 シアに引っ張られて行った屋台は、肉の串焼きの店だ。

なんの肉か分からんが串に刺して塩を振ったシンプルな料理。

六本頼んで皆で食べながら進むと、食べ終わる前に次の屋台に連れて行かれる。

次の屋台は魚を油で揚げて歩きながら、手で食べやすくした料理だ。

これも六個注文し皆に配る。

シアも良く食べるのだが、ルリアも良く食べる。


「良いですね、ラムさんと一緒に居ると食べ物に困りませんね」

「でしょ!私もラムの所に来てから食べすぎて、ちょっと太ったもん」


 シアは最初が細すぎたから、今は顔色も良くなって最初よりさらに美人度が増して来ている。


「ねえ、あれも美味しいそうだよ!」

「シア、このままだと勇者の演説に間に合わないよ」

「じゃあ、これで最後にするから、お願い、ご主人様」

「もう、しょうがないなー」


 ニヤケながらシアの指定の屋台に足を向ける。


「ラムさん、チョロ過ぎますよ・・・」


 ルリアがボソッと突っ込んできたけど、しょうがないよね。

これに抗える男子っいるの!?絶対いない!


 上の商店街の通りに出ると向こうから、勇者一行と騎士団がオープン馬車から手を振ってやってくる。

今日のヴィーラは青いドレス鎧を着ていて、いつも以上に美しくドッキとしてしまう。

そしていつもは冷たい表情だが今日は終止微笑を浮かべて手を振っていて、ドラゴンの上で神々しいく立つヴィーラと被って見える。


「綺麗ですねー」


 リーザさんがため息を漏らす。 

他の面々もヴィーラの神秘的な美しさに見とれていた。

通り過ぎる時にヴィーラと目が合って、微笑まれた気がした。


「ねー、今こっち見ませんでした!」

「ルリアさんの事を見てんじゃないですか!」

「勇者PTで、今回のドラゴン討伐でも活躍したって言ってたしね!」

「いやー、生きてるうちに勇者様を見れて本当に良かったよ!ありがたやー」


 ヴィーラが通り過ぎても、うちのギルド員は大興奮だ。

勿論、町の人々もヴィーラを口々に称えている。

パレードが通らない細い道で領主の館に向かう。


 領主の館は真っ白い宮殿で、空の青と芝生の緑のコントラストで美しさが際立っている。

宮殿の前は凄い人だかりだ。

宮殿の庭も解放されていて、貴族や金を持っていそうな人達が庭で談笑している。

しばらくして白亜の宮殿の二階の踊り場に、白いドレスの女性とヴィーラ、カール、ベロ、騎士団長、後は見たことない女性やら男性が数名現れる。


 白いドレスの女性は銀色の髪を腰まで伸ばし、スラッと細身で背が高く、顔が小さくて、顔の大きさは隣の騎士団長の半分くらいしか無いんじゃないだろうか。

肌は真っ白で、赤い目をしている。

その赤い目からは感情が読めず、静かに宙を見ている。

そして俺が一番目を引いたのは特徴的な尖った耳だ。 

 

「わあ!あの白いドレスの人も綺麗な人ですね!」


 シアが感嘆の声をあげる。


「あの人はこの町の領主様のベルクド・イニング様よ」


 リーザさんが声のトーンを落として話を続ける。


「噂ではその美しさから、王様の寵愛を受けて。この町の領主になったて、噂されてるわ」

「私が聞いた話では、それ以外にもたまに偉い人がお忍びで逢いに来ているって噂もあるのよ」


 プランさんも嬉しそうに教えてくれた。

シアも興味深々といった感じだ。

女性はこう言った噂話が好きだよね。



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