錬金術
朝日で目を覚ます。
昨日の歓迎会の後、無事に家に帰ってこれたようだ。
体が痛い。
ベットが無く床に毛布を敷いて寝ている。
次の目標はベットの購入かな。
井戸で顔を洗って屋台で朝御飯を食べてギルドに出社する。
「おはようございます」
「ラムさん、おはようございます」
いつものニコニコのリーザさんが出迎えてくれる。
「昨日は歓迎会、ありがとうございました」
「楽しかったですね。またやりましょうね」
「はい!またやりましょう」
いつものリーザさんに戻っていた。
もしリーザさんと結婚して晩酌の度にあんな感じになったら‥‥
よし今日も張り切って錬金術やってみようー!
今日は昨日調べたハイポーションを試してみる。
分量を再度本で確認して慎重に調合していく。
ポーションより配合する種類も増えるため、時間も掛かるし難易度も格段に上がる。
「よし!こんなもんかな。錬金術!」
ピッカと光って光が収まると美しい緑色に光るポーションが出来上がっている。
出来た!
やはり俺がもらった錬金術スキルは凄いもののようだ。
これを納品するか悩むが一本くらい偶然てことで良いだろう。
さて次に試したいことがある。
石鹸を作ってみたい。
昨日風呂で石鹸の代わりに使った粉も良かったのだが、やはり石鹸が欲しい。
昨日、リーザさんに聞いたら石鹸はこの世界にもあるのだが、値段が高い為、一般には売られていないらしい。
錬金術で作れるのだが、レシピは非公開で王都のギルドで少数生産し、王都のある商会が独占販売しているそうだ。
確か小学校の科学部で石鹸を作った記憶がある。
油となにかを混ぜて作った気がする。
なにかの薬品はとても危険で先生が混ぜてくれた気がする。
その危険な薬品は失明の危険や手を溶かすから絶対触ってはいけないと言われた。
牛乳パックの空箱の中で固めた。
固まるまでけっこう時間がかかった気がする。
そのなにかの薬品さえ判れば石鹸が作れると思う。
判っているのは触ると皮膚を溶かすこと。
トールさんに聞いてみよう。
「おはようございます。トールさんに聞きたいことがあるんでが」
「入って良いよ。おはよう。昨日は楽しめたかい?」
「はい!最初は驚きましたが、馴れれば楽しかったです」
「それはよかった。ところで聞きたいことって?」
「皮膚を溶かす錬金術素材って知ってますか?」
「皮膚を溶かす素材か‥‥」
「たしかブルースライムから採れる液体が皮膚を溶かすね」
「それってギルドの保管庫にありますか?」
「あると思うけど危険薬に指定されてて別の場所に保管してあるよ」
「試したいレシピがあるんで少し分けて貰えますか?」
「リーザに言えば分けて貰えると思うけど、もう新しいレシピの研究をしてるのかい?」
「はい!石鹸を作ってみようかと」
トールさんは難しい顔で考えこんでしまった。
新人が新しいレシピの開発なんて生意気だよな。
「僕も錬金術研究者としてラム君の姿勢は素晴らしいと思う。新しいレシピの開発には夢があるからね。でもいくつか問題がある」
トールさんの考える問題とは
①新しいレシピの開発には時間が掛かる。
②ブルースライムの素材が高い。
納品出来ない、失敗した分は本人の負担になる。
③危険な素材で失敗して最悪死んでしまうかもしれない。
④錬金術の技術が低くて失敗する確率が高い。
確かにトールさんの言う通り問題がある。
普通なら何億通りの組み合わせから石鹸の組み合わせを探すのは不可能だ。
しかし組み合わせ自体は絞られている。
そして錬金術レベルも問題ない。
錬金術レベルが高いので配合比率が多少ずれても成功する確率が高い。
問題なのは素材の値段だ。
ブルースライムの素材であっているのか。
間違っていれば他の素材も試さなくてはいけない。
失敗して死んでしまうのも怖い。
「ブルースライムの素材ていくらなんですか?」
「覚えてないけど、高かったと思うよ。最低200G以上だね。まずブルースライム自体はゆっくりだからそこまで強くないんだけど、近づくとその溶かす液を吐くから近づきたくない。倒しても素材の買い取りが安いし、魔石は取りだし辛くて冒険者が倒さないんだよね。だから必然と納品が無くて、依頼での納品になるから値段が高くなってるんだ」
うげ!200G以上てめっちゃ高い‥‥
うーん、需要があまりにも無くて、錬金術師が研究の為に採取させた物だから高いのか。
「ブルースライムって俺でも倒せますかね?」
「ラム君の実力を知らないからなんとも言えないけど、気付かれない様に後ろから槍で核を突ければ一撃で倒せるはずだけど、僕は草木の素材採取が主体で討伐での素材採取は専門外だから、やっぱり専門家に聞くのが良いと思う」
「専門家てやっぱり冒険者ですか?」
「そうだね。討伐での素材採取は冒険者ギルドに依頼をだしてるよ。ラム君の探求心は素晴らしいけど、討伐での素材採取は錬金術でお金を貯めて依頼した方が良いと思うよ」
トールさんの言うことはもっともの意見だ。
ただ!!!
せっかく異世界に来てスキルもあるんだ、モンスターを是非この手で倒してみたい!
「ちなみにブルースライムって近くにいますか?」
「海のモンスターだからこの近くの海沿いの洞窟とかにいるけど、危ないから行っちゃ駄目だよ」
「大丈夫です。怖いのでさすがに一人では行きませんよ」
トールさんにお礼を言って、昼飯を食べにいく。
ご飯後は図書室に移動しブルースライムの液体について調べてみる。
この図書室には先代ギルドマスターの集めた本やギルドマスターが書いた本などけっこうな錬金術書が置いてある。
目当てのブルースライムの液体についても記述があったが取り扱いの注意があるだけで、錬金術レシピは乗っていなかった。
午後さらにポーションを三本製作しポーション五本とハイポーション一本を納品しに行く。
「リーザさんお疲れ様です。今日の納品です」
「お疲れ様です。早速、査定するので待ってください」
いつもの様に査定にはいるリーザさん。
ハイポーションをさりげなく混ぜたけど大丈夫かな。
あ!リーザさんが固まってる。
一回を目を瞑って、再度、目をカッ!と開いてハイポーションを確認する。
あ、リーザさんがハイポーションから目を離さず手招きしてくる。
「ラムさん私にはこれがハイポーションに見えるんですけど」
「はい、ハイポーションだと思います」
リーザさんが再度目をカッ!と開いてこちらを見る。
「えーと、トールさんに作って貰ったんですか?」
「一昨日、ハイポーションの作り方を見せてもらったので、作ってみたら出来ちゃいました」
リーザさんが三度目の目を見開く。
少し経ってからようやく口をひらく。
「ここで少し待っていて下さい」
そう言うとハイポーションを持ってトールさんの錬金術室に入っていく。
中からトールさんの叫び声が聞こえる。
二人で出てきて今度は俺が使っていた錬金術室に入っていく。
やっぱりハイポーションは不味かったかな‥‥
けっこう時間が経った後に二人が出てくる。
「本当にラムさんが作ったようですね。素材の使用状況を確認しましたけど、確かにポーション五本分とハイポーションを一個分の素材が減ってました」
「偶然て恐ろしいですね、成功しちゃいました」
沈黙する二人。
「ラム君の錬金術技術は僕が思っているより、高いのかしれない。ポーションの品質も毎回高いし、ハイポーションなんて錬金術室にある素材で成功させるなんて、偶然だけじゃ説明がつない」
リーザさんが泣きそうな顔でこちらを見てくる。
「もしかしてラムさんメイソンギルドの人なんですか‥‥」
「メイソンギルド?」
なんでリーザさんが泣きそうになっているのか、メイソンギルドてなんだ。
「リーザ落ち着いて、僕もラム君を見てたけど錬金術初心者なのは間違いないと思うよ。落ち着いて、まずは話を聞いてみよう」
「そうよね、ごめんなさい。あまりにも驚いてしまって」
なんか二人で話が進んで行き全く解らない。
「あのすみません、いろいろ解らないんですが‥‥ハイポーション作ってすみませんでした!!」
リーザさんをここまで動揺させてしまったことに後悔した。
頭を下げてリーザさんに謝る。
偶然でいけると軽く考えてしまった。
リーザさんとトールは顔を見合わせ目をパチパチさせる。
「「はっははは」」
二人で笑いだす。
「ごめん、ごめん、ラム君のが謝る必要はないよ。むしろハイポーション成功おめでとう」
「私もごめんなさい最近色々あって少し神経質になってました。ハイポーション成功おめでとうございます」
ん?なんか疑いが晴れたのか?
「ついていけてないんですが‥‥???」
リーザさんは大きく息を吸い込むと笑顔で話始める。
「新人のラムさんにはまだ話したく、なかったんですけど聞いてくださ」
リーザさんが話してくれた。
先代ギルドマスターが亡くなって、リーザさんが後をついでギルドマスターになったが、それ以降、在籍していたギルド員がこの町にもう一つある錬金術ギルド、メイソンギルドにどんどん移籍してしまった。
残ったのはリーザさんを入れて五人。
このままではギルドの存続が危なく、ギルド員を募集していたところ、俺が加入して嬉しかった。
しかし加入した俺がハイポーションを作ったことで、メイソンギルドの回し者じゃないかと思ってしまっと。
「リーザさん安心して下さい!俺はメイソンギルドじゃないですし、こんなに良くしてもらったのに他のギルドになんか行きませんから」
「はい!ラムさんには頑張ってもらいます!せっかくハイポーションが作れる大型新人が入ったんですから」
いつものニコニコのリーザさんに戻っている。
「動揺して疑ってしまって、ご免なさい。」
「はい、今日の納品代金150Gになります。新人でこの金額は凄いですよ」
「ありがとうございます、それじゃあまた明日」
「ラム君!明日ギルドに来たら僕の部屋まで来てくれるかい?」
「わかりました」
ギルドを後にし、いつもの食事所に行く。
さて今日は何にしようかなー。
ガッツリ肉が食べたい。
いつも通り六種類のおかずが大皿に盛られている。
今日はなんかの肉のステーキ二枚とポテトのサラダにご飯を頼む。
これで15G。
「お兄さん、こんばんは!」
いつもの女の子が注文をとりにくる。
人懐っこい笑顔が話やすい雰囲気を出している。
「今日は飲み物どうする?」
「今日は水だけでいいや。昨日歓迎会で飲みすぎちゃって」
「そっかそっか、昨日来なかったから他の食堂に浮気されたかと思ったよ」
そんなこと言われたら他の食堂行きづらいな‥‥
「ははは、お兄さん、そんな顔しないで冗談だよ」
「ははは、俺はラムザールて言うんだ、よろしくね」
「私はリカ、ラムね。よろしく」
ニッカて笑って水をとりに厨房に行く。
よし!気合いを入れて肉にかぶりつく。
硬いけど旨いな。
「今日のワイルドボアのステーキはどう?」
「ちょっと硬いけど美味しいよ」
「はい、お水。ごゆっくりどうぞー」
肉をお腹いっぱい食べて満足した。
懐も温かくなりその日は気持ち良く寝れた。