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ドラゴンもどき討伐


 それにしても、ドラゴンもどき強すぎるだろ!

分かっていたが、いざ対峙してみると、勝てる気が全くしない。

まず、近づくのが難しい。

近づけても攻撃が効かない。

辛うじて傷がついても浅い傷だ。

15メートルの生物に15センチの傷だよ。

痛いだろうけど絶対死なない。


 ルリアの治療を終えてドラゴンもどきに視線を戻す。

痛みから無差別に暴れ回っていて、誰も近寄る事が出来ない。

なんか、傷つけた事により事態がより悪化している気がする。

 

 ドラゴンもどきは右目を傷つけたルリアを探している様に見える。

今、ドラゴンもどきに来られたら、ルリアは逃げ切れない。

行きたく無いけど、行くしかない!

勇気をありがとう!ライオンハートポーション!


 俺は再度駆け出し、戦場に出て行く。

勇者はまだかよ!

勇者ヴィーラは先程より全身を包む青白い光が強くなっていて、手には青い長い三叉の槍を持っていいる。


 ドラゴンもどきの暴れ回るのが終わり、片目で辺りを見渡しヴィーラで視線を止める。

そりゃ、あれだけ光ってたら目に付くよね。


「今、四段階目だ!後少し時間を稼げ!」


 カールが怒鳴るが、先程の暴れるのを見た騎士団も冒険者も攻撃出来ずにいた。


「ドゥロロオォォーー!!!」


 ドラゴンもどきが二回目の咆哮を上げて大気が震える。


「うおおぉぉ!」


 先程より強力な咆哮がこだまし、俺も気合の叫びを上げる。

二回目の咆哮もライオンハートポーションの力を借りてなんとか耐える事が出来た。

だが、俺とヴィーラ以外は硬直して動けなくなっている。

ドラゴンもどきがヴィーラ目掛けてすごいスピードで突進していく。


「役立たずが!」


 そう言うとヴィーラが魔方陣を解いて、ドラゴンもどきを迎え討つため構えを取る。

ドラゴンもどきの噛みつき攻撃をかわすと、青い槍をドラゴンもどきの顔に突き刺す。


「ギィィーーー!!!」


 ドラゴンもどきが悲鳴を上げて顔をそらして、その巨大な尻尾でヴィーラを薙ぎ払う。

ドラゴンもどきの周囲のあらゆるものが、吹き飛ばされていく。

ヴィーラはこれも軽くかわすとドラゴンもどきの脇腹に槍を突き刺す。


「おい!そこのいやらしい男!カールとベロを助けろ!」


 それって、俺の事だよね。


「ラムザールだ!」


 叫ぶとベロに駆け寄り、俺の作ったライオンハートポーションを飲ませる。


「いやらしい方、助かりました!」

「ちげーよ!」


 動ける様になったベロが魔法の詠唱を開始する。


「ファイアサークル!」


 ベロの声と共にドラゴンもどきの周囲が燃え上がる。

炎を嫌がり、今度はベロ目掛けて突進してくる。

その前にヴィーラが立ち塞がり槍を付き出す。

突進の力を利用し攻撃を加えた為、深々と体に槍が突き刺さる。


 その隙にカールにもライオンハートポーションを飲ませる。

動ける様になったカールも戦いに参加する。

俺はライオンハートポーションを飲ませて回る。


「助かったぜ!」

「残りのライオンハートポーションは渡すんでお願いします!」


 近くの冒険者に託して、俺も短剣を抜いてドラゴンもどきの元に戻る。

ドラゴンもどきはヴィーラの槍が皮膚の至る所を突き刺し、体中から血を流しているが、一向に衰える事なくヴィーラに攻撃を加えている。


 勇者ヴィーラはドラゴンもどきの攻撃をすべて避けて、ドラゴンもどきの体を串刺しにしていく。

青白く光ながら戦う姿は、まさに戦いの女神が地上に降り立ったようで、神聖な光景に魅せられて目が離せない。

勇者ヴィーラが負ける姿など想像出来ないほど、華麗に避けて攻撃を加えているが、ドラゴンもどきも倒れる気配は無い。

ベロの魔法もドラゴンもどきの皮膚を焼くことは出来ず、致命傷は与えられないでいる。


「おい!いやらしいの!」

「ラムザールだ!」


 ヴィーラが嫌そうに言い直す。


「ラムザール!こいつの注意を引いて隙を作れ!キリがない!大技で仕留める!」


「くそ!なんで俺なんだよ!トラップ!トラップ!トラップ!」


 前の前に三回トラップを仕掛ける。


「スリープアロー!」


バチン!光の矢がドラゴンもどきに当たって俺と目が合うと、俺を目掛けて突進してくる。


「潰れろ!トカゲがあぁぁぁぁ!!!」


 ドラゴンもどきをトラップの場所に誘導する。

が、ドラゴンもどきがトラップ仕掛けた場所を迂回しやがった!


「へ・・・」


 危険探知スキルの反応が全身を包み込む。


 その場を一気に離れる。

いつもより体が軽く動いて、間一髪でかわす事が出来た。

もしスピードポーションを飲んでいなければ死んでたな。

一撃目は避けれたけど、この後どうする!

スリープアローは効かないし。

トラップは三回すべて使いきっている。

短剣じゃ・・・絶対無理!

残ってるスキルは毒化だけ。

逃げるしかない!


 ドラゴンもどきに背中を向けて走って逃げる!


「あ!」


ズシャー!


 何にかに躓いて転んでしまう。

足元を見ると、今朝食べ切れなかった魔物の死骸が転がっている。

ドラゴンもどきが、牙のびっしり並んだ口を開けて迫ってくる。


「毒化!」


 毒化させた、魔物をドラゴンもどきの口に放り込むと、バリバリと骨が砕ける嫌な音が聞こえる。

俺の骨じゃなくて良かった!


「ギ、ギ、ギ、ギ!」


毒化した魔物を喰ったドラゴンもどきの動きが止まる。


「ラムザール!良くやった!」


 青白い光を全身にまとったヴィーラがドラゴンもどきの頭上高く現れる。


「ブレイブスタッド!」


 ヴィーラの槍が光輝き、ドラゴンもどきの脳天から突き刺さり、顎を貫通し地面まで到達する。

ドゴーン!

土煙を上げてその巨体が地面に倒れ込み動かなくなる。


 ドラゴンもどきの頭の上に立つヴィーラは絵画の中の英雄のような佇まいで美しい。


 ヴィーラは見た目は美人なのだ。

ただ性格に難があり嫌いなのだが、ここまでの強さと華麗な戦いを見せられては、格好良く見えてしまう。


 ヴィーラがドラゴンの上から微笑を浮かべて、見つめられてドキッとしてしまう。


「ラムザール、少しはやるな。誉めてやる。それに引き換えあいつらは・・・」


 微笑を消して、冒険者と騎士団に冷徹な視線を向ける。

いや、そうは言うけど結構、体を張って頑張ってたよ。

俺は遠くからチマチマ気を引いてただけで、一回も短剣使ってないからね。

 

「ラムさん!怪我してませんかー?」

「俺は大丈夫だ!ルシアこそ、動いて大丈夫なのか?」


 吹き飛ばされた衝撃で鎧はひしゃげて、身体中、泥にまみれていて、痛いのかゆっくり歩いて近づいて来た。

ヴィーラがドラゴンもどきの頭から降りて、ルリアに近づいて声をかける。


「ルリア、今回は一矢報いてやったようだな」


 ルリアが笑顔で腕をつき出す。


「仇は取ってやりましたよ!」

「いや、敵を取ってやったのは私だ」


苦笑いでヴィーラが答える。


「まー、そうですけど、私的には仇を討てたんです。ラムさん、ありがとうございました。ラムさんを守るって言って付いて来たけど、結局守って貰っちゃいましたね」


 舌を出して頭に手を置く。


「ルリア!私はそのぶりっ子が嫌いだと何度言えば分かる」

「あ!ごめんなさい、ごめんなさい」


 ヴィーラはプイッと怒ってどこかに行ってしまった。

確かにヴィーラとルリアは対極と言っても良いかもしれない。


その後、生きてる人にはポーションを飲ませて回復させる。

ポーション様々だ。

それでも騎士団の死者が三名、負傷者が六名出た。

冒険者の死者ゼロ名、負傷者二名だった。


 討伐したドラゴンもどきは体長15メートル、体重は推定5トン。

とてもじゃないが運べない。

冒険者達が解体していきながら、素材ギルド員を狼煙で現地に呼ぶ。

素材ギルド員によって速やかに冷凍されたり、乾燥したり、血液が固まらないようにしたり、その素材に対しての保存方法が実行される。

 

 早く森から出たいが、ドラゴンもどきの素材が今回の遠征費の資金となる為、置いて帰る訳にはいかない。

解体が終わった後も素材を台車に載せて運び出すのも一苦労だった。


 戦闘も荷物運びも良く働いたよ!


 討伐を終えてベルクドの町に戻ったのは、出発してから五日目の夕方だった。


 



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