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ドラゴンじゃないの!?

ギルドマスターが大声で叫ぶと場の空気がガラッと変わる。

騎士団にも魔物接近の情報が伝わり、装備を慌ただしく装着し、PT毎に隊列を作っていく。

テントの中の勇者PTも顔を出す。


 戦闘準備が整って、身構えるが一向に現れない。

多分ドラゴンであろう魔物は移動速度が遅い。

こちらに近づいて来てはいるのだが、非常にゆっくりなのだ。

距離が近くなり、他の狩人の獲物探知スキルにも強力な魔物の存在が感知出きる距離までやって来た。


 騎士団が陣形を作りドラゴンを迎え討つ準備を整える。

その後方で俺たち冒険者達も待機する。


 しばらくしてドラゴンが姿を表した。

ドラゴンの体長15m位だろうか、黒ぽい緑色の光沢のある皮膚に覆われていて、四本足で歩いている。

背中に羽なんかは無い。

口にはおびただしい数の歯が並んでいる。

口は長く割け一口で人を飲み込めるんじゃないだろうか。

体は俺のイメージと違い、太っておらず顔より多少太い程度だ。

腕は短く、爪も鋭いのが付いてはいるが、体に対しては小さいな。

 

「ルリア、大丈夫か?ライオンハートポーションとパワーポーションとスピードポーションだ」


 腕を取られた相手だ、ルリアの心の

トラウマになっていないか心配だ。


「いいんですかー!ありがとうございます。三ついっぺんに飲むなんてぜいたくですね」


 ルリアにポーションを渡して俺も三本一気に飲み干す。

体が熱くなって、力が沸き上がってくる。

毎回、思うがポーションすげーな!

ルリアもポーションを一気に三本飲み干す。


「かー!このポーション効きますね!」

「オヤジか!」


 ルリアって見た目はピンクのウサギで可愛いのに、ちょいちょいオヤジぽいだよね。


 ルリアは腰に剣を下げ、手には盾を持っていいて、鉄の鎧にピンクのインナー姿で、初めて会った時と同じ装備だ。

 

 ドラゴンの姿を見た冒険者数名がざわついていて、ミッツさんもエキストラさん達と何か話している。


「あれって、ドラゴンもどきじゃねーか?」

「俺も見たことないから、分からんが、かもしれないな。ギルマスに確認すっか?」

「そうだな、ちょっくら聞いてくるわ」


 なんて会話をミッツさん達がしている。

ちょっと嫌な予感がするんだが・・・


「ねえ、ルリア、ドラゴンもどきってドラゴンじゃないの?」


 ルリアが笑顔で、いつもの軽い感じで答えてくれる。


「どうなんですかね?私に聞いても分かんないですよ。ははは」


 ミッツさんが戻って来た。


「おい、ギルマスに聞いてきたぞ!やっぱりあれはドラゴンもどきだってよ」

「ミッツさんドラゴンもどきってドラゴンじゃないんですか?」


 ミッツさんが俺の肩に手を置く。


「ラム、残念だったな、あれはドラゴンもどきでドラゴンじゃねー!」

「じゃあ、錬金術の素材のドラゴンの血は?」

「あれはドラゴンじゃ、ねーからもちろん手に入らん」

「・・・」


 俺は膝から崩れ落ちる。

ライオンハートポーションを飲んだ筈なのに、俺の心は砕け散っていた。 


「おい!ラム!ドラゴンの前だぞ!」

「ラムさん、立って下さい!死んじゃいますよ」

「いや、あれはドラゴンじゃないし・・・」

「ドラゴンじゃ、ねーけど、ドラゴンなんだよ。ほら立て!」


 ルリアとミッツさんに両脇を抱えられ立たされる。

俺は命を掛けて、シアの制止を振りきって何を・・・


「何をしに来たんだーーー!!!」

「ラムさん落ち着いて下さい!」


 あ、目の前にピンクのもふもふがある。

無意識に目の前のぴんくの、もふもふをもふる。


「きゃー!ちょっと、ラムさん、ちょーと、耳触らないでください」


バチン!☆★☆★


 後ろからミッツさんにどつかれて我に返る。

「ラム、落ち着け」

「えっと・・・あれってドラゴンじゃないんですか?」

「ああ、ドラゴンじゃないが、強さはドラゴンと変わらない。行動の仕方が違うだけで油断したら即死ぬぞ!」


 素材が手に入らないばかりか、死んだら最悪だ。

もう活躍しなくて良いから、死なない事だけを考えよう。


「もー、ラムさん、耳を触るなんて酷いじゃないですかー。兎獣人の耳ってすごくデリケートなんですよ!」

「ルリア、ごめん!無意識に触ってしまった。今度、なんかお詫びするから許してくれ!」

「そうですか、じゃあ、許してあげます」


 怒った顔をしていたが直ぐに笑顔に切り替わる。


 前方の騎士団に目をやると動きの遅いドラゴンもどきの前で陣形が完成していた。


「射て!」


 騎士団長の号令と共に一糸乱れぬ動きで矢が放たれるが、ドラゴンもどきの皮膚によってすべて弾かる。


「無傷・・・」


 冒険者達がその光景を見て息を飲む。


「射て!」


 騎士団長の号令で二撃目が放たれるが結果は同じだ。

ドラゴンもどきはゆっくり進む。

再度騎士団が弓の構えを取る。


「近づき過ぎだ!」


ギルドマスターが怒鳴る!

次の瞬間、ドラゴンもどきが一気に加速し騎士団の一人を噛み砕いていた!


「わぁああああ!!!」


やられた隣の騎士団員が悲鳴を挙げる。


「隊列!」


騎士団長の号令一つで乱れた隊列が整う。


「攻撃!」


ドラゴンもどきを騎士団が全方向から攻撃を仕掛けて行く。

騎士団長が叫ぶ!


「咆哮に備え!」

「ドゥロローー!!!」


 ドラゴンもどきが違法トラックの排気音を100倍にしたような咆哮をあげる。

騎士団の二名程が動けなくなるが、残りの騎士達は持ちこたえ、果敢に攻撃を開始する。


 ドラゴンもどきは噛みつき攻撃と尻尾で騎士達を攻撃していく。

15メートルの巨体から繰り出される尻尾攻撃は、バスに跳ねられたのと同じだ。

騎士達が宙を舞って飛ばされて行く。


 騎士の槍や剣はスキルを使った時は攻撃が通っているようで、皮膚を切り裂き血が出てはいるが、どれも浅くダメージを受けているように見えない。


 本当にあんな化け物倒せるのかよ!

勇者PTに目をやると、勇者ヴィーラの下に魔法陣が出現しており、ヴィーラ自身も青白く光っている。


 「ルリア、ヴィーラのあれは何だ?」

「あれは勇者特有のスキル、オーバードライブです!時間は掛かりますが勇者の秘めた力を解放します!五段階あって、ドラゴンもどきだと、五段階まで引き上げる必要があるので、もう少し掛かると思います」

「もう少しってどれくらい!」

「もう少しです!」


 もー!ルリアは適当過ぎ!


 再度騎士団に目をやると、もう半分程の人数になっていて、突破されるのも時間の問題な様に見える。


「おい!俺たちもそろそろ加勢するぞ!」


 ギルドマスターの掛け声で、冒険者達もドラゴンもどきに近づいて行くが、騎士団の様に隊列も何もない、好き勝手にPT毎に攻撃して行く。


「くそ!やるしかないか!ルリア、行くぞ!」

「はい!」


「スリープアロー!」


光の弓がドラゴンもどき目掛けて飛んで行く。


「バチン!」


 光の矢がドラゴンもどきに命中する。

寝るか!?


 ドラゴンもどきは眠気を払うように首を振ると、何事も無かった様に攻撃を再開する。

やはり、聞かないか。

ゲームでもボスは寝ないからな!

でもこの距離だと、これしか攻撃手段が無いし、近づいて攻撃なんてあり得ない!


「スリープアロー!」


 再度、光の矢が命中するが今度も効かない。

ただ、お気には召さなかった様で俺と目が合う。


「トラップ!」


 トラップのスキルを掛けて逃げ出す。

結構な距離があった筈なのに、最初に距離を詰めた時の様に一瞬で俺がいた辺りを噛み砕く!


「ギィィー」


 トラップに引っ掛かりドラゴンモドキの巨体が悲鳴と共に潰れた。

ルリアがその隙を見逃さず、盾を捨てて剣に持ち変えて斬りかかる。


「スラッシング!」


 ルリアの剣が淡い光に包まれ加速していき、ドラゴンモドキの右目に突き刺さる。


「ぎゃぁぁぁぁーーー!!!」


 鳴き声を上げその巨体で暴れ回る。


「ルリア!!!」


 ルリアが尻尾の攻撃を受け、玩具の様に空を飛んで吹き飛んで行く!

急いでルリアの元に駆けつける。


「おい!ルリア!ルリア!」

「へへへ、右腕の敵は取ってやりましたよ」


持っていたハイポーションを二本飲ませる。


「ありがとうございます」

「動けるか?」

「う・・・ちょっと動けそうにありません」

「掴まれ!」

「ふん!」


 ルリアをお姫様抱っこで抱き上げると、とにかく、ドラゴンもどきから距離を取って安全な木の影に隠れる。

持ってるポーション、ハイポーションを全部出して、ルリアに飲ませていく。


「ちょっとラムさん、こんなに飲んだらお腹がたぷんたぷんになっちゃいますよ」

「おい、大丈夫なのか?」

「伊達に鍛えてないですよ!まー、運もだいぶ有りますけどね」


 こんな時まで笑顔で軽い感じで答えやがって!


「心配してんだよ!大丈夫なのか!死なないよな!」

「ラムさん、心配してくれて、ありがとうございます。戦うのは難しいですけど、死にはしないので大丈夫ですよ」


 ルリアが無事で本当に良かった。

腕の次に命を無くす所だったぞ。

それにしても、ドラゴンもどき強すぎるだろ!



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