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ドラゴン退治に出発

 シアとの良い雰囲気をルリアに邪魔され、ドラゴン討伐なんて辞めてやろうかと思ったぞ!


 ドラゴン討伐の朝、町の入り口にルリアと共に集まると、既に騎士団の面々や、冒険者、行商人、見送りの人でごったがえしていた。


「おーい、こっちだ!」


 ミッツさんに呼ばれて行くと、テーマさんとエキストラさんの見慣れた顔ぶれもある。


「今回の討伐はこの四人でPTを組んで行動するぞ。て、そちらのお嬢さんは誰だ?」


 ルシアを紹介をすると有名人の様で、皆経緯は知っていた。

勇者PTの話は今一番人気の噂話だからな。


「そうなると、冒険者ギルドマスターにも、話はしておいた方がいいな」


 ミッツさんの提案でルシアと共に挨拶に言ったが、元勇者PTの騎士と言うことで、すんなり許可が出た。

ここから一日進んだ所で一泊して、次の日、ドラゴンのいる森に入って行く。

見つからなければ森で夜営し捜索を続ける。

最短で二泊三日で帰って来る予定だ。


 サラダ会長も自分の従業員が参加する為か見送りに来ていた。


「ラムザール様、ご武運をお祈りしております」

「必ず、ドラゴン討伐して、ドラゴンの血を手に入れてきます」

「期待しております。所でラムザール様、最近、市場に石鹸が出回っております。王都の石鹸なら良いのですが、それが、ラムザール様のレシピで作られた石鹸の様なのです。一応、お伝えしておきます」

「ありがとうございます!」


 サラダ会長より気になる話を聞いたが出発の時間で、詳しくは話さなかった。


 この後、騎士団長の挨拶があって、PT単位で馬車に乗り込み出発する。

ベルクド騎士団の馬車が四台、冒険者の馬車が三台、勇者PTの馬車が一台、さらにサラダ商会の馬車が五台。

総馬車数十三台の大所帯だ。


 サラダ商会は討伐後にドラゴンの素材を運ぶ為に同行する。

サラダ商会の従業員の他に素材ギルドのギルド員も何名も同行している。

ドラゴンは貴重な素材の為、素材ギルド員が手早く各素材にし分けて、適切な保管をする体制を整えている。


 先頭は冒険者の馬車が進んで行く。

街道に現れる魔物は冒険者達が露払いして行く手はずだ。

騎士団と勇者PTはドラゴン戦に向けて温存しておく。


 馬車の中は至って平和でドラゴン退治を忘れてしまいそうだ。

だって、ミッツさんはいつも通りのニヤケ顔だし、ルシアも片腕を無くした相手だと言うのに余裕の表情だし、テーマさんとエキストラさんはトランプで盛り上がっている。

緊張してた俺が馬鹿みたに思えて、何か気が楽になってきたぞ。

昨日の夜緊張して寝れなかったのもあり、うとうとしている間に一日目の夜営地に到着した。


 夜営の場所はドラゴンの居る森から一番近い、村の広場にテントを張る。

PTメンバーで夕食を食べていると、勇者ヴィーラがやって来た。


 ヴィーラは薄い青色の髪に、青い目の美人ではあるが、その眼差しは冷たく、近寄り難いオーラを放っている。


「知った顔があるので来てみれば、そのいやらしい目付きの男とまだ一緒にいるのか」


 いやらしい目付きの男とは俺の事です!


「あ!ヴィーラ、こんばんは」


 ルリアが立ち上がって挨拶する。

ミッツさん達も立ち上がり、勇者ヴィーラを歓迎する。

勇者はこんに嫌な奴なのに絶大な人気がある。

俺もしぶしぶ、立ち上がる。

俺だけ座ってる、何て事が出来ない、小さな男なんです・・・

ヴィーラが冷たい目でルリアを見る。


「なぜ、ルリアとそこの男が、ここに居るのだ?」

「なぜって、ドラゴン討伐に呼ばれたからですよ」

「その、ラムさんの護衛で来ました」


ヴィーラが鼻で笑う。


「ははは、騎士団も情けないな、こんな男と腕の無い騎士に、助けを借りねば時間が稼げぬのか。いいかルリア、今度は私の足を引っ張るなよ」


 そう言うとヴィーラは去って行った。

と思ったら直ぐに戻って来た。


「ルリア、こんな男どもの中では寝れないだろう、私が部屋を用意してやる、付いてこい」

「ヴィーラ様、ありがとうございます。でも私はここでも大丈夫ですよ」


 ヴィーラがムッとして言い返す。



「口答えするな!いいから来い」

「はい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 ヴィーラに連れられルシアも村の宿屋に入って行った。

勇者ヴィーラは嫌な奴だけど、ちょっとだけ見直したぞ。

ちょっとな!


 その夜、むさい男四人でテントで休みながら、出発の時にサラダ会長が言った話を思い出していた。


「市場に石鹸が出回っております。王都の石鹸なら良いのですが、それが、ラムザール様のレシピで作られた石鹸の様なのです」


 俺の石鹸のレシピは今後、公開する予定ではあるが、まだ王都に申請を出したばかりで認可は降りていない。

トールさんの話では認可が降りるまでに半年は掛かると言っていた。

 

 俺と同じレシピを同時期に同じ町で開発したとは考え辛い。

可能性はコスモ商会に売った石鹸が猫島に運ばれずに市場に流れた。


 考えたくは無いがレシピが流出して、俺のレシピで誰かが石鹸を作って売っている。

レシピが流出することは、まあ、良いんだが、問題なのは裏切り者がギルド内に居ることだ。

トールさん、リーザさん、プランさん、シア。

この四人が石鹸のレシピを知っている。


 一応、レントさんもギルドには居るんだよ!

出番が無くて忘れてると思うけど。


 トールさん、リーザさん、プランさんが裏切るとは思えない。

一番裏切って欲しくない相手、でもその相手の顔が頭から離れず俺は考えるのを止めた。


 次の日の朝、日の出と共に森に入って行く。

ここからは徒歩での移動となる。

前回発見された場所はここから一日歩いた所だ。

この距離では俺の獲物探知スキルを持ってしてもドラゴンの居場所を特定することは出来ない。

 

 森の中でも冒険者、狩人組が先頭に進んで行く。

目指すのは前回、ドラゴンと対峙した場所だ。

これだけの人数での移動だ、魔物に気づかれ何回か襲撃されたが、魔物達は瞬殺されて終わっていた。

その日はドラゴンと遭遇すること無く前回にドラゴンと戦闘した場所に着いた。

前回、遭遇した場所にもドラゴンの姿は無かった。

 

 ドラゴンは基本、日中活動するらしい。

夜間は交代で冒険者一PTと騎士団一PTで交代で見張りに着く。

何度か、魔物に襲われたが難なく撃退している。


 日の出て共に皆起き出し、昨晩襲ってきた魔物の肉は焼いて朝食のおかずにする。


「肉のいい匂いがしてきましたね」

「でも、全部食いきれないのが勿体ないな」

 

 見ると焼かれずに放置された魔物の死体が数体転がっている。

朝食を食べていると森の異変に気付く。

獲物探知スキルに森の奥から魔物の気配が消えたのだ。

俺は立ち上がって森の奥を睨み付ける。

俺の様子を見ていたミッツさんが話かけてくる。


「ラム、なんか見つけたのか?」

「逆です、魔物が居なくなりました・・・」

「はぁ?居なくなたなら良いじゃないか」

「異常ですよ。あっちの方角だけ魔物が居ないんです」


 森の奥を指差す。

ミッツさんも異常に感づいた様で険しい顔になる。


「確かに俺が感じる範囲でもあっちだけ魔物の気配を感じないな。ちょいとギルマスに報告してくる」


 直ぐに日焼けして、いかにも冒険者の風貌の冒険者ギルドのギルドマスターがやってくる。


「あっちがあやしいて聞いたが?」

「居ます!あっちに何かヤバイ奴が!」


 ギルドマスターが話し掛けて来て直ぐに違和感の有った方角に強い魔物の気配が現れる。

キングウルフ何て比べられない程に強い魔物に気配。

俺がキングウルフなら逃げ出すレベルだぞ!

ああ!そっか。

だからあの魔物の居る方角の魔物が全部逃げ出したのか。


「おい、ミッツ、テーマ、ラム殿が言うことは本当か?」


 ミッツさんが頭をかきながら答える。


「すみません、俺の獲物スキルにはまだ反応がありませんが、ラムの言うことを信じた方がいいですぜ」

「そうだな、警戒して損はねーな。おい!!!お前ら!戦闘準備しろ!!!」


 ギルドマスターの声で一気に空気が変わったのだった。 

 

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