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シアの手料理

 新居に引っ越しが完了した。

今日は引っ越しの為、ギルドは休みと言ってある。


「シア、料理作れる?」

「んー、まあ、お父さんと二人暮らしだったから一応できるけど、そんなに美味しいのは作れないよ」

「せっかく、キッチンもあるんだし一人一品ずつ作って、夕飯にしよう」

「ご主人様も料理出来るの?」

「一人暮らし、してた事があるから、簡単なのなら作れるよ」

「本当に何でも出来ちゃうのね」

「いや、簡単なのしか出来なよ」

「私もそんなに期待しないでよ」


 二人の故郷の味を食べ合うことにした。

さて、なにを作ろうかな?

二人で下のマーケットに買い出しに出発!

マーケットに着くとシアが服をつんつん引っ張る。

あーもーこれ可愛いな!


「どうした?」

「ご主人様、ちょっとお腹空いたかも」


そう言えば昼飯食べて無かったな。


「ごめんね、先に食事にしようか」

「うん」


シアの無邪気な笑顔にドキッとする。

食べ物の屋台が出ているエリアに移動すると、オレンジが山積みになっているのが目に止まる。

そう言えばリカがこの季節、オレンジの採れる季節で安いって言ってたな。


「わあー、見てみて!すっごい量のオレンジ!」


シアがピョコピョコオレンジの積んである屋台に近づく。

屋台の台車いっぱいにオレンジが積んであり壮観だ。


「はい、いらっしゃい。ジュースなら一杯2G、そのままなら5個で1Gだよ」

「ジュース二杯頂戴」


店の人がその場で切ってカップに絞っていく。

カップ一杯にけっこうな数のオレンジを使っていた。

シアと乾杯してゴクゴク頂く。


「ぷはー、旨いな!」

「美味しいー!」

「お客さん初めて飲むのかい?今の時期しか飲めないからいっぱい飲んどきな」


ふと見ると絞ったオレンジの皮が大量に屋台の裏に置かれている。


「スゴい量のオレンジの皮ですね!それどうするんですか?」

「これかい?食っても旨いし、掃除にも使えるし、色々使い道はあるんだけど、さすがにこの量は使い切れないから家畜の餌だな」

「シア、どう思う?」

「ん?なにが?」

「これ石鹸に使えないか?この町の特産品のオレンジの香りがする石鹸なんて売れると思わないか?」

「売れると思う!」

「このオレンジの皮売って下さい!」


 店の人を交渉してオレンジの皮を錬金術ギルドに全部運び込んで貰う様にお願いした。

あと自分達で食べるオレンジを買っておいた。

屋台で簡単に食事を済ませて買い出しを再開する。


「シアはなんの料理を作るの?」

「私の故郷ではジャガイモを使った料理が多いの、だがら今日はジャガイモ料理にしようかな」


 まず、野菜のエリアで野菜を買うことにする。

ジャガイモと濃い緑の大きな葉っぱ(サニーレタスを二倍にしてたくましくした感じ)トマト、ニンジン、ニンニク。

締めて4G。

次に肉の屋台の並ぶエリアに移動。

シアの目がキラキラしてる気がするな。


「肉はどうする?」

「肉はワイルドボアを使うことが多かったかなーでも肉なら何でも良いよ」


「いらっしゃい!何にするんだい?」

「お薦めありますか?」

「今日はワイルドターキーが入荷したよ」

「じゃあそれを二人分下さい」

「はいよ3Gね」

1メートル位の吊るされてる鳥の肉を豪快に切って包んでくれる。

シアがそれはもう嬉しそうに受け取っている。


「ねえねえ、ラムは何作るの?」

「シアが肉料理なら俺は魚料理にしようと思う」


 今度は魚コーナーに移動して、握り拳大の大きさの二枚貝と白身魚を一匹買う。

後は調味料屋で塩、唐辛子、オリーブオイル、オリーブの塩浸け、シアのお薦めの香辛料(葉っぱを乾燥させて粉にした物)

さらに酒屋に移動しワインとお酢を購入。

何故かお酢は酒屋で売っていた。

パン屋で二人分のパンを購入。

持ちきれなくなって途中でかごとリュックも買ってしまう。

さらに雑貨やでランタン、フライパン、鍋や包丁、皿、コップ等も購入。

新生活て何かと必要なのね。


 「ただいまー」


シアも俺に続いて


「ただいまー」

「ギルド宿舎と違って家に帰って来た気持ちになるね」

「今日からここに住めるなんて凄いね!」


二人でダイニングの椅子に腰かける。


「やっぱり、ソファーも欲しいし、お茶を入れるポットも必要だな」

「ギルド宿舎にいた時は何も無くても気にならなかったのに、どんどん贅沢になっちゃうね」


休憩した後、料理に取りかかる。

俺の料理は直ぐに出来るから、シアの料理から作って行こう。

二人でじゃがいもを剥いていく。


「あ!ちょっと!そんなに、じゃがいもの皮を厚く剥いたら勿体無いじゃない!」

「これくらい普通じゃない?」

「こうよ、こう!」

「おお!シア上手だね」

「そ、そう、へへへ」


 ちょっと誉めると鼻唄を口ずさみながらじゃがいもを手早く剥いていく。

テンポの早い明るい曲だ。


「それはシアの地元の曲なの?」

「う・・・、そうだけど、盗み聞きするなんて、相変わらずエロいわね」


いや・・・エロさは関係無いよね。

もしかしてシアの年齢から興味がある年頃なのかな?


「どんな歌の?」

「雄鶏が雌鳥に木の実を取ってきて求愛する話しだよ」

「上手くいくの?」

「雌鳥は求愛を受け入れて、他の鳥達に祝福されるのよ」

「それから?」

「それでおしまい。歌なんだからそんなもんでしょ?」

「そりゃあ、そうだね」


シアがもう一度口ずさむ。


「そうだ、ご主人様の国の歌も聞かせてよ」

「んーそうだな、じゃあ、これなんてどうかな?あったまでか、でかー!たらたらたらー♪」


シアがお腹を抱えて笑いだす。


「ははは、なにそれ!はは、お腹いたいよー、は、ははは」


好評の様なのでもう一回、歌ってあげる。


「やめてよー、ははは、ひーー、ははは、お腹痛い、はっはは」


シアがこんなに笑うなんて、始めの頃からは考えられないなー。


「もう、久々にこんなに笑っちゃたじゃない。なんなのよ、その歌?」

「んー、子供の夢を叶えてくれる猫の話の歌だよ、空を飛んだり、一瞬で遠くに移動出来たりする道具を貸してくれるんだ」

「へー、何かワクワクするわね。ダンジョンで見つかった魔道具みたいね」


今度は俺が感嘆の声をあげてしまう。


「へー、そんなのあるんだ?」

「実際は知らないわよ。国の宝物庫にあるって噂があるのよ」


火の無い所に煙は立たない、きっとそれに近い物があるんだろう。

ま、今はそれよりシアの手料理だな。

手際良くジャガイモを剥き終え、適当な大きさに切り分ける。ニンジンも同じ大きさに切っていく。

もう、俺は怒られないように見てるだけさ。

次に肉も同じジャガイモと同じ大きさに切って、シアのお薦めの香辛料と塩をまぶして焼いて、火が通ったら、ジャガイモ、ニンジン、大きな葉っぱ、水を入れて煮込んでいく。


「これで私の料理は大体出来上がりよ、ご主人様は何を作るの?」

「魚をトマトと煮込んだ料理だよ」

「ごく・・・美味しそうね」


まず魚を下ごしらえで、鱗と内蔵を取り出す。

オリーブオイルをフライパンにひいてニンニクを炒めて、そこに魚入れて軽く焼く。

魚が焼けたら、オリーブ、カットトマト、貝、ワイン、水を入れて蓋をして煮込むだけ。


「ねえ、ねえ、すっごく良い匂いがしてきたわね、ゴク」


外は赤くなっていて、シアと始めて会った日を思い出すな。

テーブルを海の見える窓際に移動して、食事を並べて、ワインも並べる。


「じゃあ、新居に引っ越し乾杯!」

「へへ、乾杯」


シアがハニカミながらグラスを持ち上げる。


「頂きます。シアの料理食べるよ」

「うん、美味しく出来てると良いんだけど」


シアの料理、見た目は肉じゃがだな。

でも味はこのハーブの香辛料が決めてとなってまったく肉じゃがない。


「シア、美味しいよ」

「へへへ、簡単な料理だけどね、でも調味料が揃わないと地元の料理って難しいわね」

「ああ!それ思った!俺も醤油とみりんがあれば地元の料理作れるんだけどね」


料理の基本は調味料だね、今度、似たような物でも探してみよう。


「今度は俺の料理食べてみてよ」

「私が先には食べ辛いわよ、先に食べて」

「そんな事気にしなくて良いよ、料理は食べて貰わないとね」

「じゃあ、頂きます。モグモグ・・・美味しい!!!あんなに簡単に作ってたのに、すごく美味しい!ラムってスゴいね」

「じゃあ、俺も食べてみるか」


うん!美味しく出来てるね、魚と貝から良い味出てるよ。

やっぱり醤油とみりんがないと和食って難しい。


「この家にして正解だったね」


海を見ると水平線に太陽が消えようとしていた。


「うん、私の住んでた所は海が無かったから、海ってすごく綺麗で好きになっちゃった。綺麗な家に住んで仕事もあって美味しいご飯も食べれて・・・」


シアが水平線を見ながら寂しそうな顔を覗かせる。


「お父さん・・・」


ポツリと呟く。



「シアが奴隷になった経緯聞いても良い?」

「・・・・・」


シアが、ポツリ、ポツリと話してくれた。

どうして奴隷になったのか、そしてお父さんも奴隷になっていること。




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