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商会探し2

メリークリスマス!

 コスモ商会との一回目の商談を終えた。

今回の商談は挨拶して、石鹸のサンプルを渡して終わってしまった。

次回はコスモ商会が石鹸を実際に使ってみて、さらに価格や数量を話す事になった。


 ギルドに帰って今日の商談の内容をギルドの皆に伝える。

トールさんが淹れてくれたお茶で一息つきながら報告していると、シアが一つ提案してくれる。


 「次のサラダ商会には事前に石鹸のサンプルを渡しておきましょう?そうすれば最初から話が進み易いんじゃないですか?」


 確かに商談ペースをあげる為ならそれが良いだろう。


「実はこうなる事はある程度予想が出来てたんだ。サンプルを先に渡さなかった理由は二つあって一つが石鹸の需要が分からず、むやみに渡して良いものかどうか悩んだこと。もう一つは相手の出方をみたかったんだ」


 転生する前に仕事で学んだことがある。

信頼を得るために必要な事。

小さな約束も守る。

期日を守る。

出来ない約束はしない。

当たり前の事なんだけどこれが結構出来ない。

例えば上司に簡単なお願いをして、後日、あの件どうなりました?て聞くと、ゴメン忘れてた今すぐやるよって返答が反ってきたりする。

たぶん、部下のお願いなんて仕事の優先順位が低いから後回しにされるんだろうね。

後回しにした結果忘れてしまう。

忘れても業務にはさして影響しないんだけど、でも信頼はなくなるよね。

逆にすぐにやってくれる先輩、上司はすごく信頼がおけて一緒に仕事したいと思える。


 俺は今回、商会長に会いたいと条件を出してシアにアポイントを取ってもらった。

うちのギルドは四人しかいない弱小ギルドだ。

相手からしてみれば格下。

商会長が忙しくて時間が取れないなら最初から約束しなければ良い。

約束したからにはその時間は俺の為に空けとくべきだと思う。

これで相手の人となりを判断してたわけだ。

石鹸のサンプルを渡してしまうと、相手の素を見れない可能性があるので今回はあえて石鹸を先に渡さなかった訳だ。

皆にはかいつまんでで説明する。


 「ラム君は相手の素が見たかったと。コスモ商会長はどうだったんだい?」

「先程言った項目に対してはしっかりしてましたし、悪い印象は無いですね。立ち振舞いなど余裕を感じました。こちらを下に見る様な事も無いですし、常に商売のチャンスを探っているような貪欲さを感じました。」


 次の日サラダ商会の商会長に会いに行く。

サラダ商会も港にあるのだがコスモ商会より一回り大きい。

従業員に声を掛けて部屋に案内してもらう。


「こちらの部屋で商会長がお待ちです」


部屋に入るとサラダ商会長が出迎えてくれる。


「ラムザール様、お待ちしておりました」


笑顔で商会長が入り口まで出迎えてくれる。

この町で一番大きな商会長だがめちゃくちゃ低姿勢だ。


「錬金術ギルド、ギルドマスター代理をしているラムザールです」

「サラダでございます。よろしくお願いします」


 挨拶を終えて席に案内される。

部屋は赤い絨毯がひいてあり、調度品なども飾られていて豪華過ぎず、寂しくない良い塩梅になっている。


 「今日はラムザール様に会える事を楽しみにしておりました」

「もしかして、噂になってるんですか?」

「ご存じでしたか。メイソンギルドお一人で潰した強者として噂になっておりますよ」


サラダも常に人の良さそうな笑顔を絶やさず、裏なんて無い良い人に見える。


「ご存じかも知れませんが、ラムザール様が騎士団に納めたポーションの活躍もあり無事にゴブリンを討伐したそうです。ただ、ゴブリン討伐時にドラゴンが発見されたそうで、今、王都から勇者様を呼んでいるそうですよ」


この世界にも勇者は存在するんだな、一度会ってみたい。


「それは知りませんでした!教えて頂いてありがとうございます」

「この程度の事、お礼を言われる程の事でもありませんよ。して、今日はどの様なお話をもってきて下さったのでしょうか?」


机の上にうちで作った石鹸を並べる。


「ほう、これは何ですかな?」

「こちらは当ギルドで開発した石鹸になります」

「おお!石鹸の開発に成功したと!それは素晴らしいですね!拝見させて貰いますね」


サラダは手に取って触ったり、匂いを嗅いだり試してみる。


「この石鹸を使用してもよろしいですか?」

「勿論、この10個は差し上げますので是非試して下さい」

「では早速、試したいので一旦席を外させて頂きます」


この町一番の商会長は違うな。

低姿勢だし、物腰も柔らかいが行動が早い!

成功する人物はやはりひと味違う。


「お待たせ致しました。素晴らしい物ですな。王都の石鹸に劣らず、もしくはそれ以上の品とお見受けしました」

「ありがとうございます。当ギルドで製造した石鹸は王都の品に比べて使用感がしっとりしており、女性に人気が出ると考えております」


サラダが大きく頷き同意してくれる。


「おっしゃる通り私もそこが素晴らしいと感じました。この素晴らしい石鹸、当商会に卸してくださるのでしょうか?」

「当ギルドとしてもこの町一番のサラダ商会とお付き合いが出来ればと考えております」

「それは大変嬉しいお話ですね」

「当ギルドの石鹸ですが、買って頂けるでしょうか?」


サラダは深く頷くとしばし間を置いてから話始める。


「勿論、これだけの品です。買って下さる方は居るでしょう。ただ、石鹸は高価な物で一部の限られた人しか買うことが出来ません。数は余り売れないと思います。まずは100個程買わせて頂いてお客様の反応をみたいと思います」


王都の石鹸も100Gで売られていて高級品として高粗利額で販売してる。

ただ俺は石鹸の市場を拡大しレシピの使用料で儲けたいと考えている。

その為にも一般市民も買える価格で数を販売したいと考えている。

 

「当ギルドは一日100個の石鹸を作る事が出来ます。値段を下げてより多くの人に使って貰いたいと考えております」

「成る程、薄利多売で稼ぐ訳ですな。ただ一般の家庭で使うとなると1G2Gで販売しなくてはなりません。流石にそこまでの金額では販売するメリットがありません。一般の家庭にしてみれば石鹸はなくても生活出来る、あくまで贅沢品なのです」


石鹸の需要は考えていた最悪の需要の様だ。

一般市民にしてみれば今使っている灰やオレンジの皮や米ぬかなど、石鹸の代用品で十分事足りていると言うことだ。


「当ギルドも1G2Gでは製造する事は流石に出来ません。ただ一般市民にも使って貰って、販売数を上げていきたいのです。サラダさんはレインボーフィッシュをご存じですよね?」


サラダ会長の顔が驚きの顔に変わる。

俺が何を言いたいの直ぐに気づいたようだ。

さすがこの町一番の商会長だ。


「猫島周辺でしか捕れないレインボーフィッシュは20Gでも買われています。それはこの町に温泉があり観光に来た人々に、記念に食べられているからです。そしてレインボーフィッシュは見た目からお祝いの席でも食べられる魚です」

「成る程、石鹸もこの町のおみあげとして、後は何かの記念の贈り物として販売する訳ですな!金持ちの様に毎日使うのではなく、一年に一回でも記念に買ってもらう」


サラダが難しい顔で考え込む。


「ただ、どの様に一般市民に石鹸の存在を知って貰うかが難しいですね」


  世界で一番有名な時計ロレッ○スは実は時計業界では比較的新しいブランドだ。

なぜ世界一有名になったかと言えば、数々の時計の歴史を変える発明もしているが、新聞の宣伝や、有名人に使用してもらい「成功者の時計」のイメージを付ける事に成功したことが大きい。

この時を着ける事がステータスなのだ。


「今度この町にくる勇者様に使って貰うのはどうでしょうか?」

「!!!・・・・・・」


サラダが目を見開き固まってしまう。


「ラムザール様は商売の才能がおありの様ですね!!」



いや、ただ歴史の成功事例を真似ただけですけどね!




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