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ベットを買いに

 トールさんと連盟で石鹸のレシピをギルド本部に申請する事に決まった。

石鹸のレシピは多くの人に作ってもらった方が、結果として儲かると判断して公開にする。

但し、公開する事は当面の間、トールさんと俺だけの秘密とする。

勿論、必要な人や時期をみてレシピ公開の情報は出していくつもりだが、最初は伏せておく。

この情報を知っていると知らないでは、まったく稼げるお金が違ってくるはずだ。


 例えば油やブルースライムの液を買い占めて価格を吊り上げて、転売する事により利鞘を稼いだり。

石鹸の販売網を事前に構築し、レシピ公開と共にいっきに販売したり、商会同士で連合をくんだり幾らでも商機はある。


 トールさんとのレシピの申請の内容が決まったので、シアを呼びに受け付けに行く。

この後、ベットを買いに行きたいのだ。

俺だけなら床でも良いんだけど、流石に女の子をいつまでも床で眠らせておく訳にはいかない。


「シア、仕事は順調?」

「この子は物覚えが良くて、おばちゃん本当に助かってるわ」


プランさんがシアの代わりに答えてくれる。


「今日の仕事はだいたい終わったんだけど、今、新しい事を教えてた所よ」

「そうだ、プランさん石鹸の使い心地どうでしたか?」

「とっても良かったわよ!肌がしっとりして若返ったみたい。また、使ってみたいけどいくらで売るんだい?」


プランさんからも石鹸の評価は好評で、確かにプランさんの肌が透明感が増した気がする。


「逆にプランさんはいくらなら買ってくれますか?」

「おばちゃんの給金じゃねー。頑張って30Gくらいまでかね。もっと安いと嬉しいんだけねー」


プランさんの一日の給金が40Gなので、石鹸一個が一日の働き分の金額になる。

プランさんの給金は一般的な雇われ従業員の給与だ。

簡単な仕事はもっと給金が安い。

庶民が買える金額としてはこの当たりが限界かもしれない。


「有り難うございます。価格設定の参考にさせて貰いますね。シアの教育はもう少し掛かりそうですか?」

「別に教えるのは明日でも良いから、連れて帰ってもいいわ」

「プランさん私、習いたいです!教えて下さい!」


シアが元気良く、プランさんにお願いしている。


「もう、優秀だし、やる気もあって本当に良い子ねー。おばちゃんも頑張って教えるわね。でも今日はここで終わりにしましょう」


シアの仕事の終わりを待って二人でギルドを出て家具屋に向かう。

仕事終わりの鐘がなる少し前なので急がないと、閉まってしまう。

ギルドの前の大通りを下ってマーケットに向かう。

家具屋はマーケットから温泉方面に歩いた所にあった。


店の前には小さな棚や木馬の玩具、木の桶など木工製品全般を扱っている。


店に入ると若くて、背は高く無いががっしりした、格好いい男性が声を掛けてくれる。


「いらっしゃい、今日は何を探してるんだい?」

「ベットが二つ欲しいんですけど」

「お!新婚さんかい?」

「はは、新婚に見えます?」


店員はワイルドだけど爽やかな笑顔を向けてくる。


「し、新婚て・・・」


シアが口をパクパクして俺を見る。


「若い二人がベットを二つ買いに来たらそりゃ、それしかないだろ!」

「はは、ばれちゃいましたかー」

「ちがーーーう!」


シアが真っ赤な顔して叫ぶ。


「ははは、残念ながら違います」


苦笑いで返事を返す。


「そっか、おたく位の年齢でベット二つて聞けば新婚だと思っちまったよ。ははは、すまんな。ベットだけど、中古と新品とどっちにする?中古て言ったって、うちで作った家具を、引き取って立て付けを直してるから、しっかりしてるぜ。新品だと三日もあれば希望の物を作れるぜ」

「早く欲しいので、中古を見せて貰えますか?いいのが無ければ新品を注文しますよ」


 スポーツ選手のような爽やかな店員に連れられ、奥に行くとベッドが積み上げられている。

ベッドが積み上げられてるのなんて初めて見たよ!


「さっきも言ったが、中古て言ったてちゃんと修理して、ヤスリも掛けてるから綺麗なもんだろ!」


 確かに店員さんの言う通り、中古とは思えない綺麗さだ。


「例えば、この大型のベットなら二人で寝れるから、二つ買うより安上がりだぜ」

「それは良いですね!それにしようかな」


 シアをチラ見しながら答える。

シアはからかうと反応が楽しくてついつい、いじってしまう。

案の定、真っ赤な顔でやっぱり・・・むにゃむにゃ、とか呟いている。

これ以上からかうと嫌われそうなのでここで止めておく。


「やっぱり、小さいのを二つ下さい」

「おう!」


 どうやら、店員のお兄さんも冗談で言ったようで笑顔で対応してくれる。


 シアはからかわれたのが分かった様で、鬼の形相で睨みつけてくる。

ヤバイ・・・やり過ぎたかも・・・。


「シア、今日も昨日の食堂に行こうか、昨日とメニューが違っていて飽きないよ。好きなの二個選んで良いよ」

「え!・・・メニュー違うのか・・・へへ、今日は何かな、へへ」


危ない、危ない、シアが食いしん坊キャラで良かったよ。


「今日、ベットを使いたいんで、今から運んで貰えますか?」

「しょうがねなー。その代わり手伝ってくれよ」

「ありがとうございます。勿論、手伝います!」


 良い人で良かった。

ベットの代金400G支払って爽やか店員と一緒に荷車に結びつけて、ギルド宿舎まで押していく。


「お客さん、見かけによらず力あるね。こんなにスイスイ進むなんて凄いよ」


 キングウルフとメイソン達を倒してから力も増えている。

ギルド宿舎までは坂道だが、簡単に押して行くことが出来た。

途中でベットのマットも買って一緒に乗せて買える。


 

 

ベットを運び込んでセットする頃には辺りは真っ暗になっていた。

床で寝ることに慣れてしまっていたがベット最高!

その日は快適に寝ることが出来た。



 次の日いつも通りギルドに出社し、依頼の錬金術をしていると慌ててプランさんが入ってくる。


「マスター、大変だよ!シアちゃん体調が調子悪いわよ!」

「え!」


 

いつも、無口だし睨んで目付きが悪いから体調の変化に気づけなかった。

急いでシアの所に行くと、いつもの鋭い視線から、トロンとした目付きになっている。


「シア、大丈夫か?」

「私は大丈夫。気にしないで」


シアの額に手を当ててみる。


「熱!ぜんぜん、大丈夫じゃないよ!」

「私もさっきから、今日は帰りなさいって言ってるんだけど、仕事するって聞かなくて」

「駄目だよ、シア、家に帰って休もう?」


シアがトロンとした目付きで睨む。


「私は大丈夫、仕事出来るから」

「駄目!今日は仕事禁止!プランさん、シアを家に連れて帰りますね」

「そうしてやって」

「私は仕事出来るって言ってるでしょ!」


シアが頑なに帰ろうとしない。


「シア、これは命令だ、今日は帰って寝なさい」


 本当はお願いで聞いて欲しい。

命令なんてしたくなかった。


シアが下唇を噛みながら頷く。

カウンターからシアが歩いて出てくるが足元がふらついている。


「プランさん、シアをおんぶするんで手伝って下さい」

「はいよ」


嫌がるシアをプランさんと二人で俺の背中に乗せる。

背中に乗せると観念して大人しくなったシアを背負ってギルド宿舎まで運んで寝かせる。


 ギルドに戻ってきた俺は今日のギルド依頼を中断してキュアポーションの製作に取りかかる。

以前にも作ったことがある。


キュアポーションのレシピ

赤ピーマン(生):風邪をひきにくくする。

春海草のネバネバ:病気が早く治る

ハラン草:病気が早く治る

これらは単体で使っても病気を治す効果があり、ポーションが手に入らない時なんかは、民間療法として使用されている。


 前回作った時よりも神経を集中させて作業していく。

錬金術スキルの補正を信じて、あとどの位足すとか、どの位、刻めば最適なのか、慎重に判断していく。

最後の「錬金術」もいつも以上にMPを込めてしまった気がした。

出来上がったキュアポーションは今まで作ったどのポーションよりも淡い光を放っていた。




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