表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/106

王都の石鹸

リーザさんの花柄の刺繍を見てただけなのにシアに頭を叩かれ、変態呼ばわりされた。

納得がいかなかったので抗議してみた。


「シア、俺はリーザさんの服を選んでいただけで、変態呼ばわりは酷いんじゃないか?」

「だって、ずっと胸ばっかり見てたじゃない!」

「違うよ、服の柄を見てただけだよ」

「絶対!うそ!だって鼻のしたこーんなに伸ばしてたじゃい!」


シアが手を目一杯広げて見せる。

そんなに延びたら顎が地面についちゃうから!


「それはシアの主観だろ、刺繍を見てただけだし!」

「口だって半開きで涎垂らしてたじゃない!」

「いや!涎なんて垂らしてないから!」


リーザさんがシアの肩ををポンポン叩く。


「シアちゃん、男の人は皆、女性の胸が好きなのよ。見られたくない人と、見られたい人が居るけど、ラムさんには見られても大丈夫だから。怒ってくれてありがとね」


リーザさんがシアを優しく撫でてシアも嬉しそうだ。


「シアちゃん、こんどラムさんの視線に気づいても、スルーしてあげてね。それが優しさよ」


俺は膝から崩れ落ちて謝っていた。


「すみませんでした・・・刺繍なんて目に入ってませんでした・・・」


女性は男性の視線に気付いてるから、あんまり露骨に見るのは止めようね。


リーザさんは緑のシャツとピンクのカットソーと白いロングスカートを大人買いしていた。

締めて600G。

リーザさんの稼ぎが一日60G~100G程なので結構な金額だ。



 次の日の昼に石鹸の使用感をまとめる為に集まってもらう。


「リーザさん、王都の石鹸と、うちの石鹸を使い比べてみてどうでしたか?」

「そうですね、どっちも凄く良かったんですけど、うちの石鹸の方が私は好きかな。髪も肌もなんかいつもよりさっぱり、しっとりしてます」

「王都の石鹸と何が違いました?」

「王都の石鹸も凄く良いんですけど、しっとり感がうちの石鹸の方が上な気がします。でも香りは王都の石鹸の方がいい気がします」


次はシアに聞いてみる。


「シアはどうだった?」

「私もリーザさんとほとんど同じ意見で、このギルドの石鹸の方が好き。髪がまとまるんだけど、サラサラしてて凄く良い。後、肌も軽いんだけどしっとりしてて、凄く良い」


確かにシアの髪と肌はここ数日でみるみる改善してきている。

今までの環境が酷すぎたので、普通の生活で普通の肌質、髪質に戻って来てると言える。


「トールさんはどうでした?」

「僕は王都の方がさっぱりして、好きかな。うちの石鹸も良いんだけど王都の方がさっぱり、スッキリするんだよね」

「実は俺も王都の方が、スッキリすると思ったんですよ」


女性はうちの石鹸、男性は王都の石鹸ときっぱり好みが別れた。


「もう少し、使用者を増やして感想を聞いていきますが、うちの石鹸のターゲット層は女性になりそうですね」


二つの石鹸の違いをまとめるとこんな感じ。

うちの石鹸と王都の石鹸の比較


うちの石鹸

泡立ちが良い、しっとりする、香り悪い

王都の石鹸

泡立ちは悪い、さっぱりする、香り普通


自分の石鹸の強みだけでなく、弱味も把握しておくことは大切だ。


 うちのギルドの石鹸は香りが良くない。

香りを良くする工夫が必要だな。

使ってる油が廃油なのが駄目なんじゃないかと思っている。

最初に綺麗なギルドの高級油では作ったら、上手く石鹸に成らなかった。

一度、火に通すか、何かを揚げることにより油の性質が変化し、ブルースライムの液と反応していると考えている。

例えば、花を揚げて油事態に花の香りを移して、更に花の香りを足したら、良い匂いに成るんじゃないかと考えている。


 早速、シアと一緒に午後、ギルドにある鈴花と鈴花の液を使って石鹸の香り付けにチャレンジしてみる。


「じゃあ、石鹸に香り付けしたいから、さっき説明した通り鈴花を素揚げしてみて」

「分かった、やってみる」


しばらくすると、ジュワーと音が聞こえてくる。

鈴花を揚げながらシアがボソッと呟く。


「・・・これって食べれるかな?」

「シア、いつから食いしん坊キャラに変えたんだ?」

「ち・違うわよ!・・・そのちょっと美味しそうだなと・・・」


シア君、それを食いしん坊キャラと言うんだよ。


「確かに揚げ物の上がる音は食欲誘うよね。実は俺もちょっと味には興味があったんだ。ちょっと味見してみよぜ」

「そうね、あんたがそう言うならちょっと食べてみましょ」


二人で素揚げした鈴花に塩を振って食べてみる。


「ちょっと苦味があるけど、まーそこが良いかもね」

「確かに、不味くはないわね」


結論としては、あえてこれを食べなくてもいいな。

素揚げした鈴花は二人で完食した。


シアが鈴花を揚げた油を、冷ました後にブルースライムの液を加えてかき混ぜる。

最後に俺が錬金術を掛けて出来上がり。

まだ、ドロッとした石鹸に鈴花の滴を加えて作業を終了する。

固まって使用するのが楽しみだな。


 今日の夕食はリカの食堂に食べに行く。

今日の大皿のメニューは肉のトマト煮、カツレツ、魚のソテー、色とりどり野菜の炒め物、野菜のシチュー

俺は肉のトマト煮と野菜の炒め物を選んだ。


「シアはどれにする?二種類選らびな」

「・・・二個も選んで良いの?」


シアは料理を選んでるだけなのに楽しそうだ。

ずいぶん時間を掛けて二種類選ぶ。


「私は肉のカツレツと野菜のシチューにする」


いつもはカウンター席だけど、今日は二人なのでテーブル席に座る。

すぐにリカが飲み物の注文を聞きに来てくれる。


「こんばんはー。今日は飲み物何にする?」

「こんばんは、いつものでお願い」

「めずらしいね、そっちのお連れの方は彼女さん?」

「新しい、ギルド従業員のシアだよ」

「シアちゃんは飲み物何にする?」


シアと目線が合ったので好きなの頼みなって目で伝える。


「えっと・・・」

「今の時期はオレンジのお酒割りがおすすめだよ」

「じゃあ、それお願いします」


ワインがくる前に待ちきれずに食事に手を付け始める。

トマト煮の中には大きな肉が入っていて、噛みごたえある。

あれ?これ肉じゃないな?

味は肉ぽいけど噛めば噛むほど、旨味が出てくる。


「ねえ、ご主人様・・・」

「ん!?」


シア今なんて言ったの!?

今!今ご主人様て呼んだよね!


「シア・・・今、ご主人様て・・・」

「・・・」

「もう一回呼んでみて」

「・・・」


あれ!?願望から幻聴が聞こえたのか?

いつか、シアにメイド服着せて言わせたいと思ってたからか!?


次は野菜の炒め物を食べる。

色々な種類のカラフルな野菜が入っていて、目でも楽しめる。

それに食感も違っていて、一口食べる毎に新しい発見があって楽しい。


「はい、お酒お待たせー」

「リカ、ありがとう」

「シアはオレンジのお酒ね」


シアが早速一口オレンジのお酒を舐めるくらい、ちょっとだけ飲む。


「美味しい・・・」

「でしょ!私のお勧めよ!この時期はオレンジがいっぱい採れるから安いし美味しいし、私は大好き」


シアがもう一度コップに口を付けて今度はゴックッと喉を鳴らす。


「私も好きかも」

「香りも良くない?爽やかでこの町にぴったりだと私は思うの。それじゃ、ゆくり食べていってね」


リアはオレンジの様な爽やかな笑顔で、厨房に帰っていく。

シアがカツレツを口に運ぶ度に目をキュッと閉じて噛み締めて食べている。

本当に美味しそうに食べるなー。

ワインを楽しみつつ食事をしていると、シアの視線に気づく。


「ここの料理美味しいよね」

「うん・・・凄く美味しくてビックリした」

「カツレツも美味しそうだね」

「うん・・・」


あれ?!なんか微妙な反応だな?

なんだ?


「ご、ご・・・ご」

「ん?どうしたの?怒ったりしないし、出来るか分からないけど、言ってごらん?」

「あの、ご・・・・・・あーーー!もう!何でもない!」


怒るどころか逆に怒られたよ!

遠くからリカに女の子、怒らせるなよーって笑われた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ