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リーザ誘拐

リーザさんが連れ去られたかもしれない。

以前試した、獲物探知スキルでリーザさんを思い浮かべながら使用する。

何となく向こうの方にリーザさんの気配を感じる。


「トールさん!獲物探知スキルで、あっちの方にリーザさんがいる気がします」

「狩人はそんなことも分かるのかい!!!」


リーザさんを感じる方に向かって進んで行く。

港とは反対の町の上の方に進んで行く。

町の上の方が高級住宅地になっていて、下の港に近い方が家の値段も安くなっていく。

一軒、一軒が大きな住宅が立ち並ぶ辺りにやってくる。


「トールさん、だいぶ近いです」

「確かこの辺りにはメイソンの家があるって聞いたことがある」

「トールさん、たぶんあの家です。相手に見つからないように灯りを消しましょう」


俺が指差す先には庭と合わせて200坪くらいの大きな家がある。

トールさんの持っているランタンの火を消して、遠くから観察する。

門の前には人はいないが、門から進んだ家の扉の前に男二人が椅子に座っている。

暗くてよく見えないが俺をボコボコにした冒険者のうちの二人に見える。



「トールさんあの家にリーザさん居るので間違いなさそうです。あそこに見える二人、メイソンの取り巻きですよね」

「じゃあ、すぐに助けに行こう!!」

「お、落ちついて、トールさん、冒険者相手に正面から乗り込んだら危険ですよ!」

「そうかも知れないけど!リーザが危険な目にあってるかも知れないのに、グズグズしてられないよ!」


トールさんの気持ちは分かる。

俺だって直ぐに助けに行きたいけど、一昨日ボコられて相手の強さは分かっている。

さすが冒険者だけあって、正面から行って勝てる相手じゃない。


「トールさん、警察呼んで来てください」

「警察ってなんだい?」

「あの悪い奴を捕まえる人ですよ」

「ああ!衛兵か!」

「俺はこのまま、見張ってますからお願いします!」

「直ぐに呼んでくるから!」


トールさんは物凄い勢いで走って行く。

さて、俺は少しでも相手の情報を集めたり、リーザさんの無事を確認したい。

待ち伏せスキルを使って、気配を消して少しづつ近づいて行く。

門の脇まで来て隠れながら覗くと、間違いなくあの冒険者たちだ。

足元に明かりを置いて、一杯やっているようだ。

スリープアローを放ってやりたいが、スリープアローは光ってしまうので、出来れば相手が後ろを向いている時に背後から打ちたい。

近くにあった石を庭の端に投げる。

石が落ちて少し音が出て注意を引かせる。

男の一人が気づいた様で、そちらに首だけ向けるがあまり気にしていない。


「ん?今あっちで音がしなかったか?」

「あ?気のせいだろ」

「そうか。それでなその女ときたらよ、、、」


おいおい!音がした方に調べに行けよ!

しょうがないので、もう一回石を投げる、今度はもう少し大きい物音がした。


「ん!やっぱりそこに何かいるな!」

「ああ、ネズミか猫だとは思うがな一応調べてみるか」

二人が庭の隅の草むらを調べる為、背を向けた。


小声で「スリープアロー!」


バチ!


「あれ?なんか急に酔いが回ってきた、、、」

「おいおい、まだこれからだろうに」


小声で「スリープアロー!」


二人ともその場に崩れ落ちて寝始める。

結構大きな音がしたが家の中からの変化は特にない。

二人が寝ているのを確認して扉に近づく。

扉には鍵が掛かっていたのでバンバン叩いてやる。


「なんだ、なんだ!うるさいぞ!今開けるから」


男の声が近いづいてくる。

念の為に扉の前にトラップのスキルを三回発動して仕掛けて置く。


「おい、どうした?」

男が扉越しに外に声をかけるが、もちろん誰も答えない。

声を掛けたが誰も答えないので慌てて、中に戻って行く。

少しすると、二つの気配が近づいてくる。

もう一人が仲間を呼びに行ったんだろう。

二人が扉越しに居るのが分かる。

扉の鍵が開くと同時に二人の冒険者が同時に飛び出してくる。

一人が軽装で短剣を装備していて、もう一人は剣に盾を装備していている。

剣士風の男は盾を全面に押し出してガードしているがトラップのスキルを踏んで、二人とも倒れ込む。


「スリープアロー!」

「スリープアロー!」


一人には命中しそのまま動かなくなるが、もう一人には盾でガードされてしまう。


「てめえは!リーザのとこのガキか!こんなことしやがって!があああ!」


喋りながら立ち上がり三つ目のトラップを踏んで再度、倒れ込む。

今回もしっかり盾の中に体を隠して、スリープアローが当たらない様にしている。

俺は新しく買った短剣を抜いて構える。

相手は片手剣に盾を装備している。

鎧は外していたようで、体には服以外装備していない。

相手が起き上がった瞬間、一気に間合いを詰める。

短剣と剣だともちろん剣の方が間合いは長い。

逆に短剣の間合いに入ってしまえば、相手の攻撃力は半減する。

相手が体勢を崩していたこともあり、簡単に間合いを詰め短剣で相手の腹を刺す。


「がぁ」


相手から苦痛の声が漏れる。

相手はなんとか距離を取ろうと下がろうとするが、そのままついて行き、短剣の間合いをキープしながら更に攻撃していく。


「がぁ、ぐ、なんだこの前とは別人じゃないか!実力を隠していたのか!」


俺は答えず、さらに攻撃を続ける。


「頼む、助けてくれ!」

「なら武器を捨てて、地面に伏せろ!」

「分かった!捨てるから」


相手の冒険者は全身に切り傷、刺し傷があり服は血まみれだ。

相手が地面に伏せたのを確認し、スリープアローで無力化する。

死なれたら嫌なので、自分用に持ってきたハイポーションを相手にかける。

傷口を確認すると全部塞がっていた。

恐るべきハイポーション!!

これで取り巻き冒険者四人を倒したので、残るのはメイソンだけだ。

リーザさんの気配を頼りに家の中を進んで行く。

獲物探知スキルが、この扉の向こうにリーザさんが居ることを告げている。

ナイフを構えて扉を開けた瞬間、首筋に感じるピリピリが危険を知らせる。

ド、ゴーン!!!

爆音と熱風で扉と共に吹き飛ばされる。

危険探知スキルが反応した瞬間に、本能に従い横に飛び退いていなければ、大ケガを負っていた。

吹き飛ばされて扉の無くなった部屋の中を見ると、メイソンが憎々しげにこちらを睨みつけている。


「私の魔法を受けて生きているなんて運がいいですねー。でも幸運は二度は起きないですよ!私は錬金術の他にも炎魔法スキルを神から授かった選ばれた人間なんです!貴方達下民とは違うんですよ!」


その横に上着が破かれ、手で胸を隠しているリーザさんが地面に座っている。


「リーザさん!!」

「ラムさん、、、」


泣きながら弱々しい声で俺の名前を呼ぶ。


「お前よくもリーザさんを!!」

「忌々しのはこちらですよ!これから楽しもうと思っていたところを邪魔されて、貴方には家に押し入った強盗と言うことで死んでもらいますよ」


メイソンが呪文の詠唱を始めるのを見てナイフを構えメイソンに突撃する。


「ファイアボール!」


メイソンが勝ちを確信した顔で魔法を唱える。

俺は横に受け身を取りながら攻撃をかわす。

メイソンの顔が余裕の表情からいっきに、驚愕の顔に変わる。

受け身をとった勢いで直ぐに立ち上がり、ナイフをメイソンの腹に突き立てる。


「ぐ、、、、、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


メイソンは自分の腹にナイフが刺さっているのを、見たとたん絶叫する。

そのままナイフを抜くと大量の出血が始まる。


「死ぬ!死ぬ!死ぬ!ポーション、ポーション!」


メイソンはポーションを探しに行こうと背中を向けたので思いきり蹴飛ばして、吹き飛ばしてやる。

ナイフスキルのお陰なのか、思いの他、盛大に吹っ飛んで壁にぶつかった。


「スリープアロー!」


距離が出来たので、スキルでメイソンを眠らせる。

メイソンが動かなくなったのを確認しリーザさんに駆け寄る。


「リーザさん!!」

「ラム君ラム君ごわがったよーーー」


俺の胸に飛び込んで泣きじゃくるリーザさんを、強く抱きしめて無事なことに安堵する。


「リーザさん、リーザさん、リーザさん!」

「ラム君~~~うぇぇぇぇぇぇん」


二人で興奮し強く抱き締め合う。

リーザさんが無事でよかった。

しばらくして落ち着いてきて、リーザさんの怪我を確認する。


「リーザさん怪我ないですか?大丈夫ですか?」

「うん、怪我してないよ、でも怖くて怖くて、、、、うぇぇぇぇぇん」

「リーザさん、ごめんなさい、俺が馬鹿だからリーザさんに怖い思いさせて。すみません」

「なんでラムぐんがあやまるの~?」

「俺が側にいて警戒してれば、リーザさんに怖い思いさせないですんだかも知れないのに」

「ラムぐん~~~うぇぇぇぇぇぇん」


さらに抱きついてくるリーザさん。

少しでも安心させたくて、強く抱きしめてあげる。


「リーザさん大丈夫ですよ、もうメイソンは倒しましたから。他の冒険者四人も倒しました」

「うん、、、、」


リーザさんが落ち着ける様に背中を優しく擦ってあげる。

しばらくすると落ち着いてきたようで、呼吸も穏やかになってくる。

リーザさんの服が破かれ、白い肌が見えてしまっていたので俺の服を取り合えず着てもらう。

服を着てある程度落ち着いてきたリーザさん。


「ラム君ありがとう、すごく怖くて」


リーザさんが再度俺に抱きついてくる。


「怖くて、、、もう少しだけ」


ギュッと抱き寄せてしまう。

弱った女性に頼られて、クッラとこない男はいないだろ!

これは反則ですよ、リーザさん、、、


「薬草採りに行ってくれて、ハイポーションも作ってくれて、今日は助けに来てくれて、、、ありがとう、、、」


潤んだ瞳で俺を見上げてくる。

か!可愛い!!なにこの感じ!

外の方が騒がしくなってきて、二人の時間が終わる。

トールさんが衛兵を呼んできてくれたようだ。

トールさんが叫びながら部屋に飛び込んでくる。


「リーザ!」

「トール!」


トールさんが直ぐにリーザさんに駆け寄る。


「リーザ、怪我は無いか!」

「うん」


抱きしめ合う二人。

すごくお似合いに見える。

やっぱりリーザさんの王子様はトールさんだな、、、、。

はーーーあ、なんかどっと疲れが出てきた。



その後も大変だった。

メイソン、冒険者四人は勿論衛兵に連れて行かれたが、俺達三人も衛兵の詰め所に連れて行かれて、長々と事の経緯を聞かれた。

さらになぜか俺だけ詰め所で一晩泊まらせられ、翌日ベルクド騎士団にも同じ話をしなくてはいけなかった。

結局、解放されたのは翌日の夕方だった。

なんで被害者の俺がこんなに拘束されるんだよ!


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