メイソンが来る2
俺のチート能力により、納品の目処がたって、各自ポーション作りに励んでいる。
そこにあの嫌な奴がやってくる。
カランカランカラン
「こんにちは、ヒヒヒ」
扉の開閉の音と声を聞いて、みんなギルドのロビーに集まって来る。
メイソンが四人の冒険者を連れて、やって来る。
「何しに、いらしたんですか!」
リーザさんが怒った顔で対応する。
「そんな怖い顔をしないで下さいよ、何か私がお役に立てるんじゃないかと思いましてね」
「貴方に頼る事なんて有りません!帰ってください!」
リーザさんが語尾を強めて対応する。
「良いんですかー。薬草を融通することも、ハイポーション、マジックポーションを融通することも出来るんですよ。ヒヒヒ」
嫌らしい奴だ、自分で嫌がらせしておいて、これ見よがしに話を持って来るなんて。
ただ、どちらも解決済みなのを知らないようだが。
リーザさんも怖い顔でメイソンを睨んでいる。
ただ、そんな話を相手から振ってくるからには、何かしら目的がありそうだ。
「ちなみに薬草とハイポーションを譲って貰うにはどうすればいいんですか?」
「ひひひ、簡単な事ですよ、先代ギルド長の残したレシピを譲って頂ければ、薬草もハイポーションをお譲りしましょう」
先代ギルド長のレシピを狙っているのか。
聞く限りとても貴重な物らしい。
「以前にも言いましたけど、そんな物は無いんです!」
「ヒヒヒ、そうですか、そうですか。強情ですねー。あまり、強情だと後で後悔することになりますよ。そうだ、ラムザールさんでしたか、どうです我がギルドに来ませんか?」
キモいなこいつ。
ニヤニヤ、人を常にバカにしたような態度がムカつく。
「この前も断りましたが、このギルドを離れる気はありません」
「そうですか、気が変わったらいつでもどうぞ」
「おい!メイソンさんが優しく言ってうちに、メイソンさんの所に来た方がいいぞ」
取り巻きの冒険者がこちらを威圧してくる。
「後二日あります、いつでも相談に来てくださいね。納品できなかったら、このギルドが無くなるだけじゃ、すまないですよ。よく考える事だ!」
メイソン達はそれを言うと帰って行った。
今のメイソンの話の中で二つ程、疑問が出てきた。
一、先代ギルド長のレシピとは?
二、納品が出来なかった場合、どうなるのか。
まだ、怒っているリーザさんに話かける。
「リーザさん、さっきメイソンが言っていた先代ギルド長のレシピって何ですか?」
「私も本当にどれの事を言っているのか、わからなくて。お祖父ちゃんは凄い錬金術師だったから、オリジナルのレシピが有っても不思議じゃないんだけど、見つからないのよね」
リーザさんが隠しているのではなく、本当に存在事態を知らないのか。
それじゃあ、出せと言われても出せないし、持っていてもあんな奴に渡したくはない。
「今さら何ですが、納品出来なかった場合どうなんるんですか?」
リーザさんが言い難そうにしていると、代わりにトールさんが答えてくれる。
「もし、期日までに納品出来なかった場合、このギルドの信用問題に関わるから、今年のギルド更新が認められない場合がある。特に相手が騎士団だから、その可能性は高い。それに、納品出来ないと今年のギルド更新費用も捻出できないしね」
そこまでは何となく以前の話からも理解している。
「納品出来ない場合、騎士団はうちのギルド以外から、ポーションを調達する訳なんだけど、その掛かった費用がうちのギルドに請求される。この町だとメイソンの所から買うことになるけど、メイソンの事だから何だかんだと、高額な金額を請求するんじゃないかな」
「確かにとんでもない金額を請求してきそうですね」
メイソンは先代ギルド長のレシピが欲しい。
納品を手伝って、替わりにレシピを手に入れてもいいし、納品が出来なくて、多額の借金を抱えた段階で、借金と引き換えにレシピを手に入れる事も出来る。
ただメイソンの企みは、あくまでこのギルドが、自力でポーションを全納、出来ない事を前提としている。
「ギルドにもある程度、蓄えが有るけどメイソンの事だ、それ以上の金額を請求してくるだろうね」
「払えない場合はどうなるんですか?」
トールさんが少し黙った後、真剣な面持ちで話始める。
「借金が払えない場合は、リーザが借金奴隷にされてしまう。もちろんそんな事には絶対に、僕がさせないけどね」
それは大変だ。
リーザさんがここ最近、顔面蒼白になり思い詰めて泣き出した理由が分かった。
この仕事が失敗すれば、自分が奴隷になると思えばリーザさんの態度も納得がいくし、トールさんが命を賭けて薬草採取に行った事も頷ける。
「俺も頑張ります!絶対期日までに納品させましょう!」
「はい!お願いします!」
メイソン襲来で嫌な気持ちにさせられたが、一気にみんなの気持ちが一つになっていく。
みんなのテンションが高いまま各自ポーション作りを再開する。
途中昼飯を食べたが、それ以外は錬金術作業をひたすら続ける。
さすがに、夕方には初めてMPが尽きてしまった。
ただ目標の個数はほぼ出来ている。
さっきみんなの進捗も効いたので、後で足りなさそうな分をフォローして作ろう。
MPが尽きたので、食堂に夕飯を食べに行く。
MP回復の目的もあるので今日はゆっくりする。
リカにもお酒を勧めて、楽しくおしゃべりしながら、食事を楽しむ。
リカと楽しく過ごした後、食堂を出る。
一回宿舎に戻って、仮眠をとるか、ギルドで仮眠を取るかー。
悩みながらギルドに向かって、ほろ酔いで歩いてい行く。
前方にメイソンの取り巻きの冒険者二人が見える。
ほろ酔いで気づかなかったが、スキルの危険探知が反応して首筋がピリピリしている。
気付くと後ろからも二人の冒険者が近づいてきて、四人に囲まれてしまった。
楽しい話をする雰囲気には全く見えない。
「おい、こっちに来い」
強面の冒険者四人に囲まれ、細い路地に連れていかれる。
ヤバイ!めっちゃ怖い。
今日は必要が無いので、短剣は持って来ていない。
短剣を持たないと、短剣スキルが発動しない為、戦う事が出来ない。
それに持って来ていても四対一では、短剣スキルがあっても勝てるかどうか。
必死に対応を考える。
トラップのスキルは相手の目の前ではさすがに掛からないだろうし、スリープアローも囲まれた状態からでは、モーションが大きすぎて発動させる前にやられる。
後、残っているスキルは毒化。
詰んだ・・・
「おい、ラムとか言ったな。メイソンさんのギルドに来る気にはなったか?」
「いやー。どうでしょうかー?」
ドス
いきなり腹を殴られる。
おいおい、食べたばかりで戻したらどうすんだ。
「吐いちゃいそうなんで、お腹はちょっと」
「こいつメイソンさんだけじゃなく、俺たちもなめてんな」
その後、二人は見張り、残りの二人にボコボコに殴られる。
ナイフを持っていない俺なんて雑魚だ。
しばらくして、攻撃が終わる。
ドスの効いた声で話しかけられる。
「おい、明日メイソンさんに謝りに行け」
最後に踏まれて、唾を吐かれる。
男達が去って行く気配で、うっすら目を開ける。
男達が談笑して去って行く、後ろ姿が見えた。
身体中が痛くて、動けなかった。
念のために携帯していたポーションを飲む。
体がほわっと温かくなり痛みが引いて行く。
完全に痛みが取れなかったので、ギルドにポーションをとりに行こうと思ったが、先に自分の部屋で汚れた服を着替える
この姿をリーザさんが見たら、心配してくれるだろう。
だけど、リーザさんにこれ以上負担を掛けたくない。
着替えが、終わって部屋でボーとしていると、さっきの事が思い出される。
恐怖よりも、羞恥と怒りがこみ上げてくる。
まず敗因は酔っていたこと、油断して危険探知スキルが鈍くなっていて敵の接近に気づけなかった。
レンジャーは待ち伏せではキングウルフを簡単に倒せるが、接近されてしまうと、トラップもスリープアローも全く役にたたない。
後、武器を持っていなかったこと。
ここは異世界だ。
最低限の自衛出来る武器は、持っているべきだった。
あいつらとメイソンにはいつか、やり返してやりたい。
そんな事考えていると時間がたってMPが回復した。
ギルドに戻り怒りに任せて、深夜ポーション作りを再開する。
「ラムさんラムさん」
揺り起こされると目の下に隈を作った、リーザさんの天使の笑顔がある。
「おはようございます」
「起こしてごめんなさい。でも期日が迫っているから、、、どのくらいできましたか?」
俺はVサインで返す。
「全部出来ました!」
リーザさんが驚きの表情から満面の笑みに変わり、ガシッと抱きつかれる。
「ラムさんありがとうございます。ラムさんありがとう、、、うえーーーん。良かったよー。」
リーザさんはそのまま俺の胸で泣きは始める。
凄いプレッシャーの中でずっと戦っていたんだろう。
トールさんの前で泣くならまだしも、俺の前で泣くなんて、大変だったんだな。
でも男って女の涙に弱いんだよなー。
トールさんとリーザさんが付き合ってそうなのを察して、せっかく諦めようと思ったのに、こんなことされたら、心が揺らいじゃうよう。
泣き終わったリーザさんは、元気にポーションを納品しに行く。
朝方まで作り続けて、さっき寝落ちてすぐにリーザさんに起こされたので眠い。
もうちょっと寝よう。




