一人でモンスター狩り
昨日はブルースライムの素材採取に始まり、石鹸作りと疲れた。
今日は二度寝してしまった。
朝食を食べた後、ギルドの裏で短剣の練習をする。
短剣スキルを持っていても、流石に最初から使いこなせる訳ではなく、こうして短剣を振る事により徐々に使いこなせるようになる。
ただスキルがあるお陰で、習わなくてもコンビネーションが思い付くし、一回振ると百回振ったくらい上達する。
どんどん上達するので楽しくてしょうがない。
短剣の練習を終えて今日もブルースライム狩りに出かける。
素材集めもあるが、どちらかと言えばモンスターを倒す快感にはまってしまった方が大きい。
トールさんとリーザさんに挨拶した後、昨日の洞窟に向かう。
昨日同様に洞窟の中に、ブルースライムが居るのを感じる。
この獲物探知スキルは、対象を知っているとその対象だけを探す事が出来る。
ちなみにリーザさんに使ってみたらリーザさんの居る方角が分かったので、いつでもストーキングが出来る。
そんなことは、もちろんしないが。
ランタンを持って洞窟を進んでいく。
昨日、倒したのに同じ場所にブルースライムが居る。
同じ場所にポップするのだろうか?
昨日と同じ要領でスライムを倒して素材を採取していく。
昨日はミッツさんがいて試せなかったが、トラップの複数使用や効果時間の検証をしてみる。
どうやらトラップは最大三回まで連続使用出来る。
相手がトラップで動けなくなるのは三秒ほど。
スライムの様にバカだと三回連続で引っ掛かって、最大九秒足止めすることが出来た。
次にスリープアローを試してみる。
最初にスリープアローと唱えて見たが光が霧散してしまった。
どうやら手で弓を引く格好をしないと上手く発動しないようだ。
スライムにスリープアローを使ってみたが眠らなかった。
「研究結果。スライムは眠らない!」
あとひとつ、毒餌スキルがある。
このスキルは対象物を毒化させる事が出来る。
手元に餌になる物が無いので、洞窟内で餌になる物を探す。
この洞窟にはブルースライムの他にケイブバットがいる。
ケイブバットは小さなコウモリの事らしい。
ケイブバットを獲物探知スキルで探す。
ちょっと奥に十匹居るのが判る。
短剣を構えて進んで行く。
ケイブバットに見つかる前に止まり、その位置からスリープアローを放つ。
「スリープアロー!スリープアロー!スリープアロー!」
続けて見えないケイブバットに打っていく。
パサ、パサ、パサっと軽い落ちる音が聞こえた後、キーキー甲高い声でコウモリがこちらに向かってくる。
短剣を構えて待つ。
どうやら牙で噛みつき攻撃をするようだ。
小さいが鋭い牙が三方向から迫ってくる。
一匹を手で払いのけ一匹を斬って、返す刃でもう一匹を斬る。
さらに別の二匹が入れ違いに来る。
一旦背を低くしてかわして、立ち上がり際に一匹斬る。
手で払ったケイブバットが体勢を立て直して、残りの二匹と共に噛みつきくる。
数が減ったケイブバットは脅威はなく、なんなく残りの三匹も地面に斬り落とした。
「短剣スキルすごいな!」
いけるとは思ったけど、ここまで瞬殺だとは
こんなに簡単にモンスターを倒せて、爽快感でめちゃくちゃ楽しい。
スリープアローで眠らせた三匹うち二匹は殺し。一匹だけ縛っておく。
スリープアローの効果時間を測定するためだ。
ケイブバットの死骸に毒化のスキルをかける。
「毒化!」
ケイブバットの死骸はぼんやりと光、直ぐに光が収まる。
見た目に変化は感じない。
ブルースライムを探して、ブルースライムの前に投げてみる。
ゆっくりとした動きで、ケイブバットの死骸に覆い被さる。
そのまま動かなくなる。
徐々にケイブバットが溶かされて行く。
ある程度溶けると、今度はスライムが溶けていく。
「おお!」
どうやら毒化は成功のようだ。
毒化は使用するMPで毒の効果が変わる。
使ったMPの量でどの程度効果が変わるのかも今度試してみたい。
午前中はスライム狩りをして昼にはギルドに戻り、屋台で昼食を取る。
さて午後は石鹸作りをするか、防具でも買いに行くかで、迷いながらギルドに戻ると、ギルドの待ち合い室に全ギルド員が集合している。
リーザさん、トールさん、ノットさん、錬金術室にいつも籠って姿を全くみないレントさん、受付のプランさんだ。
「あ!ラムさん!ちょうど良かった今から皆さんに話したい事が有ったんです」
リーザさんが力強い笑顔で手招きしている。
みんながリーザさんに注目するのを待ってから
「重大発表があります!実はなんと!騎士団の大口注文が当ギルドに決まりました!」
パチパチパチパチ
リーザさん一人拍手している。
「はい!皆も拍手ー」
リーザさんに言われて拍手する。
パチパチパチパチパチパチ
皆の拍手を聞いて満足気に話を始める。
「近々、ベルクド騎士団のゴブリン討伐があります。それに伴い、ポーションの大量受注をうけました。最近ギルドメンバーが減って、当ギルドは資金繰りで危機になっていましたが、今回の大口受注により解消されます!」
確かにこのギルド、人が少ないとは思っていたが、そんな危機とは知らなかった。
今回の大口受注で解決するなら良かった。
自分が勤め始めた会社が直ぐに倒産したらショックだよね。
「今回受けたのは、ポーション千個、ハイポーション三十個、マジックポーション三十個になります。期日は五日間です。在庫があるんので、実際に五日間で作らなくちゃいけないのが、ポーション四百個、ハイポーション10個、マジックポーション10個になります」
「リーザ、それは厳しい数だね」
「トール、安心して。作戦は考えてあるわ!」
腰に手を当てて自信満々に胸を反らす。
「ちなみにその作戦を教えてくれるかい?」
「夜中に起きてポーションを作るのよ!」
「ブラック企業だ!!」
「え!?ブラック?」
思わず叫んでしまった。
リーザさんがなに?て顔をしているが、その顔もかわいい。
美人は特だな。
お世話になっているリーザさん、トールさんが困っているなら、頑張ろうって気にもなる。
「分担ですが、私、トール、ラムさん、エルクさんでポーション四百個を担当します。ノットさんは残りのハイポーション、マジックポーションをお願いします」
「老体に夜間作業は辛いが、先代ギルド長の為に頑張ろうか。ははは」
「ノットさん、ありがとうございます。プランさん、ポーションの材料の手配をお願いします」
「はいよ、直ぐに注文入れとくわね」
受付のおばちゃん、プランさんはグッと力こぶを作る。
「それじゃあ、私達は早速ポーション作りに入りましょう!」
「「「おーー!!!」」」
各自、自室にてポーション製作を開始する。
今回は質より量になる。
俺が上ポーションを一個作るのに10分程かかるが、薬草の擂り潰し、魔石の削り、計量、かき混ぜを時間短縮でやれば5分ほどで一個、作る事が出来る。
もちろん質は落ちてしまい、上ポーションでなく普通のポーションになってしまうが、今回はそれで問題ない。
俺の担当は百個。一日二十個で良い。
俺のMP量なら、休憩無しでいっきに作れそうだ。
夕方まで作り続け、部屋に有ったポーションの材料を使い果たし、三十個ほどポーションを作った。
今日は流石に受け付けにリーザさんは居らず、プランさんしか座っていない。
いつも無意識にリーザさんに納品していて、プランさんが目に入っていなかった。
取り合えず今日はハイポーションを一個だけ納品する。
「あらー、今日はリーザじゃなくて、おばさんでいいのかしらー」
プランさんがニヤニヤ見てくる。
苦笑いを返すしか出来ない・・・
「やっぱり、おばさんより若い子が良いわよねー」
「そんなことはないです」
「あらーそうなの?これからは私がラムさんの担当になろうかしらー」
「あ、はい・・・」
完全にからかわれてるな。
どこの世界もおばちゃん強いわ。
「今日のハイポーション代、100Gね。ラムさん、ハイポーション作れたのね。新人さんかと思ってたわよ。ノットさんには一個分作らなくて良いって伝えておくわ」
「ありがとうございます。後、俺の部屋のポーションの材料が無くなったので補充してください」
「あらー。もう無くなったの?頑張るわねー。明日の朝には補充しとくわね」
プランさんにその後もからかわれたが、何とか話をそらせてギルドを出ることが出来た。
いつもの食堂に行く。
いつも通り、入り口脇に大皿におかずが積まれている。
今日はグラタンと真っ赤なスープとミートボールにして、パンを頼む。
グラタンの中はジャガイモが入っていてトマトベースの味付けになっていて旨い。
赤いスープは見た目通り辛い。
中にグニグニした肉が入っていてこれも良い味出してる。
ミートボールは肉ではなく、魚のすり身の中にシャキシャキした野菜が入っていた。
肉でなくてちょっと残念だったが旨いから良い。
「こんばんは!ラム、今日の飲み物は?」
「こんばんはリカ。いつものお願い」
「はーい」
直ぐにワインと水を持って来てくれる。
「はい、お待たせー」
「ありがとう。ここのご飯はいつも美味しいね」
「ありがとう。父さんに伝えておくねー。この前の油、役にたった?」
「すごく助かったよ!研究も順調に進んでるよ」
「そっか、そっか、それは良かったね」
「油ってまた売ってもらえる?」
「んー、いいけどまだ溜まってないよ。すぐ欲しいなら油屋に行ったら買えるよ」
「へー。使った油なんて売ってるんだ」
「汚くなった油を濾して灯りに出来るから、料理屋で大量に出た油を買い取って、綺麗にしてから売ってるんだよ」
明日油屋に行ってみるかなー。
今ごろ皆は仕事してるのかな?
俺は今日の分は終わったし、材料が無いのでギルドに戻ってもやることが無いので、家に帰ってグッスリ眠らせてもらった。