異世界転生、錬金術で商人するぜ!
転生して三日目
今日も晴れて青い空が広がり、朝方の涼しい海風が頬を撫でる。
都会とは違った閉塞間の無い何処までも広がる空に、ゆったりと流れる時間に異世界転生を噛み締め、笑みがこぼれてしまう。
大きく伸びをしながら宿舎を出て、昨日と同様に錬金ギルドに向かって歩いて行く。
行くと言っても錬金ギルドの路地を一本入った裏にある宿舎から、ギルドに行くだけなので直ぐに着く。
歩いていると甘い香りが鼻をくすぐる、ふらふらと匂いの方に足を向ける。
「おはようございます。一杯貰えますか?」
匂いの出所は錬金術ギルドのある、通りに出ている朝御飯の屋台である。
屋台ではおばちゃんが湯気の出ている粥とパンを売っている。
屋台の前の椅子に座り温かいお粥を口に運ぶ。
ほんのり甘いミルクのスープに穀物が入っていて空腹のお腹に染み渡っていく。
値段はお粥とパン合わせて
2G支払った。
朝食を終えて再度錬金ギルドに向かう。
「おはようございまーす」
「あ!おはよう新人さん」
リーザさんが優しく声を掛けてくれる。
リーザさんはすごく美人さんで、肩まで伸ばした茶色い髪が緩やかにウエーブを打ち、その茶色い大きな瞳からは優しさが伺える。
特にリーザさんの笑顔が可愛くて、殆どの世の男性は、あの笑顔で話し掛けられたら、勘違いしてしまうんではないか?
俺もそんな勘違い野郎の一人なんだ・・・。
リーザさんは転生して困っていた俺に、声を掛けて錬金術の仕事と寝る場所を提供してくれた天使様だ。
「今日も錬金術頑張って下さい」
花が咲くような笑顔で話し掛けてくれる。
それの笑顔だけで今日一日頑張れます!
「奥にトールさんもきてますよ」
昨日と同じ部屋に向かいノックして入る。
「おはようございます。」
「おはよう」
トールさんはこのギルドの先輩で俺の教育担当をしてくれている。
青い髪に青い瞳の整った顔立ちの好青年て感じなのだが、何故かちょと頼り無い雰囲気を出している。
優しい笑顔を向けてくれて、それだけで安心する。
「じゃあ、昨日と同じくポーションを作ってみようか」
「はい」
「作り方は覚えているかな?」
「まず水を50cc用意して次に薬草をこの重りと同じ量、計って」
テーブルの上に置いてある薬草の瓶から薬草を匙で取りだし秤を使って重りと同じになるまで慎重に足していく。
「そうそう足すのは簡単だけど引くのは難しいから少しずつ足していこう。」
アドバイスに従いゆっくり薬草を足していくと、秤が水平になっていく。
「どうでしょう?」
「いいよ!やっぱり君はセンスがあるね」
こんな簡単なことで誉められると苦笑いしてしまうが、トールさんは誉めて伸ばしてくれるタイプの先輩で良かった。
「次は量った薬草を乳鉢に入れて、均一の大きさになるように擂り潰します」
白い器に薬草を移し、木の棒でごりごり潰していく。
「そう、ここで如何に調度良い大きさに、そして均一に、潰せるかも錬金術師の腕の見せ所だよ」
トールさんの指示に従いながら潰していくが、どうやらスキルの補正が掛かっているようで、面白い様に均一の大きさに薬草が潰れていく。
「次に魔石を砕いて今度はこの重りと同じ量準備します」
ごりごりとやすりで魔石を削っていく。
魔石の削り心地て癖になりそうな気持ち良さがある。
「材料は準備できました。後はこれを混ぜ合わせて最後に錬金術をかけて完成です」
「しっかり覚えていたね。じゃあこのまま最後までやってみようか」
俺は三つを慎重に混ぜ合わせ、最後にスキルで錬金術を使う。
「錬金術!」
眩しい輝きに包まれ、先程までは汚い緑色していた液体が淡い緑色に変化している。
「おお!出来た!」
さすが異世界!なんともファンタジーな光景に心が踊る。
「2日目でここまで綺麗な色のポーションが出来るなんて才能があるよ!」
トールさんは俺が作ったポーションを光に当てながらまじまじ見ている。
「直ぐにこの品質のポーションを作られると、自信なくしちゃうな」
トールさんはそんな事を呟いているが、俺はウサギから転生時に錬金術レベル9を貰っている為、仕上がりに補正やプラス等が働いているんだと思う。
今はまだ、この世界の情報が不足しているので、目立たないようにしようと思う。
同じ要領でもう一個ポーションを完成させる。
どうやら初心者は二個作るとMPが切れてしまうそうで、ここでトール先生のポーション講座は終わりとなる。
実際はまだまだMPに余裕があるが、ここで一旦ポーション作りを終了する。
「じゃあ僕は自分の仕事を始めるから、ラム君は本を読んでいてくれるかい?」
そう言われて昨日案内された、錬金術関連の本がある部屋に向かう。
ちょっと埃っぽい部屋に三十冊程の本が置いてある。
窓を開けて空気を入れ替える。
こちらの文字も転生特典で読めるのでウサギに感謝しなくてはいけないな。
錬金術の基本の本を手に取り読み進めていく。
ここでコーヒーでもあれば最高なんだがこの世界に在るのかな?
ああ・・・コーヒー飲みたい。
なんて考えていると扉がノックされる。
「ラムさん頑張ってますか、お茶を持ってきましたよ」
リーザさんが入ってくると爽やかな匂いがした気がした。
なんで美人な人は良い匂いがするんだろう?
お茶を持って来てくれたので話すチャンス!
この機会にぜひリーザさんと仲良くなりたい。
「ありがとうございます。ちょうど喉が乾いていたんですよ、すごく嬉しいです」
お礼を言って飲み物を貰う。
「どうですか、勉強は進んでますか?」
「ええ、順調に進んで、今日で二冊目に入りました。」
「すごいですね!皆さん錬金術のスキルを貰っても、字が読めなかったり、本を長時間読めない方が多いんですけどね。結構、新人さんはここで躓く方も多いんですよ」
字が読めるのはスキルのおかげで、長時間勉強出来るのは受験勉強のおかげかな。
確かに今まで村人だった人が錬金術のスキルを貰って、
いきなり勉強しろと言われても難しいかもしれないよね。
「それに今日作ったポーションは二個とも品質が良いものが出来たって、トールさんに聞きましたよ。ラムさんは錬金術師に向いているんですね!」
「偶然だと思うんですが才能がありそうで良かったです」
錬金術スキル9のおかげなんだが、テンション高めに誉めてくれるのは嬉しい。
「今日の給金は少し高くなりますよ」
「一日、ポーション四個の給金だと食べるだけで、無くなっちゃうので多くなると助かります」
朝に二個ポーションを作り、MPが回復する夕方にもう二個作って計四個を納品して、今日一日分の給金を貰う。
昨日は四個で20Gだった。大体1G=100円くらいの価値がある。
ただ、現代日本と比べて人件費は安くて、製品は高いこの世界では一概に同じ価値観では考えられない。
ちなみにポーションの原価は5Gくらいで錬金術代が5G
これを錬金術ギルドは30Gで販売している。
さらに良質な上ポーションは高めに販売しているようだ。
「それじゃあ、私も仕事があるので戻りますね。ラムさんも頑張ってください」
しばらくリーザさんが色々教えてくれて、笑顔をで去っていく。
もう少し、話して居たかったが、仕事中だし仕方ないかー。
もう少し稼げるようになったら、食事でも誘ってみよう。
この世界は女性を食事に誘っても良いものだろうか?
昼頃になりお腹も減って来たので朝食べた屋台に向かう。
朝はお粥の屋台だったが、昼はサンドイッチの屋台に変わっている。
フランスパンの様な細長いパンに、肉と野菜が挟まっていて、酸味のあるソースが掛かっている。
ボリュームもあって肉はなんの肉だろう?ちょと獣臭いがそれもまた異世界ぽくて気に入った。
昼飯後はトールさんに許可を貰って、午前中に本で見つけた、キュアポイズンポーションにチャレンジしてみる。
キュアポイズンポーションのレシピは
解毒草、黄草の根、水、魔石
解毒草は独特の匂いがある草で勿論これだけを使っても解毒効果がある。
黄草の根も同様にこれだけでも解毒効果があると本に書いてあった。
ポーションと手順は一緒で、分量を量り、適切な大きさに乳鉢で擂り潰す。
後は混ぜ合わせて仕上げの錬金術スキルを発動!
「錬金術!」
光が収まると、青色のポーションが出来上がっていた。
ポーションて種類によって色が違って美しいな!
さらに二個作り、残った時間は再度錬金術の勉強の時間に使った。
「ポーション出来たので納品しに来ました!」
「お疲れ様です。思ったより早く出来ましたね。
もしかしたら、ラムさんのMPは多いのかもしれないので、慣れてきたら作る量を増やしてみてくださいね。
でもMPが無くなると倒れちゃうので、気持ち悪くなってきたら止めてください」
「まだ余裕がありそうなので明日はもう一個増やしてみます!」
「はい、これが今日の給金40Gです」
昨日が20Gで今日は出来が良くて40G
同じ材料で作っても質が良ければ買い取りは倍!技能に対しての対価が高いのか。
「今日、納品してくたポーションは何十年も錬金術をやっている方と同じ出来でしたので、買い取り価格も倍になってます。一個なら偶然てこともあると思うんですけど・・・」
ちょっと考え込む仕草のリーザさんがとても可愛い。
「四回連続となると才能があるんだと思います!これからも頑張ってくださいね!私、ラムさんの事、応援してますね!」
応援されて、テンションアゲアゲでギルドを出て、夕飯を食べに行く。
まだ外は明るいが街灯が無いので、暗くなったら歩けなくなってしまうので、この世界では朝は早く起きて、夜は早く寝る健康的な世界だ。
朝、昼は屋台で済ませたので、夜はガッツリ食べたいので食堂に行くことにする。
食堂に入って直ぐのカウンターにお鍋で作った料理や、大皿に焼き魚や、肉が積まれている。
6種類ほど並べられており、皆さん一種類か二種類ほど注文し、最後にパンかご飯を注文し席に持って行くセルフスタイルの様だ。
豆と肉を煮たシチューと、卵と野菜の炒め物と、ご飯を注文しその場で8G支払い席に持って行く。
カウンター席の端に座り早速食べてみる。
この世界で食べる料理はどれもおいしく、食には困ってはいない。
「いっただきまーす」
「飲み物なんにしますか?」
食べ始めようとすると赤茶色い髪の十代中頃の女の子が注文を聞きにきた。
ドリンクは席で注文するスタイルのようだ。
「飲み物は何があるの?」
「そこの壁に書いてありますよー」
指差された壁には白いチョークでドリンクのメニューが書いてある。
「じゃあ水と赤ワインをお願い」
「6Gね」
ワイン5Gと水1Gで計6Gを渡す。
女の子はお金を受けとるとドリンクを取りに厨房の中に入って行く。
水も有料だが、煮沸して冷やしてレモンを入れてくれるので仕方がない。
ワインも飲んで気分良く、お腹も一杯になりギルドの裏の宿舎に帰る。
宿舎はアパートの様に個室が何部屋か有って、その一部屋を無料で貸して貰っている。
部屋にはなんにも無くリーザさんが貸してくれた薄い毛布だけ。
でも、気候が良い為、寒くは無く風邪を引く心配は無さそうだ。
ただ、朝起きると体が痛い・・・。