地獄のような時間と後悔
楽勝だと楽観していた部分は確かにあった。
進化種の脅威については理解しつつも所詮はスライム種、しかも元々が雑魚なポイズンスライムだから能力の向上があったとしても高が知れていると…本気でそう考えていた。
村が半壊したのだって、進化というアドバンテージがあっただけだと…
しっかりと遠距離からの行動を意識すればやれない相手じゃない…いや、むしろ楽勝すぎる相手だと考えていた。
だから、村の中で戻るかどうか話していたあいつらを見つけた時、心の底から馬鹿にした。
そもそも、役にも立たない道化師をパーティーメンバーに加えていながら俺たちより上にいるのが気に食わなかったのもあるが、臆病風に吹かれたんだと嘲笑った。
…だが、結果は…
「…ぅッ…ぅぅぅッ…」
「…ぁぁ……た…たす……け」
そこら中から聞こえる“パーティーメンバーの虫の息のような声”。
俺自身も既に体を動かせないくらいのダメージを負っていた。
……何もかもが間違いだった。
これは経験したから言える実体験談。
あいつらは臆病風にふかれたんじゃなく、英断をした。
俺たちは勇敢ではなく、無謀に挑んで敗北した。
それが現実だった。
「ぐ…ぐぞぉぉ…ぉ…ッ」
俺は悔しさと後悔で泣いてしまう。
泣かないわけがない。
可能なら、数時間前の俺をぶん殴り、今直ぐにでもギルドに戻って対策を練るように報告すべきだった。
何故なら、俺は“こんな状況になる不安要素に気がついていた”のだからッ…
ジュゥゥゥウゥゥゥウっ
あの化物が、捕食する音が聞こえる。
…喰ってるのは間違いなく俺のパーティーメンバーだ。
…俺の驕りのせいで…これまでの栄光も頑張りも…大切なあいつらも全滅に追いやってしまった。
それが何より悔しいッ…
ただただ、捕食される順番を待つしかないこの身が…ただただ情けない。