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エバンスの悩み


「シャールっ」



「ん…おぅ、エバンス。挨拶は終わったのか?」



村人の人たちから聞いた話を自分の中でまとめなおしていると、エバンスがこちらに駆け寄ってきた。



「遅くなってすまないっ」



「…そんな時間とかかかってないだろうに…」



「…挨拶は必要だとは言え、力仕事を任せっきりにしていたからね…気にもなるさっ」



「…はぁ…流石勇者様だねぇ……気にしなさんなって、道化師なんざ戦闘じゃまるっきり役に立たないんだから、雑用をまかせとけばいいんだし」



「…リーシャ…」



「事実は事実なんだから受け入れろって、サポートにわざわざ道化師なんざ受け入れ続けてるのなんてお前らぐらい…あっ、ちょっとわりぃ」



話している最中、ふと目に入ったのはつまらなさそうにしている子供たち。



普段遊んでいたことすらできなくなってしまった現状を考えれば仕方ないことかもしれない…むしろ、こんな状況にあっても心が壊れていないのは凄いことだ。



将来は化けるかもしれないな。



困難にぶつかっても、心折れず立ち向かえる存在を作るなんて容易じゃないんだし…



…でも、それは未来の話で…今の状況を考えると、子供たちに笑顔がないのは俺としては許せない。



…こんな状況だからな…楽しむ余裕なんてないだろうけど…



だからって言って、何もしないのは違うからな。



「そこの君たち〜。どうしたのさ、そんな暗い顔をして〜」



とりあえず、できる限り頑張るから、楽しんでくれよ?



◇◇◇◇◇◇◇◇




“…ははははっ!”



リーシャが子供たちに芸をし始めると、すぐに辺りには笑い声が響き渡った。



最初は警戒されていたけれど、リーシャが掌から煙を出していろんな動物やモンスターの形にし始めてから、子供たちは夢中になってりリーシャの芸を見ていた。



子供たちの笑い声は、何事かと大人たちを呼び集めて…すぐに大勢の観客を生み出していた。








…僕は…



そんな光景を見て、誇らしくなる。



確かに戦闘面では、僕達の中じゃ最弱だろう。



…ひどいように聞こえるかもしれないが、客観的事実だし、実力がモノを言う冒険者稼業にとって重要なことだ……死に直結する部分を偽るつもりはない。



…でもそれは、戦闘面での話だ。



戦うことだけが、人を救うことじゃない。



今のリーシャみたいに、子供たちに笑顔を与える事は、凄い素晴らしい事だ。



いくらモンスターを倒したからって、心に深い傷を負った子供達に笑顔を与えられるかと言われれば怪しいところだ。



いや、ほぼ無理と答えても間違いじゃない。



それに、リーシャにはサポートとして、モンスター相手への撹乱や情報集めや道具の用意、野宿時の料理までやってもらってる…



…これだけしてもらっていて、リーシャがお荷物なんて言えるだろうか…?



いやっ、言えるはずはない。



他の皆も、リーシャの力を認めているし、彼は僕達にとってかけがえのない、大切な仲間だと思っている。



…当の本人が役立たずだというから、周りも誇張して好き勝手言ってくるんだけど……











だけど、同時に羨ましい…いや、妬ましくもある。



僕は勇者だ。



勇者は人々に希望を与える職業と言われているけれど…



僕には、リーシャみたいに誰かを笑顔にする力なんてない。



勇者って言っても、モンスターを倒すのに特化したクラスなだけだ。



確かに、事戦闘において、僕は誰にも引けを取らない自信はある。



千の大群を相手にしようと、立ち向かう一騎当千の戦士…それが勇者だ。



その勇ましく戦う姿に勇気や希望を見出す人もいるだろう。



…でもそれだけ…



ただ戦う力しかない僕には、リーシャみたいに子供達を笑顔にするなんて出来ない。



だからこそ、僕は君が妬ましいんだ…リーシャ。



僕には無い力を持っている君が…



何をおかしなことをと…君は呆れるだろうね…勇者の方がいいに決まってるって…



でも、実際……君が上位クラスに憧れるように…僕も憧れてしまうのさ…



……できる事なら僕も君と同じように…



…それが叶わないなら、もしくは…







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