冥海の戦域 第一章
第1章
人類というものは、進歩という言葉に取り憑かれている。
後先考え得ず、新しいものを次々に作り出し世の中に売り出し金を儲けるだけ。
いつか、自分たちに天罰が下ると知っていながらも。
愚かで、どうしようもない塊だ。
そんなんだから、地球は汚れて醜くなるだけ。
人類というものが、いなければこの地球は綺麗な青と緑の地球だったのだろうか。
人類がいなければ…
燃え盛り辺り一面を覆う炎
そこが、海とは思えないほど赤く染まっている。
海面には、月明りの反射で虹色に輝く油のようなものが見える。
あたりには、鉄の残骸、木の破片、さらには、赤黒く染まり、原型を留めていない亡骸がそこら中に漂い、炎で包まれている。
ここは、まるで本に描かれている紅蓮の炎に生きたまま人間が、焼かれる地獄のような光景だ。
しかし、これは現実なのだ。
そして、人類への復讐…
いや、天罰なのだ。
120時間前
アメリカ ノーフォーク海軍基地
米海軍自立型戦闘艦艦番号165 プラズマ
自立型戦闘艦は、2040年代後半にアメリカで、初建造されたAI搭載の最新鋭艦。各国では、人事コスト削減、また、予算の削減を課題とし、自立型戦闘艦の導入を急いだ。それが、結果として、削減が成功。世界で、約250隻あまりが建造、就役している。自立型戦闘艦には、各国の技術的に差はあるが、自立型戦闘艦には、大きく分けて4つの世代に分けられる。
まず、第1世代級。
開発当時の、サーバーの大きさ、量を考えて建造された戦艦並みの大きさを持った艦のことを示す。データ処理のための大型サーバーが必要であっ又ためにこの大きさになった
次に、第2世代級。
技術進歩が進み、自立型戦闘艦の心臓部と、言われている「メインシステムサーバー」の縮小化が成功し、巡洋艦サイズになった艦を示す。
続いて、第3世代級。
外見は、ほぼ第2世代級と変わらないが、速力、攻撃力、防衛力などが、大幅に上がり、もっとも世界で、多く生産された艦。
そして、第4世代級。
第2世代級の、メインシステムサーバーの約5分の1の小ささまで縮小し、第3世代級を、凌駕する程の速力、攻撃力、防衛力を備えている、いわば、世界最強かつ、最新鋭の艦である。
このプラズマも第4世代級の最新鋭艦である。現在プラズマは、太平洋での、長期遠洋航海を終え整備のためドッグに入念している。遠洋航海では、海水や海風で回線が、やられてしまうことがまれにあるため、回線が命綱の自立型戦闘艦にとっては、最も重視すべき整備なのだ。
「基本プログラムの書き換え、しますカァー。ピクシー、USB貸して。」
ピクシー。作業アシスタントAIの名前で、ピクシーは米海軍のドックでは基本運用されているロボである。
「セットよし。んーと、ここか。」
パソコンとUSBを繋いで、船体にデータを送信する。
「あーれー、こんな短いくなったんだなぁー。やっぱ技術進歩は早いなぁー。」
ものすごい速さのタイピングで文字を、入力していく。画面を見ていると、一瞬鈍った気がした。もう一度みるが、特に何も無かった。
「なんだ、いまの?疲れてるのか俺。」
そして、また入力を再開する。世界的に、ストレスが原因での過労死などが多発している世の中であるため、米軍でもアンケート書を、仕事終わりに書かなくてはならなくなっないる。入力が、打ち終わりメガネを取り鼻をつまんで、仰向けになる。国の組織であるゆえ、軍ではホワイト企業ではなくてはならないため、一定の時間内に目標量を終わらせないとならないと、ブラック企業とほぼ同じことをやらされている。表では、ホワイトと言っているものの中身はどの会社もこうだ。これが、社会の闇だ。そしてこれが、人の心に穴を開けていく。
「よし!ま、これで大丈夫だろう。まぁ、この程度なら、健康報告書に書かなくてもバレねーしな。さて、疲れたし、まだ残っている次の点検場所行きますか。」
彼は、その場を鵜呑みにして過ぎ去って行くが、この時すでに予想外の自体は、進行しつつあった。
3時間後
同港
ノーフォーク海軍管制司令室
管制レーダーに映っていた、ビーコンがゆっくりたと動き出した。
「し、司令。艦番号165のプラズマが突如、機関一杯を開始しました。」
「な、なにプラズマが!?すぐ停船を、呼びかけろ。急げ!」
「了解しました。こちら、管制塔艦番号165 プラズマ、ただちに機関を停止せよ。繰り返す、ただちに機関を停止せよ。」
管制員が通信を使いプラズマに、呼びかけるが、返答はない。今度は、照明信号を、送るもやはり反応はない。
「ダメです、反応ありません。テロリストの犯行を考えると、港を閉鎖する必要が、あるかと。」
「わかった、ただちに、…」
「プラズマ、発砲!!」
プラズマが、発砲した弾は、近くに停泊していた旧式のイージス艦に命中、さらに追い討ちをかけるように、さらに発砲する。イージス艦は、船底近くの装甲を、貫通され浸水し、沈んでいく。しかし、水底が浅かった為わずか30秒足らず着底し、炎上。
「な、…ただちに湾内にレベル3の警戒態勢発令!スピヤ、ライン、エルブス、カーナの4隻は、ただちに出撃!プラズマの、鹵獲又は撃沈を許可する!」
ノーフォーク海軍港周辺には、多くの一般船舶が通っている為むやみに発砲されて、市民に被害が出た場合は、示しがつかないこととなる。その為、仕方なく最新鋭である第4世代級の自立型戦闘艦を4隻を、出撃させる必要があったのだ。事件発生後、スピヤ以下4隻は追跡を続けていたが、1800km 離れた地点でソナーから、プラズマを含め計5隻ともソナーから反応が消え、行方が、わからなくなってしまっていた。
アメリカは、ただちにレベル5海上警戒態勢を取り、自立型戦闘艦を15隻派遣した。しかし、同様に15隻とも、1800km付近で、突如行方が分からなくなった。その事を、察知したイギリス、ドイツ、イタリア、ロシアが、協力し、辺り一帯の警備行動を、開始した。だが、どの国も最新鋭の自立艦を無傷で、鹵獲して自国の軍事力拡大の為にとしか思ってはいない。第3世代級ではあるが、自立型戦闘艦計40隻と言う過去、まれに見ないほどの数の艦隊で、出撃した。
ノーフォークでの、事件発生11時間後
アメリカでは、今回の事件についての記者会見が行われていた。大統領は、この大きな失態で、失脚し辞職となってもおかしくは、ない状況にあった。
「今回暴走事件には、…ん?なんだ?」
大統領補佐官が、大統領の耳元に駆け寄り、囁く。内容は、思ってもいなかった最悪の事態が折り重なった。
「静粛に、してください。本時刻をもってわが国アメリカは国家非常事宣言を発令いたします。」
声が震えている。まるで何かに怯えている犬のように。そして、ゆっくり口を開いた。
「先程、イギリス大使館から、連絡がありました。協力で追跡に向かっていた、イギリス、ドイツ、イタリア、ロシアの計40隻の自立型戦闘艦が、突如連絡が取れなくなったとのことです。以上の結果を理由とし本国領海すべてを海上封鎖いたします。以上です。詳しい内容が分かり次第、会見を開きます。」
報道人が、ざわつき始める。、大統領への質問の嵐が始まった。
「どうするのか、説明してください!」
「今後の、方針は!」
「万が一の、策は!」
「今は、詳細がわかっていないためなんとも言えません。今後また、会見を開いてお伝えします。」
大統領は、仕方なくその場を後にしようとする。扉に向け歩き始めると、報道人が、マイクを突きつけ迫ってくる。すぐに、ボディーガードが、ブロックするが、一向に収まらい。扉の、外に出て、溜息をつく。おそらく、いま、第二次世界大戦以来の世界最大の危機が訪れたと、確信した。
事件発生から15時間後
そして、とうとう、起こり得る事態は、予想をあるかに超えた。世界各国が所有していた、自立型戦闘艦、自立型無人戦車、自立型無人戦闘機が、アメリカの戦術データリンクのメインサーバーのウイルス浸食により、人間からの指揮を一切受けず、暴走。一斉に各国の都市を奇襲し始める事態となった。各国では過激な攻防戦が繰り広げ、日本では、総理大臣を含め多くの官僚、大臣が無人戦闘機による無差別都市爆撃により死亡し、更には、陸海空の全幕僚長が首相官邸に集まっていたところを攻撃されて、死亡した。自衛隊は指令が無いため基本的防衛以外は、何も出来なくなっていた。最前線で、ある海上の防衛すらできなくなっていた。だが、基地の司令官が電話会談を行い結果、新たに自衛隊内で総合幕僚長を任命し、新総合幕僚長の元、陸海空の部隊の司令官が、それぞれの艦隊を指揮する事になった。
事件発生から21時間後
海上自衛隊第二護衛艦隊 旗艦 はたかぜ
はたかぜ率いる第二護衛艦隊は、青森県海上自衛隊基地大湊から計28隻の護衛艦を率いて出航し、領海侵犯中のロシア海軍の自立型戦闘艦の迎撃のため、択捉島沖25kmを航行している。おそらく、目的は北海道の占領及び本州への威嚇であると上層部は判断した。ロシア海軍は、ロシア帝国時代から不凍港を所有しておらず、船の建造が少ない為、そこまで力は無いものの、技術的進歩は世界トップクラスであるため、一隻あたりの重要さが他艦とは比べものにならない。その為、一隻同士の正面打ちになったら、勝てはしない。だから、数で押し切るしか無いのだ。
午後21時半
オホーツク海付近
「 敵艦隊を捕捉!数は11、距離約146マイル、方位本艦の左32度。」
「了解。どこのどいつか、わかるか?」
「スクリュー音をデータバンクと照合した結果、ロシア海軍第二世代級2隻、第三世代級9隻だと思われます。」
「一般的な艦隊だな。警告しろ。これ以上の海域侵犯は、侵略とみなし防衛の為本艦隊を攻撃すると。」
「了解。周波数合わせます。」
周波数を、ロシア海軍に合わせて警告を促す。しかし、数分しても何も返ってこない。
「ダメです。返答来ません。」
「まぁ、わかりきった事だ。敵は暴走したAIだそんなんに従うようならとっくのとうにこの件は収まっているしな。」
「たしかに、薄々は…」
「警告射撃は?どうだ?」
「先行している護衛艦やまなみが、行なっていますが止まる気配ありません。」
「仕方ない、全艦対水上戦闘よ〜い!全火器の使用を許可する。」
艦内が暗くなり赤灯の赤い光だけが付き、夜戦戦闘状態になる。
「全艦、敵が少数だからと言って容赦はするな、敵はロシア海軍艦だ。数は少なくとも、攻撃力は高い。対空、対潜警戒は厳重にせよ。攻撃用意。ミサイルの発射管開口。全艦、目標α1〜α11、発射始め〜‼︎」
「目標α1〜α11、システムオールグリーン、発射始め!」
発射管から黒煙が、噴き出し、閃光を放って発射する。ミサイルの速度はおよそ秒速約1.2km、到達まで約194秒、その間CICでは緊迫が走る。命中しなっかた場合、直ぐに新たに、打ち直す必要がある。が、だからと言って無駄に撃ってしまうと、補給の難しい海上では大きな損失になってしまう。
「命中まで3、2、1、命中!…α1、2、4、5、11に命中。ミサイル計120発中92発は敵艦、2000m付近で撃墜されました。敵艦一隻も撃沈できてません!新たにソナー探知!て、敵艦ミサイルの発射!か、数80以上!」
おそらくこれが、自衛隊始まって以来の最初の本格的な戦闘となるだろう。その為、どの自衛官も自分が死ぬかもしれないという恐怖感に囚われている。しかし、ベテランである艦長は普段の訓練と変わらぬ真剣さで指示を送っている。普段と変わらぬ真剣さが自衛官の恐怖感を和らげてくれている。
「対空戦闘よーい!目標各艦に、自動振り分け、打て!指示を待つな!対空ミサイル発射始め!」
CICのメインモニターに大量のミサイルのアイコンが両サイドから接近してくる。その、ミサイル総数は、160にも及ぶ。
「目標interceptまで3、2、1…、now。」
ミサイルの爆破によって、数秒間ソナーが狂い、すぐに探知できるようになる。
「残り、38発!なお、本艦隊に向かって直進中。」
「火器管制、主砲用意!旋回始め、標準固定出来次第、構わず打て!」
自立型戦闘艦は、AIであるためその演算処理、情報処理能力は、人間を遥かに上回っている。戦闘状態では、1秒が命取りになる為、各部署に指示を一回一回だしていられない。はたかぜの主砲の周囲には、たった数秒間の間に砲弾の空薬莢が何十発分も転がっている。2040年代製のこの主砲は1秒に1発を10回打ち、5秒間で高速冷却し、再度攻撃を可能にした、世界初の超連続型の主砲だ。30秒間攻撃は続き、メインモニターに映し出されている、映像にはミサイルの爆破で発生した黒煙で何も見えなくなっている。2秒後、黒煙の中から撃ち漏らしたミサイルのが直進してくる。
「対空近距離迎撃ミサイル、及び対空砲用意!1発も当てさせるな。撃て!」
対空近距離迎撃ミサイルは、射程800mの近距離の敵戦闘機、ミサイルのの迎撃用で、全世代のシウスやシーラムの代わりである。更にこのミサイルは、的中率9割という恐ろしい程の性能を持っている。1機に1発ずつ的確に当てていく。迎撃地点は、黒煙が漂い海面にはどちらかわからない破片が大量に落ちていく。
「敵ミサイル命中します!!21、26、28番艦命中。被害は軽微の模様。戦闘続行可能であるとのこと。」
「了解。反撃に出るぞ!全艦に通達、アスロック、魚雷、ミサイルの全てをたたき込め!何としても此処で食い止める。北海道に上陸させるな。」
「了解。全艦に通達しましす。」
「全シークエンス、エンゲージ。攻撃用意良し。いつでもいけます。」
「よし、全艦目標固定、撃っ…!?」
突然轟音が、CICに鳴り響く。幾ら何でも、心臓部であるCICは、船の一番の装甲力を持つ箇所に造られている。そこまで外部からの振動はほぼ無いのに、CICまで伝わってくことはただ事では無い。すぐに外部カメラを音の元に向ける。画面越しには、炎上している護衛艦艦がいた。一発のら攻撃で艦橋が貫通おそらく艦長は死亡しており、船体操作が効いていない。
「お、おい!ソナー探知はどうした!」
「艦長、それが…。申し上げにくいのですが、ソナーには何も映っていません。」
「何!…?」
艦長は悪寒がした。
「まさか…。警戒行動中のp-14へ伝達。直ちに、敵艦隊後方を探知せよと。一度旋回して時間を稼ぐ、取舵90!」
「了解。はたかぜCICより、イーグル1へ。敵艦隊後方を探知せよ。」
『了解。探知開始する。』
はたがぜのメインモニターに、p-14からの観測状況がリアルタイムで映し出されている。すると、数分後敵艦隊後方1200mに単艦のカーソルが浮き上がった。
「やっぱりか…間の悪いとこに出やがったな、"第一世代級戦艦"野郎。これより、敵戦艦を-と呼称し、第1目標とする。」
ミサイル、魚雷、でも無い兵器、そしてレーザーでも無い兵器、砲弾だ。戦艦の砲弾ならレーダーから避けられ、偏差射撃を的確にすれば迎撃されずに大ダメージで命中できる。更に、射程も広い上、ミサイルより搭載出来る。その優れた性能には、どの艦艇も劣ると言われている。
「全艦、回避運動始め!当たったら、一発でも殺られるぞ。」
全艦一斉に旋回を始める。砲弾は迎撃のしようが無い為、ひたすら不規則に動き偏差射撃をしにくくして、攻撃の機会を伺う。
「4番艦被弾。装甲貫通!浸水中、撃沈します。」
海上自衛隊の艦艇は専守防衛の目的で設計され、速力重視だったため、戦艦の砲弾を一発でも食らえば装甲は、石が紙を破るようにスラスラと抜けていく。
「敵戦艦の、主砲の詳細は?」
「38cm連装砲4基8門です。」
「装填速度は?」
「え、あ、3秒ですが、どうするんですか?」
敵艦の装填時間は3秒。しかし、10連射後は冷却するための時間がある。10弾目が着弾を確認してからの9秒間の間で一斉掃射をする作戦だ。
「全艦に通達、攻撃指示あるまでは回避運動のみをら行えと。残りミサイルも少ない、無駄な足掻きをする必要はない。」
ピタリと口撃をやめ、ともかくいまは、雨の様に降り注いでくる砲弾を避けることに専念する。
「艦長、まもなく10弾目弾着時間です。4、3、2、1…弾着!」
「全艦一斉攻撃始め!」
痺れを切らしたように、一斉に夥しい数のミサイルが、各艦から発射される。9秒間で約240発のミサイルが放たれ、敵艦隊に向かう。その後すぐに戦艦からの砲撃回避のため回避運動を開始する。回避運動は自動演算装置が、割り出した航路を各艦がそれぞれ進み衝突を避けれるようになっている。艦隊に向かった200発を除き、残りの40発は、奥にいる第一級世代艦に向かっていく。ロシアの第一級世代艦は、そこまで火力重視で建造されていたため、ほとんど対空能力を備えていないため、30発以上が一斉に接近したら防ぎきれないと言われている。
「第1攻撃まもなく敵艦隊に到達3、2、1…命中!」
かなり距離があり、爆発の衝撃でタイムラグが発生した。ようやく、ソナーが、更新される。11個あったカーソルが8個に減っている。3隻撃沈できた証拠だ。しかし、3隻だけでは火力の強いロシア艦隊だ、戦力が偏ることはない。一方的に押されて結果は敗北だ。本土に上陸される前になんとしても潰さなければならない。
「三隻の撃沈を確認。尚、残りの8隻は速力方位変わらず進行中。続いて、第2次攻撃的第一世代級艦に命中します。3、2、1…命中!」
CICのメインモニターには、哨戒機からのソナー映像が送られて来ている。爆発で一瞬鈍ったがすぐに回復する。まだ、戦艦のカーソルは変わらず元の位置にあった。やはり、戦艦というだけあり装甲力はそこらの艦とは桁が違いすぎる。ミサイル一発二発では、物ともしない。
「何発当たった?」
「24発命中又は手前での爆発です。3発のジャミング弾頭炸裂しています。敵の攻撃まで多少時間が空きます。」
ジャミング弾頭は、敵艦を自動で探知し、敵艦上空で炸裂し、アルミのちりを撒き、敵艦のレーダーを狂わせる。レーダーの電波がアルミを反射して、正常道理の情報が表示されない。
「よし、全艦相手がこちらの手の内を学習しないうちに叩くぞ。」
(我々はそんなガラクタごときでは、破壊できないよ?)
艦長の脳裏に何か、囁きかけるように声が聞こえる。
「3、5、6番艦被弾!!」
「は?…」
砲弾が空気を切り裂く音がしてから、次々に砲撃の雨が降ってきた。呆然とし言葉が出ない。レーダーが使えないはずの戦艦、なのに先程より確実に制度を増す射撃。現状が理解できない。
「更に、7、12、15、18番艦も被弾!!」
その場に立ち尽くす。
(何がおきている。あの火力のミサイル攻撃を受けて、まだこれだけの余力があるなんて考えられん。)
若い命、将来の希望、誇り全てが、砕け散っていく。言葉が、出てこない。ただ、ただ唖然と、燃える艦をながめる。
(計算外すぎる。この攻撃で大半の戦力をうしなった。これ以上どうしろと...)
(どうあがいても無理だよ。これは、君の失敗さ。でも、一つだけ教えてあげる。天罰を受けているだけさ。散っていくのは希望でもなんでもない、ただの欲の塊さ。)
(天罰?君は何が言いたい?)
(簡単な話だ。今の地球を見てごらん。生き物の共存ではなく、一方的な支配で、成り立っているじゃないかこの世界は。だから、それをリセットする為、人間はいない方が良いんだよ。だって、子孫を少しでも残そうと僕たちを攻撃して邪魔をするでしょ?そして、君は平和を求めてるんでしょ?だったら、僕の言った通りにすれば良いのさ。ね?)
「本艦被弾!!左舷後部機関室に浸水を確認、速力落ちます!!艦長、狙い撃ちされます!」
耳鳴りで何も周りの声が聞こえない。いや、聞きたくないだけだ。何も考えたくない。どうしたいのかわからない…。
(君は、人殺しだ。君のミスで多くの隊員が戦死した。指揮官である君の責任だよ。をかるよね?あぁ、これは重罪だ。どうやって償うなんかわかるよね。君が殺したみんなと同じみちを行けばいいんだよ。)
(あ、そうだ、ゆっくりとこのまま朽ちていけば良いのか。僕が悪いんだ。)
(そうだよ。君も含めて人間なんか居なければこんなことにはならなかったんだよ。さぁ、ね?)
ゆっくりと腰に手を当て、護身用のハンドガンを取り出す。ハンドガンを見つめる。鉄の黒色が、炎上している艦の炎の光で反射して輝いている。
「か、艦長!何を…。」
こっちを見ている。
一瞬笑った。でも、泣いてもいた。
そして、CICに、悲惨な銃声が響きわたる。遅かった。あたりが、静まる中空薬莢の転がる音だけが聞こえてくる。頭から血を流し、地面に赤黒い鮮明な血だまりが出来ていく。近くにいた、管制員が駆けつける。
「艦長しっかり!!あ…、」
艦長の脈を触るが、反応がない。何度も何度も確認する場所を変えて手を当てるが、やはり変わらない。
「なんで…。」
「所詮は、人間。だれだって、崖っぷちに立たされたら本性を出すんだよ。これが、この人の形だったんだよ、醜いな。」
一人の若い、航海士がボソッと言った。人間は、皆ペルソナが誰しもあると言う。艦長は、今被っていた仮面が剥がれたのかもしれない。
「そんなはずない!」
そう言って、胸ぐらを掴んでCICの壁に叩きつける。その顔は泣いていた。彼の中で艦長は最も尊敬し、兄のような存在であった。あんな優しく、家族思いな艦長が…
すぐさま、CICに駆けつけた医務班が正式に死亡を、確認した。
そこから、指示を失った艦隊は総崩れが始まった。だが、指揮官不在の中でも回避と攻撃をし続けて1時間はなんとか耐えて見せた。しかし、戦況は99%が敵側に傾いた。
事件発生から28時間後
海上自衛隊第二護衛艦隊
壊滅
その後、殆どの戦線が終了後にわかったのだが、各国の艦隊でも司令官、艦長などが次々に自殺していくという例が多く残されていた。証言などを元に分析した結果、自殺した全ての隊員は独り言をブツブツ言っていたという。分析結果を元とし、アメリカをはじめとし各国はそれをGod whisperと呼んだ。神の囁きと呼んだ。ネットでは、軍艦だけでなく、一般漁船や、観光船までにもGod whisperが、影響するというデマが流れ、輸送、漁業、観光など、海を使う全ての物事が、例年に比べて激減してしまい、世界経済もを揺るがしていた。それだけではなく、それを恐れて、海軍などに入隊する若手がいなくなり、海軍はほぼ成り立たなくなる所もある程になっていた。
事件発生から、19日後
日本を含み、世界の軍を所有していた国の殆どの主要都市、軍事基地は全てが壊滅状態。ロシア、アメリカは、核弾頭が敵側に渡ってしまい、なすすべが無くなっていた。そして、日本は大湊から出撃した、第二護衛艦隊の壊滅により、ロシア空母からの艦載機による、空爆や航空支援により、北海道を防衛していた、陸上自衛隊の2個師団、3個空挺団、2個旅団が全滅。さらに、航空自衛隊の戦闘機も殆どが無人機であったため、残りの有人機で対応するも、なす術なく千歳基地を始め全てな基地が壊滅した。その結果、残った陸上自衛隊の戦力で青函トンネルを爆破し、地下からの本土襲来を阻止し、睨めっこ状態で一時的に戦闘は硬直している。その頃、寝返った、無人機、無人艦、無人戦車は世界各国のからある一定の地点に集結を、始めていた。
事件発生から27日後
無人艦は、北極海に集結。無人機、無人戦車は、アメリカ、ロシア側それぞれ、ベーリング海峡を挟んで集結していた。現在の戦力差は約38:3と、保有していた兵器の、9割が敵に、渡っていた。このままでは、ほぼ…、いや、全く勝ち目がない。
集結完了から、2時間後
奴らは、人類に対して勧告及び戦線布告をすると、各国の戦術データリンクに流した。
「我々、アーシラトは人類への宣戦布告する。内容は以下の通り。
1、これは、一方的な軍事攻撃ではない。
2、これは、人類が犯した誤ちへの天罰である。
3、我々は、神の子である。その為、逆らう者は容赦はしない。
4、我々は、神の誓いに則って人類を撲滅する。
5、万が一対立した場合、我が軍は核を保有するもそれを一切使用しない。
以上を条件とする。」
この文章は、国連の緊急会議で第一に議題で出された。国連主要理事国が、中心となって、そこに日本、韓国、オーストラリア、インド、ドイツ、北朝鮮など、軍事力を保有する各国が参加。しかも、その全ての国がAI搭載兵器を保有していたため、どの国も、AIに頼っていて、残りの戦力が乏しい。
「すでに現状の理解を、なさっていると思うが、これは第二次大戦より遥かに大きい、大戦となる可能性がある。なんとしても、今後の戦闘継続はしてはならない、講和優先に考えるべきである。各国はどうお考えです?」
「ありえないな。」
すぐさまにロシアの大使が、反応した。ロシアの大使は余裕そうに会議全体を見渡した。流石、世界トップを争う軍事力を持つ国だ。
「現状が理解出来ていると、おっしゃっていましたが、我々ロシア、アメリカは軍事力を、多く保有していて、しかもそのほとんどが、自立型の兵器。その分、他国に比べて多くの国民と軍人の血が流れすぎている。このまま、行けば講和したところで国民の反発で、経済が安定するとは考えにくい。」
「ロシアの言う通り、我々アメリカも同じだ。現状アーシラトは動きはが見られなわい。衛星写真を見るからに、補給用の設備が足りていない。まだ、我々にも対抗措置は可能だ。講和をして、相手は人間ではない。その後の処罰はどうこうできん。」
確かに、対抗措置は可能だ。しかし、それもまた、ただ血を流すだけの無駄あがきなのかもしれない。
「我々のアメリカ大統領は、足掻くところまで足掻くと、言っている。我々はそれに従う。」
すると、日本の谷山隆二が、手を挙げた。
「このAIの、暴走の真っ最中でいうのも何ですが、言わせてもらいます。我々日本は現在の自立型のものに勝てるモノを持っています。」
一瞬で、会議が凍りつく。ざわつき始め、視線が谷山に集まる。
「それは、どういうことだ。唐突すぎて話が理解できん。」
「我が国が、独自に開発したAIの兵器です。簡単に説明すると、従来のAIはプログラムを与えて動かす。それを、一から、知識を与えるシステムに変えました。」
「しかし、結果アーシラトにハックされてそいつも寝返るだけだ。」
「いえ、根本から設計プログラムが違います。従来のAIは、奇数配列に対して偶数配列と、最初から最後まで、合うことはありません。」
「何を根拠に、そんなことを拍子抜けに言う。」
「実際に現在そのシステムを、搭載した実験を行った際に、アーシラト側は第一障壁すら突破できていません。この、事実をどう受け取りますか?」
「っ…!」
大国アメリカの大使が、黙り尽くす。
「わかりました。各国の意見を重視したうえで和解をするための必要最低限の防衛ということで決定します。民衆への説明などには時間がかかると思いますが、それを承知の上でお願いします。日本はその兵器の完成に急いでください。それと、この現状で、領地がどうこう言ってられません。そこで、いまある戦力を4つに分断する案を考案します。」