表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
登場人物・短編
86/90

短編 魔法使いと花の日 その2

ユリアに渡されたお花を手に、わたしは自分の部屋に戻った。しかし、ニーナはまだ帰ってきていない。それなりに時間が経っているはずだけど、長引いているのかな。それか、問題でもあったのか…。そう思いつつ、わたしは部屋の花瓶にピンク色の花を適当に入れた。それだけで少し部屋の雰囲気が明るくなったような気がする。それを机の上に持って行き、じっと眺めた。

……どうしようかな、お花。ユリアの実験に付き合っていたせいでうやむやになっていたけれど、もちろん忘れていたわけではない。ゼンにお花をあげるのはいいけれど、問題は何色にするかということ…。そもそもゼンって「花の日」の存在、知ってるのかな?ゼンって皇国出身だし…。それに、そういうイベントとかあまり知っていない気がする。むしろ、興味がなさそう。そんなことを考えつつ、飾ったお花を持って部屋の中をうろうろした。やっぱり、ゼンに渡そうかな?ピンクだし、ちょうどいい気がする。改めて別の色のお花をもらいに行くのも面倒だし、たぶんユリアが自分の実験にお花を全て使ってしまっているような気がする。それに、よくよく考えてみれば、ゼンが花の日について知らないならば、たぶん何色を贈っても関係ないのでは…?知っていたとしても特に反応しないだろうし。

突然、そんな結論に至ったわたしは早速ゼンのところへ行こうとしたのだが…。そこで、部屋の扉が叩かれた。ニーナが帰ってきたのならばわざわざノックをすることはないはずだ。誰だろう、と扉を開けてみると…、

「あれ、あなたって…、ニーナと同じ研究してる人だよね。どうしたの?」

ニーナとよく一緒に行動している魔法使いがそこに立っていた。研究テーマが一緒で、よく二人で調べ物をしたり議論したりしている。ここ最近は特に、研究が大詰めを迎えていたためか、真剣な表情で話し合っている姿をよく見かけていたけど…。そんな彼がここにいるということは、報告書の提出は既に終わったということ…?でも、ニーナはまだ帰ってきてない。少し混乱していると、彼が答えた。

「ニーナが協会長に書類を渡した直後に倒れて。目覚める気配がないし、仕方がないからここまで運んできたんだよ。そういうわけだから、中に入れていいか?」

そう言って、視線を少し下に移す。つられて見ると、彼の腕に眠っているニーナが抱かれていた。確かに全く起きる気配はない。…たぶん、協会長さんに書類を渡したことで、一気に気が緩んでしまったのだろう。そもそも、徹夜していたし、非常に疲れている様子だったから…。ニーナが倒れた時、近くに人がいて良かった、と思いつつわたしが承諾すると、彼――セシルはニーナが壁などにぶつからないよう、慎重に中に運び入れた。わたしは扉を開けて彼が通りやすいようにした。セシルがニーナをベッドに横たえた後で、わたしはニーナの代わりにお礼を言うことにした。

「ありがとう、セシル。たぶん、ニーナは疲れていたんじゃないかな。今日は徹夜してたし、ここ最近ずっと忙しそうだったから……。しばらくまともに休んでないと思う」

「え…、そうだったのか!?大変だったらちゃんと手伝うから無理はするな、って言っておいたのに…。こいつ、何で周りにいる人を頼らないかな…。それとも、俺を信用していないのか…」

セシルはぶつぶつとそんなことを言っていたが…、不意にその視線を机の方に向けた。そこには花瓶に入ったピンク色の花が置いてある。――先ほどわたしが眺めていたもの。それを見たセシルは、何故か一瞬懐かしそうな表情をした。けれど、すぐにその感情を消し、質問してきた。

「ジェシカ、もしかしてあの花、ゼンに渡すのか?」

どうやらセシルは花の日についてちゃんと知っているようだ。ストレートな質問にわたしは一瞬固まった。そのつもりで外に出ようとしたら、セシルが現れたのだ。そのせいなのか、急に渡す勇気が失せてしまった。けど、このまま飾っておくのも何だか…。渡さなかったら、それはそれで後悔することになる気がする。わたしが返答に困っていると、セシルは返事を元々期待していなかったのか、それとも、聞かなくても何となくわたしの答えを予想できているのか、何も言わないうちに独り言のように、

「俺も渡したい人がいるけど、どうしようかな。そもそも俺のことを覚えているのか知らないし」

しかし、その言葉をつぶやいてから我に返ったようで、慌てたように口元を押さえた。そうして、少し気まずそうな表情で帰って行ってしまった。何か、あっという間だったな…。というか、渡したい人って誰なんだろう。ちょっと疑問に思いつつ、わたしはニーナの容態を確認することにした。よく眠っている。しばらく起きそうにないので、その間にわたしはゼンのところにお花を渡しに行こうと部屋を出た。


「ゼンは確か、他の魔法使いと話しているはずだけど。すぐに帰ってくると思う」

ゼンがよくいる資料室に行ってみたところ、ゼンと親しい魔法使いにそう言われてしまった。そっか、今は忙しいのか…。お花は渡したいけど、邪魔するのは申し訳ないな…。そう考えたわたしは、考えた末にゼンがいつも使っている研究室にお花を置いておくことを決めた。絶対に一日に一回はあの部屋を訪れるはずなので、気付かないことはないはずだ。それに、直接渡すのもそれはそれで…。

なので、わたしは魔法使いにお礼を言って、早速研究室に向かった。そして、テーブルの上にお花を置く。……と、そこでふと気付いた。何かこの花、さっきよりも量が増えたような…?わたしはじっとその花を見つめた。…気のせいなのかな?少し気になったが、まあ、たぶん大丈夫だろう。お花が増えたところで支障はないはずだ。そう思ったわたしは花をそのままにして研究室を出た。……と、ちょうどその時、ユリアに会った。彼女に今日会うのは二回目だ。まあ、ユリアはいつも協会内のあちこちをまわっているから、割と会うことが多い。何故だか非常に嬉しそうな表情をしている。

「あ、ジェシカ!!聞いて!さっき、物を増やす魔法を考えている、って言ったでしょう?あれ、上手くいったわ!少し時間がかかるけれど、ちゃんと量を増やせるようになったの」

「そうなんだ、良かったね。…ちなみに、ギルさんには怒られなかった?」

わたしはそっとユリアに尋ねた。ユリアは新しい魔法を生み出すためにたくさんの花を使って、そのせいでギルさんに怒られることが多い。というか、日常茶飯事だ。なので、今回も怒られたのではないかと思ったけど…。わたしのその問いにユリアはわざとらしく目を逸らした。……まだ怒られてはいないけど、恐らくこの後怒られる、ということかな??何も言われていないけれど、そんな気がする。

……この感じだと、後でわたしがお花の買い出しに行かされることになる気がする。わたしは思わずため息をついたが、ユリアはにっこりと笑って手を振ると去って行った。

「全く…。今頃ギルさんが嘆いているだろうな…」

けど、ユリアの新たな魔法の開発はしばらく止まらないだろう。つまり、しばらく植物の消費量は多いままということ…。たぶんすぐにギルさんに呼びだされることになると思うけど、その前にニーナの様子が心配になったので、一旦部屋に戻ることにした。

しかし、ニーナは未だに起きる気配がない。すやすやと眠っている。…これ、明日の朝まで起きないのでは?相当疲れていたみたいだし…。でも、後で一応薬をもらいに行った方がいいかな。なかなか起きなかったら少し心配になるし。そう考えたわたしは、薬をもらいに再び部屋の外へ出た。

読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ