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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
1章 緋色の炎の魔法使い
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第8話

わたしが検査を受けてから一週間後。今日は、いよいよ魔法の練習日だ。……憂鬱すぎる。どうやら、検査の時の話がどこかから伝わったらしく、わたしは以前よりも他の人たちに「危ない人」と認識されてしまったのだ。わたしだって、あんなに強い力を出すつもりはなかったんだけど!今回はゼンさんの言ってた通り、余計な力を入れないようにしてみようかな?ということは、魔法を使う時にあまり色々なことを考えない方が良かったりするのかな…。そんなことを考えつつ、わたしはニーナと一緒に魔法の訓練場へと向かった。訓練場は、よく分からないけど様々な木や植物が生えていて、とても広い。しかも、多少壊してしまっても何とかなるみたいだ。…だからと言って、燃やしまくるわけにはいかないだろうけど。でも、わたしが少し不安を抱えているうちに授業は始まってしまった。今日は魔法を上手くコントロールするための練習だという。とは言え、ここにいるほとんどの人は既にコントロール法を知っているみたいなので、その人たちにとっては簡単な内容なんだろう。……やっぱり不安。そう思っていると、ふわりとわたしの目の前に魔法の花が数本飛んできた。どうやら、今日はこの本数だけ花を使えるみたい。魔法の花は、この場所でだけ栽培されている特別な花で、魔法使いの持っている魔法の力を引きだす、不思議な植物だ。様々な花と組み合わせることで色々と変化が生まれるらしい。ただ、最近は魔法の花と別の花を一緒に育てることでも同じことができるらしく、そっちの方が主流になっているみたい。ちなみに、その事実はギルさんが突き止めたらしい。意外とすごい…。と考えていると今回の授業の先生が話し始めた。

「それでは早速、始めていきましょう。今回は、個々の得意な魔法によって課題が異なります」

え…!?何で!?ということは、得意な魔法が「水」のニーナとは違う課題なんだ…。ちょっと残念。そう思っていると先生はさっさと説明を属性順に始めていった。少しして、炎の課題が発表される。

「『炎』の人は、森の方へと移動して下さい。そこの地面に落ち葉と一緒に赤い紐が紛れ込んでいます。それを探しだして、周りの落ち葉を燃やさずに紐だけを燃やしてきてください。なお、そこにはギルがいるので不正はできませんよ。成功したらギルにその証拠となる紙をもらって戻ってきて下さいね」

その言葉に、火の人たちは速やかに森へと向かっていく。…これ、わたしも行かないとダメだよね。こ、心細いんだけど!!わたしがちらっとニーナの方を見ると、彼女は「頑張ってください!」というようににこっと笑ってわたしを見た。…うぐぐ。やっぱり不安だ…。わたしは仕方なく、一人とぼとぼと森へと向かった。


「おー。ようやく来たか、ジェシカちゃん。皆、来たと思った瞬間、すぐに紐探しをし始めたぞ。早くしないと紐を探すだけで時間が終わるから早くした方がいい」

わたしが森に着くと、ギルさんがそう声をかけてきた。いや、そもそもわたし、見つけたとしてもそれだけを燃やせるかどうか全く分からない…。気のせいか、わたしが他の人たちの近くを歩くとそれだけで微妙に避けられるんですけど?そう思いつつも、見つけなければ話は始まらないのできょろきょろと森の中を探すことにした。少し奥の方へ行ったところで、一つ赤い紐を見つける。…見つけてしまった。というか、ここらへん、すごく紐が多いような?この周辺だけで五本くらいはある気がする…。

「これだけあれば、さすがに一本くらいは成功する……、はず?たぶん…??」

そう言いつつも、自分でも不安だ。わたしは取りあえず、紐の近くに魔法の花をかざした。魔法の花が淡い光を放ち、少し暗い森の中をほんの少し明るくした。…よし、これで準備はできた!後は魔法を使って燃やすだけ。えーと…。この紐だけを燃やすくらい小さな炎ができればいいよね…!わたしは心の中で ―小さい炎― と唱えた。…しかし、案の定炎はわたしの言うことを全く聞かず、近くにあった木まで燃やしてしまった。…失敗。この感じだと、周りの落ち葉と一緒に燃やしてしまう、というレベルになるまで相当時間がかかるような…。わたしはため息をついて、二つ目の紐に近付いた。うーん…。大丈夫かな。かなり不安だったが、取りあえずもう一回やってみることにする。もしかしたら、偶然上手くいくかもしれないし!わたしは再び魔法の花をかざした。…のだが。現れたのは、何故かさっきよりも強い炎。何で!?自分でもびっくりする。そして、その炎は周囲の木を全部燃やしてしまった。…規模が大きくなってる。わたしがそのことに衝撃を受けていると、後ろからさくさくと足音が聞こえた。振り向くと、そこにはギルさんの姿が。…微妙に笑っているように見えるのは気のせいではないと思うんだけど。わたしがじとーっとギルさんを見ると、彼は何とか笑いを収めて言った。

「いやー、ジェシカちゃんだけなかなか帰ってこないからどうしたのかと思って探しに来たんだけど…。どう見てもこれは順調そうじゃないな。ジェシカちゃんの周りの木だけ燃えてなくなってる」

すみませんね。どうせわたしは魔法のコントロールが下手ですよー。心の中でそう思いつつも、何故か自分の言葉がぐさっと突き刺されたように痛かった。…悔しい。もっとわたしが上手く魔法を使えていれば…住んでいた所でも、この前の検査の時も被害を出すことはなかったはずなのに。

 ―ちゃんと、わたしがこの力を使えていたら…!―

しかし、その瞬間。パチッと近くで何かが爆ぜるような音がした。そっちを見ると、何故かそこには小さな炎が出現している。……は?なんでこうなった?けど、わたしが驚いている間にもその炎はふよふよとわたしの方へと近付いてくる。え、ちょっと待って。燃やさないで!お願いだから!

「動くならわたしの方じゃなくて、あの赤い紐のところに行って!!」

わたしは思わずそう叫んだ。けど、今までの経験から、炎は言うことを聞かないだろうな、とも思った。…だが、予想に反して炎はわたしの言葉を受けてふよふよ、紐の方に向かっていく。そして、幾つかの小さな炎に分身し、それぞれがそこらへんにあった数本の紐を同時に燃やして掻き消えた。

「ねえ、ギルさん!今の見た!?炎が紐だけ全部燃やしてくれたよ!自分でもどうやったのかは分からないけど…。でも、これで課題はクリアだよね!」

しかし、ギルさんは何故か炎のあった方向を呆然と見ていた。…どうしたんだろう?もしかして見えなかっただけで落ち葉も一緒に燃やしていた?そう思ったわたしは紐のあった方向に近付いた。そこには、黒く焼け焦げた紐はあったが、それ以外の落ち葉は全く燃えていなさそうだった。わーい!…と、そこでようやくギルさんがわたしに反応を返してくれた。

「…そ、そうだな。上手く成功したようで何よりだ。じゃあ、これ、その証拠だ。これを持って元の場所に戻ったら今日の練習は終わりだ。教室にでも戻ってろ」

そう言ってわたしに紙を渡してくれた。そこには、練習で成功したことを認める、という内容の文章。わたしは初めて魔法が成功したことに浮かれて、ギルさんにお礼を言うと早速説明を受けた場所へと戻った。そのため、わたしは一人そこに取り残されたギルさんがつぶやいた言葉を全く聞いていなかった。

「炎を自由自在に操る、あの力は一体……?」


教室に戻ると、ニーナの方が先に戻っていた。そして、戻ってきたわたしを見て何故か驚く。

「…え、もう成功したんですか?!何があったんです?まさか、森全体を燃やしたわけでは…」

「ニーナひどい…。ちゃんと成功したんだって!…わたしもその理由はよく分からないけど。でも、ギルさんがちゃんと見ているところで成功したんだから!」

わたしがそう言ってもニーナは半信半疑のようだったが、取りあえずうなずいてくれた。…この感じで今後も魔法をコントロールできればいいんだけど…、どうなることやら。

読んで下さり、ありがとうございました。

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