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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
5章 光華の魔法とお伽話
71/90

第71話

本を完全に片付けた後のこと。協会長さんのところへ行こう、と話がまとまったはいいものの、イジュアさんの姿を他の人に見られたら大変ではないか、という話になった。イジュアさんは半透明なので、見られたら幽霊だと疑われそうだ。けれど、これにはちゃんと対応策があった。不意に彼女の姿が陽炎のように揺らめいたと同時に、わたしの影に溶け込んだのだ。突然のことに、わたしたちはしばらく何も反応できず、沈黙が落ちたのだが…。どうやら、今まではそんな感じで隠れていたらしい。ゼンやユリアはもちろん、わたしも全く気付いていなかった。すごい技術だな…、と感心しつつ、取りあえず他の人にイジュアさんの姿を見られる心配はなくなったので、わたしたちはそのまま協会長さんのところへ向かうことにした。

「でも、本当に大丈夫なの?イジュアがいるとは言え、その力を持っているのはジェシカの方なんでしょう?どうやって対抗するつもり?乗り移って解決するような問題じゃないし…」

ユリアが不思議そうに尋ねたが、わたしはその言葉に衝撃を受けた。勝手に、乗り移るのかな、とか考えていたけれど、それではダメなんだ…。どうやら、幽霊と同じようにはいかないらしい。

『どうしようか…。猶予はあまりないが、少し練習させるか。普段ジェシカが使っている炎の魔法は、どちらかと言うと花の方に頼った魔法だ。だが、それでは対抗できない。あっという間にこちらがやられる』

イジュアさんが淡々と言った。けれど、なかなか良案を思いつかないらしく、唸っている。というか、影の中にいても喋れるんだ…。そのことに驚いた。一体、どういう仕組み??ものすごく気になったけれど、今はそれどころではないので放っておく。…わたしが今使っているのは、花を利用した魔法。けれど、本来であれば何もなくても使うことができる、と…。恐らく、そちらの方が威力が強くなるのだろう。確かに地下迷宮でも花がなくても簡単に炎の魔法を使えていたし、まだここにいなかった頃も感情に乗せて魔法を使っていた。…感情が大事なのかな?でも、それに頼るわけにもいかないし。でも、都合よくその力を使えるとは限らないし…。だが、考えている間に協会長さんの部屋の前にたどり着いてしまった。一旦考えを中断し、扉を叩こうとした。が、その時。自動で扉が開いた。びっくりしたが、どうやら協会長さんが、外に人がいることに気付いてわざわざ開けてくれたらしい。彼は、わたしたちが来たことに少し驚いたようだったが、何かを察して中に入れてくれた。最後に入ったゼンが扉を閉めるのと同時に尋ねられる。

「それで、突然どうしたんですか?あなた方が一緒にいるなんて珍しいですね」

そう尋ねられた瞬間、一瞬わたしの目の前の空気が陽炎のように揺れて、影の中からイジュアさんが現れた。登場するの、早くない?!早く話したいのは分かるけど…。協会長さんも突然、知らない人が現れたせいで驚いている。半透明なのもその原因だろう。けれど、イジュアさんはそれを気にせず、淡々と言った。

『驚かせて申し訳ない。わたしはイジュアという。光華の魔術師と言えば分かって頂けると思うが』

その言葉に協会長さんは固まった。こんなに驚いている協会長さんを見るのは初めてかもしれない。まあ、当然と言えば当然の反応だと思う。随分前に死んだはずの人間がこうして目の前に現れているなんて、普通はあり得ない。しかも、すごく有名な魔術師だし。彼は状況を理解するためかしばらく黙った後で、ようやくうなずいた。

「ですが、一体どんなご用件で?そもそも、光華の魔術師は既にこの世にいないと記憶しているのですが…」

『まあ、色々とあってな。それはともかく、今日は少し頼みたいことがあってここに来させてもらったのだが…。それに関する複雑な経緯について、説明しても良いだろうか』

そう尋ねられた協会長さんは静かにうなずいた。その反応に、イジュアさんは一つうなずき、「竜」の魔法仕掛けや、現在の状況などについて語り始めた。


「…ということは、つまり、あの竜の話は本当だったということですか…。個人的には信じていなかったのですが。意志を持つ魔法仕掛けとは、非常に興味深いですね…」

協会長さんは本当にその魔法仕掛けが気になっているようで、その瞳には好奇心が浮かんでいた。そういえば、ニーナも魔法仕掛けについて研究しているから、興味を持ちそう。この場にいたら、きっとイジュアさんにその魔法仕掛けについて色々と質問をしていただろう。部屋に帰ってからイジュアさんに会わせてみようかな、なんて考えてしまった。だが、今はそれどころではないと思い直し、思考を切り替えた。

『どうすれば効率的に魔法仕掛けを破壊できるのか考えている。ちなみに、ご存じだと思うが、わたしの力のほとんどはジェシカが持っている。だから、わたし自身はそこまで強い力は使えない』

協会長さんはその言葉にうなずいた。そして、そのまま何かを考え始める。時折、手元の紙に何か色々と書きこんでいた。何か、いい案は出るのだろうか…。期待と不安で少し緊張する。そのまま沈黙の時間が十分ほど続いた後。協会長さんは机に置いた紙から目を上げた。

「普通に考えたら囮作戦…、でしょうね。恐らく、あちら側はジェシカさんの元にあなたがいると考えているわけですから。竜の意識をジェシカさんに向けさせたところで一気に他の人たちで捕縛する、という感じなら、ラトスさんの方には怪我を与えないと思います」

なるほど…。人間ごと封印したらかなりまずいから、一旦捕まえてそこから魔法仕掛けだけを引きはがす感じか…。わたしが囮になるんだったら、また皇国で使った炎の檻でも仕掛けておこうかな。この前試してみて、かなり威力が強いことが分かったし。でも、力が強いなら無意味かな…?と考えていると、

「でもそれ、ジェシカがかなり危険なのでは?もし、こっちが捕まえるのに失敗したら…」

そう言ったのはゼンだった。意外なことにわたしは戸惑ったが、何故かユリアは苦笑していた。……何でだろう??いや、それはともかく、この作戦が一番いいのではないか、という話になったのにまた振り出しに戻ってしまいそうな気がする。なので、わたしは慌ててゼンを止めた。

「念のために、皇国の時に使った炎の檻を用意しておくから大丈夫だよ。それに、怪我をする可能性があるのはわたしだけだから。他の人には害がないだろうし…」

「でも、皇国で使った時にそれを向こうが見ていたなら、同じ策には乗らないと思うよ。それに、ジェシカが怪我したらこっちがすごく心配になる。それだったら、自分が怪我する方がましだ」

とあっさりと返されてしまった。後半の言葉はともかく、前半の言葉は確かにその可能性が考えられる。そもそもラトスさんは、わたしのことを皇国で見かけたのだと言ったわけだし…。その時から既に「竜」が彼と共にいたとしたら、その時の光景を見ていてもおかしくはないだろう。それなら、何か他の罠でも考えようかな。できれば、ゼンを納得させられるくらい強い魔法を…。わたしが色々と頭の中で案を出していると、ユリアが少しだけ笑いを含んだ声で言った。

「それなら、そうなった場合はあなたがジェシカを守ればいいんじゃない?そうするのが一番確実でしょう?地下迷宮でもそうしていたし、今回も大丈夫じゃない?」

それは、確実性のない案。もしかしたら、ゼンの方が怪我するかもしれない、そんな内容。けれど、そんなの無理に決まっている、とわたしが言おうとする前にゼンはそれを了承するようにうなずいた。イジュアさんと協会長さんは微妙に呆れているようだったが、異存はないようだ。ええ…、いいの、それ?逆にこちらが心配になる。それに、危険な目に遭わせてしまう可能性が高い。やっぱり、どちらも怪我をしないように強めの魔法を作っておこう、とわたしは決意したのだった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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