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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
5章 光華の魔法とお伽話
70/90

第70話

わたしがゼンにイジュアさんに関する話を全て終えた頃には、イジュアさんとユリアはすっかり落ち着いていた。途中までは資料室を壊してしまいそうな勢いで喧嘩(?)していた二人だったが、いつの間にか静かになっていて、最後の方はわたしの説明に色々補足してくれた。ありがたいけれど、切り替えが非常に早すぎて逆に戸惑う…。そんなことを思いつつ、けれど、わたしはイジュアさんが急に協力を要請すると決めたことに疑問を覚えていた。もちろん、協力者がいた方が心強いけれど…、あまりにも突然だったから。その説明を求めようとイジュアさんを見ると、彼女は分かっていると言うようにうなずいた。どうやら彼女はわたしの考えていることが何となく分かるらしい。そういう能力なのか、わたしが分かりやすいのかは知らないけれど…。

『…この前、あの者が来た時は、わたしとジェシカだけでも倒せると思い、敢えて協力者を集めることは考えていなかった。巻き込むのも申し訳ないと思ってな。だが、状況が変わった』

そう前置きして、彼女はその徹底的な変化をわたしたちに淡々と告げた。曰く、「竜」が恐ろしい勢いでその力を得ている、と…。ここ数日、イジュアさんは敵のことを詳しく調べるためにロベム国に行っていたそうだ。そして、そのことに気付いた。本来であれば、イジュアさんは少し向こうの力を弱め、これ以上他の人の力を吸い取らないように術を仕掛けようと思っていたらしい。だが、向こうの力があまりにも強く、下手すると彼女もそれに取り込まれそうで、諦めたそうだ。現在彼女の力のほとんどを持っているのはわたしだけれど、それでも危ないって…。相当危険な状態なのだろう。そこまで聞いたユリアが複雑そうな表情で言う。

「貴女にしては珍しく後手に回っているわね。けれど、このままにしておくわけにもいかないでしょうし。…いいわ。特別に今回だけ協力してあげる。その代わり、今度一緒に宵闇のところにでも行かない?」

『別にわたしは構わないが…。この姿で行ったら驚かれそうだな…。そもそも、今も同じ場所に住んでいるのか…。まあ、でも、反応が気になるし行ってみるか』

と、二人で楽しそうに話し始めた。「宵闇」ってもしかして、宵闇の魔術師のことかな?わいわいと終わってもいないのに計画を立てる二人にゼンは苦笑した。何だかイジュアさんとユリアって、揃うと結構大変かも…。二人の仲が良すぎて、会話を止められないというか…。そもそも、こちらが何かを言っても気付かない気がする。仲が良いこと自体はいいんだけど…。仕方ないので、再び二人で話すことにした。

「ゼンは?どうする?わたしは別にどちらでもいいけど。もし、研究が忙しいなら、こっちには全然気にしないで大丈夫だよ。心置きなく研究の方に時間を費やして」

「……ジェシカの僕に対する印象がどんな感じなのかすごく気になるんだけど。僕はそこまで薄情じゃないよ。それくらいだったら協力する。研究だって急いでやらないといけないってわけでもないし」

非常に不満そうに言われてしまった。いや、別に冷たい人だと思っているわけではないけど…。研究の方に集中したいのかな、って勝手に思っていた。でも、その答えに非常に安心したのは事実だった。ゼンがいれば大丈夫だな、って思えるからすごく不思議…。それは、もちろん魔法の技術的な話でもあるし、精神的な面もある。逆に、ゼンから見たわたしってどんな感じなのかな…、とふと気になった。迷惑しかかけていないような気がするけど…。それでも毎回、わたしに付き合ってくれているゼンは本当に優しいなって思っている。でも、わたしは…。信頼できるほどの何かを持っているかと言われたら分からない。もしかしたらわたしは、自分に自信がないのかもしれない。これまでは一応、周りの協力のおかげでどうにかなっていたけれど…。自分一人では上手くいかなかっただろうな、と思うことが多い。もし、ゼンみたいに知識がたくさんあったら、それらを武器に一人でも問題を解決できそうだけど、わたしにはそういう取り柄みたいなものってあるのかな…。

「…って、話を逸らしたわね。ごめん。それで、イジュアは何か作戦を考えているの?」

ようやく話し込んでいた二人が元の話に戻ってきてくれたので、わたしも一旦考え事を中断した。今は、魔法仕掛けの方に集中しないと…。イジュアさんもそう尋ねられて表情を真剣なものに変えた。机の上に腰かけ、過去を思い出すようにどこか遠くを見つめる。

『前に戦った時は確か、わたしと同じ炎を使っていたはずだ。まあ、竜の形をとっていたからそれしかできなかったのかもしれないが。だが、今回はどうなるか分からない。主な攻撃に水の魔法を使われたら、こちらが圧倒的に不利になるのは確かだ。そもそも、力の強さも考慮する必要がある』

竜か…。確かに、炎のイメージ。でも、もしも今回、竜がヘビの姿になったら嫌だなあ…。にょろにょろ動かれたらすごく怖いし。考えると恐ろしくなってきたので、わたしは頭の中からヘビの姿を追いやった。水に効果的なものでも考えよう。水って何に弱いのかな…。もし、「竜」の体が水でできているなら、電流を使えば何とかなりそうだけど…。ただ、それをする暇があるか、というのが問題。他の人が「竜」を引きつけておかないと、やられてしまう。…と、そこでゼンが手を少し挙げてイジュアさんに質問した。

「そういえば、このことって協会長には言わないんですか?言った方が色々と力を貸してくれそうですけど。それに、ああ見えて魔法の力もかなり強いし…」

「ああ見えて」って…。微妙にひどい。その一言だけ余計な気がするが…。でも、それ以外の部分は当を得る発言だと思う。協会長さんに話した方が、アイデアとか色々出てきそう。知識が豊富だし、経験も積んでいる。だが、イジュアさんはそれについては全く思い付いていなかったようで、「その手があった!」というような表情をした。ということは、やっぱり協会長さんに話すべきだろう。…ただ、イジュアさんについて説明するのが大変…。何故、彼女がわたしの元にいるのか、その理由すら未だに分かっていないし。取りあえずみんなで協会長さんのところに行こう、と話がまとまり、一旦わたしたちは資料室を出ることにした。机の上に散らかっている大量の本を片付けつつ、ユリアが言う。

「ただ、どんな作戦を取るにしても、敢えてお互い離れた場所にいた方がいいかもしれないわ。向こうに警戒されても困るし。予め魔法の花を準備しておけば、それが現れた時にすぐ連絡できるんじゃない?」

『どうだろうな。あくまで、向こうの狙いはわたしだろう。今度こそ、わたしを倒したいと思っているはずだ。厄介なことこの上ないな…。あの時、もう少し強く封印すれば良かった』

と、イジュアさんが非常に後悔している。ちなみに、彼女は半透明のため、物を持つことはできないらしい。そのため、片付けをしているわたしたちの近くをうろうろしている。物は持てないのに、歩いたり座ったりできるところが少し不思議だけれど。そもそも、この姿で彼女はどうやって魔法を使うつもりなんだろう…。幽霊みたいな感じでイジュアさんがわたしに乗り移るのかな?でも、そうなると必然的にわたしも竜に狙われることになる…?そもそも、この前の時点でラトスさんはロベムに来ないか、と提案していたわけだし。あれだって、もしかしたらイジュアさんがわたしと一緒にいることに気付いた「竜」に喋らされていたのかもしれない。そう考えると、何だか怖かった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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