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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
5章 光華の魔法とお伽話
65/90

第65話

捜していた、とはどういうことなのか。わたしは困惑したが、ラトスさんはわたしを安心させるように微笑を浮かべた。そして、話を始める。それは、とても長い、遥か昔から続いている――、お伽話。


炎の国は、光華の魔術師がつくり上げた国だ。その歴史はとても長い。また、その国の王族にはかの魔術師の血が流れており、遺伝的に炎の力を受け継ぐことが多いという。そして、そう言った人物が国を治めるという習慣があった。けれど、最近はその力が弱まってきたそうだ。力を持っている人の割合が急激に減り、炎の力を持っていたとしてもその力は非常に弱い。だから、王族の人たちは非常に焦った。もし他国との間で戦争などが起こった場合、彼らはその力を利用してそれらを乗り切ってきたのだ。炎の力は、強大だから。だから、その力の継承が完全に途絶えてしまえばこの国の未来は危うい。存続できるか分からない。しかし、魔法というのは基本的には既に滅び去ってしまったものだ。魔法の遺伝に関する文献はほとんど残っていない。だから、彼らはそれらに関して何の対策もできなかった。そして、そのまま数年が経過した。

けれど、大きな転機はいつだって突然訪れるものだ。

きっかけは、王族の一人――、ラトスさんがとある国に出かけたことだった。その国とは、皇国。この前、わたしが魔法仕掛け関連のところで行った場所で、ゼンの故郷でもある。外交関係で彼は皇国に行ったそうだが、その時期と言うのが、ちょうど皇国で魔法仕掛けのごたごたが起こっていた頃だった。つまり、わたしがその国へ行った時期とも重なっている。どうやら、ラトスさんはその時にわたしを見たそうだ。正確に言うと、わたしが、犯人の囮になった時。具体的に言うと、その時わたしは魔法仕掛けを使った犯人をおびき寄せるために自分が囮になった。そして、その人がわたしに危害を加えようとした瞬間に炎の魔法を使って捕まえたのだ。どうやら、ラトスさんはその様子を見ていたらしい。全く気付かなかったけれど…。ともかく、彼はそれでわたしのことを知っていたようだ。そして、興味を抱いたのだという。自分の国に帰ってからもわたしの力について気になったらしいラトスさんは、人脈などを駆使して魔法や光華の魔術師について、ありとあらゆることを調べたようだ。そして、確信した。わたしが、光華の魔術師の持っていた力を継いでいることを。


けれど、それを聞いてもわたしはあまり信じられなかった。確かに、ユリアにも光華の力を持っているとは言われたけれど…。理由が全く分からない。わたしは、ロベム国とは何の関係もないのに…。気のせいなのでは?そう思ったけれど、ラトスさんは真剣な表情をしている。困ったわたしは、協会長さんを見た。魔法関連のことならば、協会長さんが一番詳しい。きっと、ラトスさんの言っていることが本当かどうか分かるはずだ。けれど、わたしの視線を受けた協会長さんは非常に言いづらそうな表情で、

「…確かに、彼の言っていることは事実です。あなたは確かに、光華の力を持っています。…ずっと言っていませんでしたが、数年前、あなたがここに来た時からそのことは知っていましたよ」

と言った。ええ…、協会長さんまでそんなことを…。しかも、そんな前から。てっきり否定するだろうと思っていたので、反応に困ったし非常に戸惑った。まさか、ラトスさんはもちろん、ユリアの言っていたことも本当だったとは…。しかし、その衝撃が収まらないまま話は続いていく。

「それでですね。何故私が今日ここに来たかというと、あなたをロベムに招待しようと思ったからなんですよ。光華の魔術師に関する逸話や品々が残っていて…」

衝撃に衝撃が重なり、わたしは段々混乱してきた。わたしが光華の魔術師の力を持っているというだけでも驚きなのに、そこに来て招待って……。けれど、それには協会長さんも驚いているようだった。もしかして、そのことについてはまだ聞いていなかったのかな。…そもそも、招待って一体??わたしをロベムに連れて行って何のメリットがあるのだろう。光華の力をわたしが持っていたとしても、わたしは王族ではない。だから、何の意味もないはずだ。それか、その力を利用して何かするのか…。何にしても、あまりいいことではないことだけは何となく分かった。ゼンたちの「嫌な予感」というのもあり、ここでその提案に乗ってはならないような気もしたのだ。しかし、はっきりと断ってもいいのかどうか…。話の内容から、ラトスさんはロベムの統治者の血をひいていることが分かった。つまり、無下に扱うことができない人物ということ。そんな人からの提案を拒否していいのか…。その辺りが複雑である。

けれど、今の時点ではわたしはその国に行くつもりはない。何をしたいのかよく分からないし、そもそも光華の力やロベム国について、知らないことの方が多い。そんな状態でその場所に行くのは危険だと思えた。なので、わたしは柔らかい表現でそれを断ることにした。

「……ごめんなさい。今は、魔法の研究に専念したいので。それに、国のことはよく分からないので」

上手い断り方だったのか、よく分からなかったけれど、ラトスさんは一旦退いてくれた。そのことに少しほっとする。その後少しだけ会話して、ラトスさんは協会から帰ることになった。協会長さんの部屋を出ると、入る前と同じ場所で、ゼンが壁に寄りかかって待っていた。わたしと一緒にいるラトスさんを見て少し怪訝そうな表情をする。だが、いつも通りの様子だと分かったのか、少し安心したようだった。

「ジェシカさん、もし、光華の国に興味が出たら、ぜひいらして下さいね」

最後にラトスさんがそう言って、わたしの手を取り微笑む。えーと……。これは一体、どう反応するのが正解??分からなくなったわたしは曖昧に笑っておいた。…けど、上手く笑えていたかどうか自信がない。しかし、ラトスさんはそんなわたしの微妙な笑みにも全く態度を変えず、「それでは」と言って去っていた。その姿が見えなくなった瞬間、一気に疲れが噴き出した。何でただ話しただけなのにこんなに疲れたのかな…。そう思っていると、廊下の端っこでわたしたちを見ていたゼンが質問してきた。

「…さっきのあの人、誰?何か…、すごく不思議で危うい印象の人だったけど」

心なしか、その声は若干低くて冷たい。その瞳は、鋭くラトスさんの去って行った方向を見つめている。ゼンがこんな表情するなんて珍しい。何か気になることでもあるのかな。

「えっと、ロベム国の人。たぶん…、王族?わたしをその国に招待したい、とか言ってたけど、何がしたいのか、その目的がよく分からなかったから断った」

「…へー。そう。まあ、それならいいけど」

相変わらずちょっと低めの声でそう言うと、不意にわたしの手を取った。さっき、ラトスさんにも取られた方。一体どうしたんだろう。戸惑ったが、ゼンはただ手をじっと眺める。最後に一瞬、ぎゅっと強く手を握ってから放してくれた。…??その行動にどんな意味が含まれていたのか全然理解できなかったけど…。その後でゼンはわたしにこう忠告した。

「さっきの人…、気をつけた方がいいよ。ただの勘だけど、何か危険な気がする。…まあ、こことロベムは遠いし、何もないとは思うけどね。念のため、注意して」

そう言うと、何故か複雑な表情で去って行った。何か…、ゼンがいつものゼンらしくなかった。そのことを不思議に思いつつ、わたしは「光華の力」について聞くため、一旦協会長さんの部屋に戻ることにした。

読んで下さり、ありがとうございました。

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