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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
5章 光華の魔法とお伽話
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第62話

しばらくわたしはぼうっとしていたが、偶然近くにやって来たニーナに「どうかしました?」と声をかけられてようやく我に返った。そして、自分の用事を思い出し、早速シェーロン国へ行くことにした。何をやってるんだか…。自分でも呆れてしまう。ため息をつきそうになりつつ軽く花を振ると、うっすらと花が光り、魔法が発動する。次の瞬間、わたしはシェーロン国の街並みの中にいた。周りの景色は協会とは異なり、たくさんの建物が並んでいる。いつも森の景色を眺めているので、こういう人工物がたくさんある場所って何だか新鮮だ。そう思いつつ、わたしはお花屋さんを目指した。いつも目立たない場所に転移するので、お花屋さんに行くためには少し歩く必要がある。けれど、他の人に見られる危険性を考えれば、多少離れていても目立たない場所に移動した方が安全だ。魔法使いの存在は、普通の人に知られてはならない。それが、決まりだから。それに、離れた場所と言っても大した距離ではない。少し歩くと、すぐにお店にたどり着いた。ちゃんとやっている。定休日ではない。もしもお休みの日に来てたら絶対にうるさかっただろうな、と考えつつ扉を開ける。

「こんにちはー!」

そう声をかけると、カウンターで何かを書いていた少女が顔を上げた。わたしを見て少し驚いたようだったが、嬉しそうな笑みを浮かべた。カウンターにバラバラと置かれていた紙やペンを整えた後でカウンターから出てきて、

「ジェシカ!久しぶり。最近来ていなかったから忙しいのかなって思ってたんだけど、元気そうで良かった」

と言った。彼女が、わたしの知り合いだ。名前は「ユイカ」という。最後に会ったのがかなり前だったので、何だか懐かしく感じてしまう。そして、相変わらず可愛らしい。そういえば、さっき何を書いていたのかな?気になってカウンターを見てみると、そこには大量の白紙が。そして、そのうちの数枚には不思議な線が描かれている。何かの暗号かと思ったんだけど、…これ、よく見ると文字??すると、ユイカが慌てた様子でそれらの紙を取り上げて後ろに隠した。彼女曰く、文字を練習中だとのこと。ここに来てからかなり経ち、かなり長い間練習しているけれど、全然上達しない…、と嘆いていた。そういえば、彼女はこの国に来て間もないといつか聞いたことがあった。まあ、何でも完璧にできる人なんていないだろうし、少しは苦手なものがあったっていいと思うけど…、とそこまで話したところで、わたしは違和感を覚えた。何だろう…。としばらく考えて、ようやく思い出した。ここに普段はいるはずのもう一人の人がいないのだ。別にいなくてもいいけど、いないとそれはそれで気になる。

「ところで、ルイはどうしたの?わたしとしては、いない方が色々うるさく言われないからありがたいけど、いないとそれはそれで変というか…」

「ルイ」というのが、もう一人の名前。彼は色々と細かいところがあるので、微妙に面倒な人でもある。すると、ユイカは、

「あー、今日は出かけてる。けれど、そろそろ戻ってくると思うよ。朝早かった代わりに、お昼頃には帰ってくる、って言ってたし。ジェシカは何の用でここに?」

そう言われてようやく本来の目的を思い出した。ユイカと話していると楽しくて、時間を忘れてしまう。もしも忘れたまま協会に帰っていたら、ギルさんに怒られるし研究が滞ってしまう。わたしはお喋りするのを一旦止めて、ギルさんにもらった紙を見せた。ここにあるといいんだけど。ユイカは受け取って、そこに書いてある花の名前をじっくりと見つめた。しばらく考えてから、「全部あると思う」とうなずいた。そのことにほっとする。なるべく一つのところで用事を済ませた方が楽だし、ギルさんも早く花の研究をしたいはずだ。ユイカが花を探してくる、と言うのでわたしもついていくことにした。一人で待っていてもつまらないし、そもそも買いに来たのはわたしだし。ついていったその先は、この敷地にある中庭だ。そこに大量の植木鉢がある。色とりどりの花が咲いていて可愛らしい。しかも、綺麗に整頓されている。几帳面だな…。それを見たところで思い出した。…そういえば、わたし、買ったお花をどうやって持って帰ればいいのかな?転移すれば簡単に協会に戻れるけれど、あのメモに書いてあった量の花を一度に運ぶのは難しい。魔法にも制限はある。そうすると、何回かに分けて運ぶ必要がありそう。それか、誰かをここに連れて来ようかな?その方がわたしは楽だ。……そうなると、やっぱりゼンがいいかな。そもそも、ここに来たことがある人が彼しかいない。もしもゼンが暇そうだったら、後でここに連れてくればいいかな。でも、忙しそうだからどうだろう…。引き受けてくれるだろうか。そんなことを考えている間にもユイカはてきぱきと花を選んでいく。慣れてるなー、と思っていると、ユイカがその作業をしながら、不思議そうに尋ねてきた。

「それにしても、いつもこんなにたくさんの花を使ってるの?いつもあっという間になくなっちゃうんじゃない?お花だけで費用がすごくかかってそう…」

「いや、今回はとある人が勝手に大量の花を使って…。そのせいで花不足に陥っただけ。普段はちゃんと計画的に使っているから簡単にはなくならないんだけど」

一体ユリアは、何で大量の花を使ったのか…。そもそも碧の魔女なら、簡単に植物とか作り出せそうだけど…。そういうわけでもないのかな…。と考えているうちに、ユイカが全ての花を揃えてくれた。すごい、ちゃんとあった。けれど、ユイカはかなり心配そうな表情で、

「大丈夫?さすがに魔法を使ってもこの量は大変じゃない?」

と言った。やっぱりそうだよねー…。やっぱりゼンを呼ぶのが一番かな。それか、この原因を作ったユリアか…。取りあえずわたしは魔法の花を使って、ゼンに連絡を取ることにした。一応連絡はついたけれど、ゼンはちょうど自分の研究を進めていたところらしく、どうしようかと考えていた。じっくり悩んだ後で、「一時間後でもいいなら」と言ってくれたが…。それだったら自分で運んだ方が早そう。なので、やっぱり大丈夫だと断った。邪魔するわけにもいかないし。…なので、一人で運ぶことに決まってしまった…。どの方法を取れば効率よく荷物を運べるか考えつつ、代金を支払う。この費用はちゃんとギルさんからもらっていた。わたしが支払った金額を確かめつつ、ユイカが質問してきた。

「ところで、さっきの話の『研究』って?魔法についての研究?」

「まあ、そんな感じかな。魔法や常識について学び終わった後は、皆自由にテーマを決めて研究をしているんだけど。確かゼンは、昔と今では魔法は変質しているか、ってテーマだったかな」

わたしにはよく分からない研究テーマだ。まあ、本人が楽しそうだからいいけれど…。ついでに言うと、わたしはまだ全然決めていない。そろそろ決めておかないといけないんだけど。でも、魔法に関することで興味があるものは非常に少ない。でも、その興味を持っている分野も、研究して何かの役に立つのか、と言われたらたぶん役立たないと思う。そんな感じで、どうしようかと焦るばかりで全く案が出てこない。

「そもそも、やりたいことが何も見つからないなあ……」

そう小さくつぶやいたのと同時に、ユイカが金額を数え終えた。ちょうどだったというので、安心する。もしも金額が少なかったら当たり前だが買うことができない。すると、ユイカが一つ提案した。

「…あ、そうだ、ハーブティー飲む?昨日、作り置きしたのがあるけど」

「飲みたいけど…、その途中でルイが帰ってきたら怒られない?」

怒られたら色々と面倒だし。けれどユイカは、「たぶん大丈夫!」と笑った。たぶん、って微妙に不安なんだけど…。でも、ここに来る機会はなかなかないし、もう少しゆっくりしていきたい。そう思ったわたしはうなずいた。

読んで下さり、ありがとうございました。



※ちなみに、百花繚乱シリーズの作品をどちらも読んでくださっている方向けに説明しますと、今回のお話に出てきた「ユイカ」は「私の異世界花記録」の「結花」と同一人物です。

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