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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
5章 光華の魔法とお伽話
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第61話

最近、不思議な夢を見る。何回も、何回も。ここよりも遥か南に位置する場所に、一人の魔法使いが立っている。その視線の先に広がるのは荒れ果てた土地。更にその先には澄んだ青色の海。光を反射し、所々白く輝いている。けれど、彼女は何もしない。いつまでも、ぼんやりとその景色を眺め続けている。そして、不意に波の音のような風の音のような強い音が聞こえて――、わたしはいつもそこで目を覚ます。けれど、朝のうちはその光景を鮮明に覚えているのに、夜には忘れている。


その日、わたしはギルさんにお使いを頼まれた。曰く、外に出て花を幾つか買ってきてほしいのだと。そう言われて渡されたメモには、「幾つか」と言う割には大量に花の種類が書かれている…。でも、どれもこの場所で栽培されているはずだし、時季も今が満開のはず。それなのにどうしてだろう…。しかしそれを聞く前にギルさんは行ってしまった。どうやら忙しいらしい。そういえば、協会長さんも最近忙しそうにしている。前から忙しそうだな、なんて思っていたけれど、ここ最近特にひどいみたい。ニーナによると、光華の魔術師の国について色々と対応しているという話だったけど。とても離れた国のことなので、わたしはよく知らないし分からない。まあ、わたしが関わることはないだろう、きっと。そう思いつつ、外に行くための準備をしようと部屋に戻る途中、ユリアに会った。彼女はもうすっかりこの協会に溶け込んでいる。ただ、案外いたずら好きのようで、あちこち行っては色々と遊んでいるらしい。楽しそうだけど…、ほどほどにした方がいいのでは?と思っている。すると、ユリアの方からわたしに話しかけてきた。

「今ね、協会長のところに行ってきたの。少しだけそこにある魔法仕掛けをいじってきたから、いずれ面白いことが起こると思うよ!何だったら今から行ってみたら?」

非常にいたずらっぽい笑みを浮かべている。彼女の主ないたずらの標的が協会長さんであることを、わたしは最近知った。その度に怒られているみたいだけど、全く懲りていないみたい…。前には協会長さんが非常に几帳面に整理してある本棚の本を資料室のものと入れ替えた、なんて話をしていたけど…。結局どうなったのかは分からない。たぶん、その時もユリアは怒られたんだろうな。

「わたしはこの後用事があるから行けないけど、どんないたずらをしたのかは気になるかな」

「実はね、部屋の扉を開けた瞬間、違う場所に移動するようにしておいたの。どこなのかは忘れちゃったけど。まあ、この協会内だから、きっと大丈夫!」

予想外すぎるそのいたずらにわたしは何と反応すればいいのか分からなくなってしまった。これ、協会長さんに報告しておいた方がいいのでは?本気でそう考えてしまった。大丈夫かな、変な場所に飛ばされることにならない?そもそもこれはいたずらの範囲内??というか、本当にユリアのいたずらは変わっている…。そう思っていると、ユリアはわたしの考えを見透かしたように、

「ちなみにその魔法はあたし以外元に戻すことができないから誰かがこのことを協会長に言っても全く意味ないよ!」

と言った。そういうところに関しては手抜きを全くしていないみたい…。なので、わたしは協会長さんのことは放っておくことにした。頑張ってください、と協会長さんに心の中で呼びかける。すると、話が先ほどの話題に戻って、ユリアに何の用事があるのかと尋ねられた。そこで、ギルさんに花を買ってくるように頼まれたのだと答えると、ユリアはにっこり笑って、

「たぶんそれ、あたしのせいかな。大量に花が植えられていたから、つい自分の研究に使っちゃったの。しかも、昔はなかった種類の花もいっぱいあって…。嬉しかったから思わずたくさん使っちゃったのよね。ごめん」

そうですか…。だから花が全てなくなったんだ…。納得しつつも何と言えばいいのか再び分からなくなったわたしは、取りあえずそのままユリアと別れた。協会ではかなりたくさん花を育てている。なので、なくなることはあり得ないと言っても過言ではない。一体、ユリアはそれほどの量の花を何に使ったんだろう…。謎すぎる。考えても分からないので、この謎は一旦置いておくことにした。

…そもそも花を買いに行くのはいいけど、どのお店に行こうかな。色々と候補はあるけれど…。この近くでもいいし、遠くでもたぶん大丈夫。魔法の花があれば、行ったことのある場所であれば一瞬でそこに行けるし。あ、そうだ、シェーロン国の方に行こうかな?わたしの知り合いがそこでお花屋さんをしているし。最近その子と全然会っていなかったから喋りたい。ちなみに、シェーロン国というのは、ここ、ヴェリエ国のお隣の国だ。比較的近い距離に位置する。自然が豊かで、あちこちに山がある。どうして違う国にわたしの知り合いがいるのかと言うと、前に魔法がらみの事件があって、そのお花屋さんにはその時に非常にお世話になったからだ。…というか、非常に迷惑をかけた、と言った方が正しいかもしれない。色々と巻き込んでしまったし、危険な目にも遭わせたので、やっぱり、「迷惑をかけた」という表現が正しいだろう。でも、何だかんだその後も時々お花屋さんの二人には会っている。とは言え、最近は忙しすぎて行く余裕がなかったし、そもそもこっそりと外に出られなかった。前はかなり楽にここを抜け出せたけど、最近はゼンが色々と対策を講じているせいで出づらくなっている。残念…。でも、だからこそ、こういう機会に知り合いに会いたいな、と思ってしまう。ということで、行先はシェーロン国と決定した。…それにしても、本当に久しぶりだ。一応、森の外には何回も出たけれど、どれも行先がシェーロン国方面ではなかった。ここ最近の出来事をあれこれ思い返していたら、何故か急に地下迷宮での出来事を思い出してしまった。地下迷宮に落ちた時の状況とか、再会した時のゼンとの会話とか…。急にそれらを思い出したわたしは非常に動揺した。何で突然…!?分からない。分からないけど…、体温が上昇したような…。けれど、その件に関しては、ゼンも特に何も言ってこないし、気にしない方がいいはずだけど…。ここ最近、ふとした拍子に思い出してしまって、その度に動揺する。とても困る。わたしが意味もなくその辺りをうろうろしていると、急に声をかけられた。

「…ジェシカ?何してるの?同じところぐるぐる回っても何もならないと思うけど」

ちょうど考えていた人の声だ。わたしは驚いて、思わず手に持っていたギルさんのメモを取り落とした。そのままそれはひらひらとゼンの方まで飛んで行く。ゼンは大量に資料を持っているというのに器用にそれを捕まえてくれた。そして、そこに書いてある花の名前を見る。納得したような表情をして言った。

「…あー、さっきギルに会った時、ユリアに花を全部使われた!って嘆いてたよ。もしかして、これの買い出しを頼まれた?」

「そ、そう。それでどこに行こうか考えていたんだけど…。シェーロン国にしようかな、って思ってる」

何とかそう言うと、それだけで具体的な行先が分かったらしい。ゼンはいつも通りに笑って

「そうなんだ。そういえば最近全然行ってなかったよね。二人によろしくね」

そう言ってわたしに紙を返し、去って行ってしまった。けれど、わたしはその後も、ぼうっとその後ろ姿を眺めていたのだった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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