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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
4章 地下迷宮と碧の魔法
60/90

第60話

ユリア視点です。

地下迷宮を出た後、あたしは協会の一室で生活することになった。久しぶりに世界を回ってきてもいいかな、とも一瞬考えたけど、何だかんだここでずっと過ごしている。あと、時々用事で外に出る人についていったり。碧の魔女だから、ということで敬遠されるかと思ったけど、意外とそうでもない。特にジェシカなんかあたしに利用されかけたというのに、普通に話しかけてくるし…。まあでも、嫌いではない。ただ、一つ大きな気がかりは彼女の特異な力だ。あれは絶対に光華の魔術師のものだ。彼女が魔法を使っているのを見て、そう確信した。本人はあたしがそう言ってもあまり信じていないみたいだけど。この協会の魔法使いたちは全く気付いていないようだけど、もしもそうなれば大変なことになるはずだ。かの魔術師は既にこの世を去っている。その力を受け継いでいる人がいるとなれば、当然あの魔術師が作った国の人間も黙ったまま…というわけにはいかないだろう。ただ、あたしはずっとここにいたせいで今の世界状況はよく分からない。なので、その日あたしは協会長にそれを聞きに行こうかと思っていた。当代の協会長は、初代に比べたらまともだ。それが、彼に対するあたしの印象。こっちの話をしっかり聞いてくれて、きっとここの人たちからの信頼もあるはずだ。そう思いつつ協会長の部屋に向かっていると、途中でゼンに出くわした。何故かその手には大量の資料。…いや、でも、あたしがゼンと遭遇する時はいつも向こうは大量に荷物を抱えている。勉強熱心なんだなあ…。

「こんにちは。今日も大量に本抱えてるけど…。傷はもう大丈夫なの?」

「平気。薬がよく効いたから。あれ、効果がすごいなって思って自分でも薬草を調合しようと思ったんだけど…、普通に失敗した」

その答えに一瞬、反応に困った。それに、あたしだってそこまで薬の調合が得意なわけではない。そういうのは、宵闇の魔術師の方が得意だ。本当だったら彼のところから取ってくれば良かったけど、ゼンが怪我したのはあたしが作り出した蔦のせいだし。なので、自分で頑張って作って渡した。まあ、それだって宵闇に教わったものだったけど。元気にしてるかな。宵闇は基本引きこもりだから、どうしているかよく分からない。…と、話を元に戻そう。あたしが作った薬草には少しだけ魔法も入れたので、他の人が同じ物を作ろうとしても失敗すると思う。それを伝えると、ゼンは少し残念そうにしていた。ついでに聞きたいことがあったので、荷物を持っているのに申し訳ないな、と思いつつもそれを聞いてみることにした。

「それにしてもあなた、よく危険を顧みずにジェシカのことを追ってきたわね?迷宮を彷徨ったり、ジェシカを蔦から庇ったり…。自分が怪我するとか、協会に戻れないかもとか考えなかったの?」

その質問にゼンは少し考えた。けど、最終的にうなずいてこう言った。

「それよりも、ジェシカのことが不安だったというか…。大切な人を放っておくわけにはいかなかったし。それだけだよ」

…それで何となくどういうことか分かってしまったあたしは、再びどう返そうか本気で迷った。大切な人って…。ものすごくストレートな表現だったし。何となくゼンのジェシカに対する気持ちを察してはいたけど、やっぱり聞かなければ良かったな。後悔しつつ、取りあえずゼンと別れた。何となく、二人が惹かれ合っているのは分かっていたけど、実際に聞くと何か…。それに、あの二人、お互いに鈍感な感じがするし。大丈夫かな?そんなことを考えたけど、よく考えたらあたしが首を突っ込むようなことじゃないということに思い当たり、これ以上それについて考えることを止めた。ちょうど協会長の部屋についたし。あたしは勢いよく扉を開けた。すると、すぐに協会長に文句を言われた。

「ユリアさん、部屋に入るときはノックして下さい、っていつも言っているでしょう…」

「あー…、忘れていたわ、ごめん。次から気をつけるわね。で、そんなことよりも話したいことがあるんだけど、いい?」

あたしが思いっきり話題を変えたことに協会長は非常に複雑な表情をしていた。けど、取りあえず無視する。一応、気をつけようとは思うけど、忘れちゃうんだよね。外見はこの姿だけど、やっぱり年のせいなのかな…。そんなことを考えていると、協会長は小さくため息をついた。

「そもそもあなた、こちらがダメだと言っても勝手に話し始めますよね…。それで、どうしたんですか?聞きたいことって言われても、魔法に関することならあなたの方が詳しいのでは?」

「…って言いつつ、何となく察しているでしょう?あたしが話したいのは、ジェシカのこと。この前からずっと気になっていたのよ。地下迷宮の時は偶然かと思っていたけど、しばらくあの子の様子を見てやっぱり確信したわ」

協会長はその言葉に少し表情を変えた。だが、特に何も言わず、あたしの言葉を止めない。続きを言っていい、ということだろう。それが分かったあたしは、確信したことを言った。

「あの子、やっぱり光華の魔術師――イジュアの力を受け継いでいるわよ」

あたしのような魔術師、魔女と呼ばれる最初の魔法使いはその魔法の力の強さのため、魔法の花を使わなくても簡単に魔法を使うことができる。けれど、他の魔法使いは花がなければ魔法を使うことはできない。それはほぼ絶対だ。けれど、ジェシカはあの時…、花を使わずに炎を出していた。一応、ほんの少しだけなら魔法の花がなくても魔法を使えるだろう。けれど、あれほどのものは…、簡単には使えない。無理にあれほどの魔法を花がないまま使おうとしたら、危険な状態になるという…。でも……。

「…やはり、気付いていましたか。確かに彼女は、光華の力を持っています。ただ…、その理由が分からないんですよ。あの子と光華の国には、何の接点もないですし」

やっぱり協会長も気付いていたのか。ついでに協会長は棚から何やら資料を引っ張りだしてきた。そこには大量にかの魔術師の国に関する情報が載っている。どうやら、彼が調べたらしい。すごいな…。けれど、これだけ調べても光華の魔術師に関する記録はほとんど出てこなかったという。謎すぎるよ、あの国。あたしも、あまりあの場所に行ったことがないし。よくみんなで宵闇の家には遊びに行ってその時に会ってはいたけど…。でも、途中からイジュアは来なくなってしまった。国の方が忙しいんじゃないかと宵闇は言っていたけど。何だか、仲間がばらばらになっていくような気がして…、それが寂しかった。懐かしくそんなことを思い出していると、協会長は真剣な表情で言った。

「…くれぐれも、このことは誰にも言わないようにお願いしますね。…あの国は今、相当面倒なことになっているようなので。それに巻き込むわけにはいきませんから」

「分かっているわ。…けれど、あたしの予想では面倒ごとは既に起こり始めているわよ?」

あたしのその言葉に協会長は一瞬固まった。その手から音を立てて資料が滑り落ちる。この人も驚くことがあるんだ。そう思うとちょっと面白くて思わず笑ってしまった。そのまま協会長のことは放っておいて部屋を出た。まさか、今になってこういう形でイジュアに関連する話が出てくるとは思っていなかったけど。人生、何が起こるか分からないなあ…。なんて他人事のように考える。

あたしの予想では…、ジェシカは、光華の国に大きく関わることになる。その時、彼女がどういう選択をするのか。それは、彼女が決めることだ。

読んで下さり、ありがとうございました。

次回の更新は少し先になります。今のところ、7月16日の予定です。

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