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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
1章 緋色の炎の魔法使い
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第6話

数日後。わたしはその日から魔法の授業を受けることになった。本当はその前に魔法の検査というものをしなければならないらしい。その検査と言うのは、その人がどんな魔法が得意か、とか魔法を使うための力をどれくらい持っているか、とか色々と計るものらしい。けど、残念なことに今は検査をするための水晶が割れてしまっているのだそう。なので、しばらく検査はできないのだという。残念…。でも、得意な魔法は自分でも既に分かっている。それは、炎。感情が高ぶった時に発生するのって、火だけだもの。だから、それはほぼ確実だ。だから、別に検査しなくてもいいんだけどな…。何はともあれ、わたしはニーナと一緒に授業を受ける教室に向かうことにした。まだまだこの中の構造には慣れていない。あちこちに仕掛けられている罠にも…。何回もこの廊下を歩いてはいるけれど、どうしても怖いんだよね…。それを言うと、ニーナは、

「そうですね…。やっぱり慣れるのが一番いいと思います!」

と言っていた。けど、この感じだといつになったら慣れることができるのか分からない。そんな感じで今日も何とか廊下を歩き、ニーナに少し苦笑されながらも授業を受けるための部屋に入った。教室には、既に何人かの人たちがいて、わたしが入ると一斉にこちらを見た。な、何か怖い…。けど、初めての人が来たら驚くのは当たり前と言えば当たり前だし、まあいいか。そう思ってわたしはニーナの隣に座ることにした。どうやら座席は自由に選んでいいらしいので。わたしは机の上に、先日もらったばかりの魔法の歴史について書いてある教科書を置き、早速ぱらぱらとめくってみることにした。様々な挿絵と共に、ずらずらと文章が載っている。…覚えるのが大変そう。そもそも今、どこをやっているんだろう?初めての授業ってちょっと緊張する。そう思っている間にもたくさんのわたしと同じ年くらいの人たちが次々と部屋に入ってくる。そして、わたしを見て不思議そうな顔をしつつ通り過ぎていくのだった。と、そこでわたしは思い出した。…そういえばわたし、未だに助けてくれた人に会えてない。つまり、お礼が言えてない!!わたしはきょろきょろと辺りを見た。しかし、この前の人…、確か、ゼンさんとか言う人はいない。…まだ来ていないのかな?すると、急に周囲を見ているわたしを不思議に思ったのか、ニーナが質問してきた。

「ジェシカ?どうかしました?あ、もしかして何か忘れ物をしました?今なら何とか間に合うはずですが、戻ります?」

「…え、あ、そうじゃなくて…。人探ししてるの。わたしが初めてここに来た時、罠に引っかかりかけて…。その時に助けてくれた人がいるんだ。名前は…、ゼンさん、って言う人みたいなんだけど、ニーナは知ってる?」

すると、その瞬間、部屋にいる女の子たちが一斉にわたしの方を見た。な、何…っ!?しかも、その中には敵意とか羨望とか、そういう視線があるんですけど…?本当に何で??意味不明なんだけど…。すると、ニーナが苦笑いしてわたしにその質問に答えてくれた。

「そうなんですね。…けど、残念ながら、ゼンさんはこのクラスにはいないんです。魔法の力が同じ年頃の人の中で一番強くて、成績も優秀。だから、ここよりも一つ上のクラスにいますよ」

そうなの!?そんな制度があるなんて聞いてない!てっきり、授業に出れば普通に会えるのかと思ってたのに…。とすると、どうやって会おうかな。お礼はなるべく早い方がいいんだろうけど…。どうしようかな…。でも、だからと言ってその「上のクラス」とやらに行っても向こうがわたしのことを覚えているか分からないんだよね…。もし、ストーカー扱いされたら困るし。しかも、この感じだと女の子たちはゼンさんの動きにすごく反応しているみたいだから、なるべくならこっそり会った方がいいのかもしれない。そんなことを考えていると、先生らしき人が入ってきて、部屋にいる人たちは姿勢を正した。分からないながらも、わたしも同じようにした。先生らしき人は前の教壇に立つと、早速授業を始めた。これ、どのページをやってるんだろう?そう思った瞬間、自動的に教科書が開いてぱらぱらとページをめくり真ん中の辺りのページで止まった。どうやら、今日はこのページを勉強するみたいだけど…。すごい…。けど、これはいつものことらしく、わたし以外の人たちは皆全く驚いていない。

「今日は、この世界の基盤を作ったとされている、六人の魔術師や魔女について学習します」

六人も魔法使いがいたんだ…。びっくり。というか、そんな話聞いたことがない。そもそも魔法自体、この世界からは隠されている。一応、ギルさんから理由は聞いたけど、それにしたって隠しすぎだと思う。だが、そのまま授業は始まった。わたしは教科書に目を向けた。そこには六人の人とその人たちに関する字がずらずらと書かれている。大昔の人たちだけど、意外と記録が残っているみたい。

「まず一人目は、光華の魔術師。彼は南の地域に、一夜にして自分の国を作りました。それが今のロベム帝国、……別名、火の国です。光華の魔術師は、炎の魔法が得意でしたが、晩年はその強大な魔法の力を捨て、普通の人と同じように生き、死んだとされています」

…と、そこでわたしは気付いた。確かこの前、協会長さんが「光華」って言っていた気がする…。このことなのかな?わたしが炎の魔法が得意だからそういうことを言ったのだろうか?何となくひっかかったけど、先生が説明を続けたので、わたしはそっちに集中し直した。

「二人目は宵闇の魔術師。彼は夜を司り、闇の中でも自由自在に行き来できたと言われています。今も世界のどこかで生きていると言われています。魔術師、魔女と呼ばれている人々は基本的に不老不死ですから。ただ、ここ数百年、全くその姿は見られておらず、本当に生きているかどうかも分かっていません」

わたしは教科書の宵闇の魔術師の欄を見た。全身真っ黒で、フードを被っているため、その顔はよく分からない。

そして、三人目は雫の魔女。水の魔法が得意で、光華の魔術師とは犬猿の仲だったという。…確かに、炎と水って相性があまり良くなさそうだな、とは思う。

「四人目は碧の魔女。彼女はこの協会と周辺の森を魔法を使って作り上げました。そして、六人の中で一番力が強いと言われています」

…段々、ややこしくなってきた。名前でそれぞれの得意な魔法は分かるけど、それにしたって大変だ。特徴を述べよ、とか言われたら無理なんだけど…?そう思いつつ、碧の魔女の欄も見てみた。その名の通り、植物の力を借りて使う魔法が得意だったみたい。けど、今は行方不明になっているという。…魔女が作った森だから、あんなに森がきらきらしているのかな?…ということは、魔術師や魔女が作った物って全部光っているのかな?でも、そうだとしたら、そこら辺にあるものも全部きらきらしていることになりそう…。

「五人目は月下の魔女。光の魔法を使い、最初は暗闇に包まれていたこの世界に光をもたらしたと言われています。この魔女も、光華の魔術師のように普通の人として死んだと言われています」

……もはや覚える気力がなくなってきた。何でこんなに人が多いのよ…?しかも、名前じゃないし。分かりづらいよ、これ。でも、次でようやく最後の魔術師だ。六人目の魔術師は、飛電の魔術師。電気を操る魔術師だけど、この人に関してはほとんどと言っていいほど資料が残っていなくて、具体的に何をした人なのかはよく分かっていないらしい。先生がそこまで話したところでぱたん、と教科書が自動的に閉じられた。どうやら、今日の授業はこれで終わりらしい。だが、先生は最後ににっこりと笑って言った。

「尚、一週間後にこの六人の魔術師、魔女に関する小テストがありますので、しっかり勉強するように」

その言葉に一気に教室中がざわめく。わたしは思いっきり机に突っ伏した。…どうやら、ここでの生活は勉強漬けになりそうだ…。

読んで下さり、ありがとうございました。

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