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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
4章 地下迷宮と碧の魔法
57/90

第57話

今回はゼン視点のお話です。

…また同じ道に戻ってきてしまった。その事実に気付いた僕は急に疲労感に襲われ、一旦その場で座って休憩することにした。通った道であると分かるように最初に印をつけておいたのだが、それをもう何回も目にしている。たぶん、今は十二回目くらいかな?何回もこの状況を繰り返してしまっていることに僕は思わずため息をついた。だが、蔦を操る少女がジェシカを連れ去ってから、かなり長い時間が経ってしまっている。外が見えないから時間の感覚がないけれど…。とにかく早く見つけないと。何だったら、一回協会に戻って他の人を呼んでもいいけれど、またここに戻って来られるのかは誰にも分からない。もっとも、先ほどの少女はこの地下迷宮を自分の庭だと言っていたから、その方法を知っているんだろうけど。それに、あの子に対して、ジェシカを見つけるまで協会に戻らない、って宣言してしまったし…。どちらにしろ協会には戻れなかった。だが、全然進まないのも事実で…。休むついでに考え事をすることにした。

たぶん、あの少女は碧の魔女だ。ここに来る前の文献のおかげでそのことは何となく分かっていた。でも、何か彼女に関する話で思い出していないことがある。とても、大切なこと…。確か、数年前に協会の歴史について知りたくなった時に、碧の魔女が出てきていた本を読んだのだ。そこには確か、初代の協会長と一緒に碧の魔女について載っていて…。そこまでは覚えているのに、肝心の内容を忘れてしまった。数年前のことだからしょうがないのかもしれないけど…、妙にそれが気になる。僕はそれを必死に思い出そうとしつつ、再び立ち上がって道を探すことにした。どうやらこの洞窟は、違う道に行くと元の場所に戻ってしまう仕組みになっているらしい。何か正解の方向に目印があればいいのに、全くそういうものがない。あと何通りの道があるんだろう…、と計算しつつ、今度はどちらの方向へ行こうかと考える。取りあえず、右から二番目の道は全て試して、失敗した。ということは、別の道なんだろうけど…。と、その時。

『…、…おい、聞こえてるか?!聞こえてるなら何でもいいから返事しろ!』

急にどこかから声が聞こえてきた。その方向を見てみると、魔法の花が一輪落ちている。ジェシカが連れ去られた時に落としたものかな、と思いつつ近寄ると、その近くに小さく光のスクリーンが映し出されていて、そこにギルや協会長が映っていた。どうやら、魔法を使って繋げてくれたらしい。

「聞こえてますよ。ただ、ジェシカはどうでしょうね…。花を持っていればいいけど…」

『は?!ちょっと待て、ゼン、お前、ジェシカちゃんと一緒じゃないのか?!』

僕はその問いかけにうなずいて、今までの出来事を一から説明してくれた。話が終わると、ギルはもちろん、後ろで静かに控えていた協会長も険しい表情をする。こんなに厳しい顔をするのを、初めて見たかもしれない。けど、僕はそのまま協会長の方を見ていた。たぶん、地下迷宮については彼の方が詳しいはずだ。それに、初代協会長に関する話を知っている可能性が高い。…だが、協会長が何かを言おうとしたところで突然映像が揺らいだ。魔法が切れかけている。ギルが舌打ちをした。すると、協会長が突然、

『完全に途切れる前に一つ質問をしますね。何か必要なものはありますか?あるなら、そちらに送るので言って下さい。ただし、それは一つだけです。それ以上は、不可能なので』

僕は少し考えた。だが、その間にも映像は揺らぎを増す。今にも切れてしまいそうだ。けど、完全に途切れてしまうその前に、思いついた言葉を慌てて告げた。

「資料室にある本を。協会の歴史が詳しく載っている……」

だが、そこで切れてしまった。題名が言えなかったけど…大丈夫かな。そもそも、どうしてそれが浮かんできたのか、よく分からない。考えてみれば、役に立つものは他にもたくさんあるのに…。色々と不安に思いつつ少しの間そこで待っていると、不意に目の前に光の球体が現れた。それに手を触れると、光の膜がはじけ、中に包まれていた本が姿を現す。望み通りの本だった。表紙に独特の正方形がうっすらと彫られている。あれだけでよく伝わったな…。驚きつつ、中を確認する。ここに僕の知りたいことが載っている。早速ページを開き、それを確認した。そして、その内容を思い出す。こういう話だったな…。少しずつ思い出しながらページをめくったその時、何かが挟まれていることに気付いた。何かの…地図?そして、その下に協会長の字が書かれている。

『迷宮の地図です。初代協会長が調べたものが残っていたので、役立てて下さい』

地図を見てみると、意外と単純だった。確かに道は幾つにも分かれているけど、そのほとんどが結局同じ場所…、つまり、今僕がいる場所にたどり着くようになっている。だが、二つほど、ここに戻って来ないような道がある。一つは、碧の魔女が言っていた、協会に行き来できる階段。そしてもう一つは…、何かの部屋。ただ、詳しいことは書いていないので何があるのか全く分からない。けど、行くとしたらそこかな…。何があるのか気になるし、もしかしたらそこにジェシカがいるかもしれない。

「…一番左の道を、まっすぐ…?」

そういえば、碧の魔女が最初に出てきたのはあの道だった、と思い出す。あの時は壁のランタンに明かりがついていたけど、今はすっかり消えてしまっている。ジェシカがいれば炎を使って明るくできるのにな…。そう考えつつ、地図の道順をしっかり覚え、暗闇の中に足を踏み入れた。


しばらくすると、部屋らしき場所にたどり着いた。ただ、暗すぎて周囲の様子が確認できない。一応、炎の魔法も使えなくはないけど、できれば花を無駄にしたくないし…。どうしようか、と迷っていると何故か勝手に明かりがついた。すごい、自動だ…。もしかして、人を感知すると勝手に点灯するシステムなのかもしれない。少し驚いたが、これで何があるか確認できる。本を持ったままの状態で、部屋を見てみる。…けど、ほとんど何もないし誰もいない。あるのは、蔦と岩だけ。ただの空間…?取りあえず、ジェシカも碧の魔女もいないようだ。けど、ここ以外に怪しい場所がないし…。そう思いつつ、何気なく蔦が絡まる場所を見た時、そこに何かが見えたような気がした。蔦を払うと、そこに小さな正方形の板が見えた。どうやら金属でできているようで、光に反射して輝いている。何だろう、これ?でも、確かにこれをどこかで見たことがある。正方形の中に、蔦の紋様が描かれていて…。何となくそれに触ってみて、ようやく思い出した。これ、さっきの本の表紙の四角だ。試しにその横に本を並べてみると、本当にぴったり。

「…これ、どうすればいいのかな。何かに関係しているのかな?」

試しに岩についた正方形の近くで本を上下左右に動かしていると、どこかでカチッとスイッチが入るような音が鳴った。静かなせいか、その音が大きく響く。次いで何か重たい物が動くような音がして、部屋の行き止まりとなっている部分が少しずつ開き始めた。…ってことは、これ、隠し扉の鍵だったってこと?!よくこんなの考えたなあ…。それに、この本がここを開けるための道具になるなんて。思わず感心してしまった。予想外のことだったが、その先を見てみると、延々と道が続いている。ただ、そこは再び暗くなっている。注意して見てみるとその先にうっすらと光が見える。岩の隙間から溢れだしているようだ。わずかなものだけれど、そうだと確信した。きっと、二人はこの先にいる。そんな予感がする。僕は再び暗闇の中に入った。一歩一歩慎重に足を進める。ジェシカが無事であることを祈りながら。

読んで下さり、ありがとうございました。

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