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煌めきの森 魔法の花  作者: 立花柚月
4章 地下迷宮と碧の魔法
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第56話

ユリアさんはふわり、と手を動かした。そこから再び蔦が伸びて彼女の腕に巻きついた。だが、ユリアさんはそれを気にすることなく、ただ蔦が生長していくのを見守り続けている。やがて蔦は地面を覆い尽くした。こっちにまで伸びてきた。なので炎でどうにかしたかったけれど、残念ながら今のわたしは魔法の花を持っていない。あの場所に落としてきたのか、それとも取られてしまったのか…。取りあえず、蔦については自分でもどうしようもないので放っておくことにした。それよりも、今は目の前にいるユリアさんについてだ。わたしは、彼女についてほとんど何も知らない。知っているのは、書物に書いてあるような表面的なことだけだ。でも、それだけでは彼女の言葉の意味が何も分からない。だから、彼女の話を聞きたい。もしかしたらそこに、ここから出るヒントもあるかもしれないし。

「…ユリアさん、さっきの言葉がどういう意味なのか教えてもらえない?」

「…はい?え、ちょっと待って。その言葉はつまり、貴女は何も知らないってことでいいのかな?えええ…、想定外なんだけど。貴女なら分かってくれるかと思ったのに…」

少し沈黙した後でユリアさんは落胆したようにそうつぶやいたけれど…。何の話なのかさっぱり分からない。その後も何かぶつぶつとつぶやいていたが、最後は諦めたような表情をした。そして、非常に嫌そうに、

「まあ、それならあたしがここにいる理由を説明しようかな。光華の力を受け継いでいる貴女なら、別に話しても問題はないでしょうし。むしろ、邪魔しないでくれるようになったらこちらとしてもありがたいもの」

光華の力…?光華と言えば、碧の魔女と同じような魔法使いのうちの一人だけど。それって一体??それとわたしにどのような関係があるのだろう?しかし、彼女はうっすら微笑むだけでそれに関しては何も言わず、ただ淡々とした声で彼女がここにいる理由を話し始めたのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


あたしは、ずっとずっと昔に、とある人物と契約を交わしたの。それは、この場所を維持し、あたしの持つ強い魔法の力でずっとここを守り続けること…。あたしは正直、面倒だったから断りたかった。それに、その人は一応強い魔法の力は持っていたけれど、普通の人間だったし。この世界を作った魔法使いは皆、例外を除いては不死の存在だから、一つの場所に執着したくなかったのよ。だから、はっきりと断った。それに、正直他の魔法使いにも関わりたくなかったし。そうしたら、その人は少しその条件を変えたの。その人が生きている間だけ…。その間だけこの協会を維持していてほしい、ってね。そんなの何十年くらいで終わることだし、それくらいの時間だったらわたしにとってはほんの少しの時間だったから。…だから、あたしは渋々承諾したわ。…でもね、それが間違いだったのよ。その契約内容は、突然変えられた。あたしがここにいる期間がいつの間にか「無期限」になっていた。そのせいであたしはこの場所にとどまらなければならなくなってしまった。あたしの力をこの場所に使っているせいで本来のように強い力を発揮できなかったし。しかも、厄介なことにその契約は魔法を介して行われたもので、強い影響力を持っていた。だから…、あたしはこの場所から出られなくなったの。ちなみに、契約を途中で変えた最低な人がここの初代協会長。…本当にあの人は、良い人そうに見えて性格が悪かったわね。だからあたしは、どうにかしてここから出ようと思った。でも、それほどの力があたしにはない。だから…、ここに落ちてきた人間や協会の魔法の力を少しずつ取っていて、今日までここに閉じこもっているしか方法はなかった。でも、そうしておけばいつかはここから出られる。だって、持っている力が強くなれば、ここを抜け出しても維持できるようになるでしょうし。何だったらこの協会を一気に吹き飛ばしたっていいけれど、それはそれで力が足りなすぎる。そもそも契約があるわけだし。それをやったらこっちが被害を受けてしまうから。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「まあ、でも、貴女がいてくれれば問題はないでしょうね。――ねえ、確か貴女、ジェシカと言ったわよね?お願い、わたしの計画に協力してくれない?」

唐突にそう提案された。わたしは思わず目を見開いた。どうして、わたしが?計画ってつまり、協会を吹き飛ばすってこと!?そうしたら、上にいる協会長さんやギルさん、ニーナは…?そもそも、何故わたしがいれば問題がないのだろう?それが理解できない。確かにわたしは炎の魔法が得意だけれど、だからといって協会全体を吹き飛ばすことはできないし、そもそもしたくない。それなのに、どうして…。わたしが戸惑っていると、ユリアさんはふわりと笑みを浮かべた。でも、瞳は笑っていなかった。悲しそうで、寂しそうで、怒っていて……そして、傷ついてもいる。その瞳の感情に一瞬呑まれそうになった。

「だって、貴女は光華の魔術師の力を受け継いでいるでしょう?貴女から感じるもの、…あかの魔術師の力を。それに、そうでなければ蔦の魔法を解くことなんてできなかったと思うし」

…???更によく分からなくなった。光華の魔術師が何なのかは分かるけど、わたしがその力を受け継いでいる…?先ほどからよく分からない話が続いている。

「あの蔦は近くにいる人から魔法の力を少しずつ取っていく仕組みになっていたの。それなのに、貴女には全く効かなかった。だから、あんなに簡単に蔦を燃やすことができたのよ」

ユリアさんはそう微笑んだ。だからゼンたちは魔法の威力が弱いって言っていたんだ…。…それに、もしユリアさんの言うことが本当だとしたら、わたしには確かにその計画を実行できる力があるのだろう。そして、ユリアさんはそれを望んでいる。彼女の悔しいきもちは痛いほどに伝わってきた。でも…、わたしは彼女に協力することはできない。そこに、大切な人たちがいる。その人たちを巻き込むことなんてできない。だからといって、何かいい方法を思い付くわけではないけれど…。何か、ユリアさんをここから出す方法はないだろうか?だが、そう考えているとユリアさんは一歩こちらに近づいてきた。その瞳は蔦のような葉の色に輝いている。…これ、どう考えてもまずい状況だ。どうやって計画を実行するのか知らないけれど、彼女が力を使えばあっという間に終わってしまうのだろう。ユリアさんは先ほどと変わらない笑みを浮かべて、

「そういうわけで、貴女の力を貸してね?大丈夫、貴女は何もしなくていいわ。ただ、あたしがその力を借りるだけ。全く心配はないわよ」

「っ!…わたしは、絶対にあなたに協力しない!そんなことをしたって、何の解決にもならないよ。それであなたの契約が…、この協会と、初代の協会長さんへの忠誠が消えるわけじゃない!」

自分で言って、気付いた。あの不思議な声の言った「忠誠」は、その二つのものへの忠誠だと…。きっと、ユリアさんは初代協会長さんを…、信じていたはずだ。いつか、契約はなくなるのではないか。ここから出してくれる日が来るのではないか。と…。

「協力しない、と言っても…、今の貴女には何もできないと思うけど?」

しかし、ユリアさんの決意は固いようだった。それに、彼女の言う通り…。今のわたしには、対抗手段が一つもない。無意識のうちに少しずつ後ろに下がる。だが、この空間は限られている。いつかは逃げられなくなってしまう。わたしは思わず、とある人物の名を呼んでいた。

「…っ。ゼン…!」

読んで下さり、ありがとうございました。

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